秀「漉庵、八丁堀とずっと張ってたお蔭で裏が取れた。女郎屋や夜鷹のあがりを根こそぎかすめ取る代官の悪だくみに、夜鷹が嚙みついて受け取りを求めたというのが実の所。殺された夜鷹の幼馴染の女郎から、この金で悪党を始末して欲しいと頼まれた」

医者「やはりそうだったか。下手人は秀、代官は八丁堀に任す。私は代官に与した取り巻きに一服盛って葬る。今夜、かたを付けよう」

八丁堀「よし。だが、十手持ちの目明しには何と説明する」

医者「そうだな。金に目が眩んだ上の内輪揉めとでも言って誤魔化すか」

 ……<コケコッコー! 江戸の朝は早い。大吉の発射も早い、いや速いと言うべきか>……

親分「粒庵先生、大変な騒ぎになっていやすぜ。大勢死人が出て、その中にはあの下手人もいやしてね。それに代官まで殺されていて、どうなってんのやらさっぱり……」

医者「ふんふん…そうかい。代官まで絡んでるとなれば、内輪揉めの可能性が高いな。私の睨んだ通りだ。時に、大吉はどうしたんだい?」

親分「へい。粒庵先生、意見してやって下せぇよ。あの野郎、糸引き女が痙攣起こして抜けなくなって動けねぇなんてぬかすんでさぁ」

医者「ほぉ、大吉らしいな。しかし、素早く抜けなくなったとはやきが回ったな」