コラム | 浅田真央さん&浅田舞さん 応援ブログ

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もろさを克服、自分の演技ができる選手へ 青嶋ひろの
2011年5月31日(火)

$ゆうゆうのブログ 東日本大震災の影響で東京大会が中止となり、1カ月後、モスクワで開催されたフィギュアスケート世界選手権。暗いニュースが続く日本を力づけるように、とびきり思いのこもった演技を見せ、さらに4年ぶりの優勝という吉報をもたらしてくれたのが、女子シングルの安藤美姫だ。
 スケジュールなどの大幅変更に戸惑い、多くの選手がコンディションを崩すなか「精神的にもろい」と言われ続けてきた彼女が、なぜ栄光をつかむことができたのだろうか。

■エキシビションの「レクイエム」に込めた思い
――世界選手権。優勝を決めたフリーでの演技も素晴らしかったのですが、翌日のエキシビション。トリとして登場し、白い衣装で披露したナンバーがとても美しくて……。多くの人の心に響いたのではないかと思います


 あのときは一曲目に、「Why do People fall in Love?」という、今シーズンずっと見ていただいているショーナンバーを滑りました。本当に偶然なんですが、「どうして人は恋に落ちるの?」という思いを歌った曲。恋することにはにさまざまな意味があると思いますし、人を愛するということを、まずはスケートで表現したかったんです。そして今回はアンコールがあったので、昨年のショートプログラムの「レクイエム」を滑りました(注:実際に披露したのはボーカル入りのエキシビションナンバー)。競技ではどうしても用意していた競技の曲を滑ることになるけれど、エキシビションではもっともっと、自分の思いを伝えたかったんです。「レクイエム」はミサ曲、鎮魂の曲。今回の災害に対する気持ち、日本に向けてひとりでも多くの方に、今の私の気持ちを伝えたかったので……。アンコールという機会をいただいたことで(世界選手権でアンコールを滑ったのは優勝者のみ)、神様に「レクイエムを滑りなさい」って言ってもらったような気がして……ぜひ滑りたい、と思ったんです。

――「レクイエム」、音源はモスクワに持ってきていたんですか?

 いえ、試合が終わってすぐに、急きょ用意してもらいました。自分にできることなんてこれくらいしかないけれど、本当に自分の伝えたい気持ちを、スケートを通じて、世界選手権のエキシビションという場所を通して伝えることができて、すごく光栄に思いました。衣装はちょっと、「Why do People~」の白い衣装のままでおかしかったかもしれないけれど(笑)、自分なりに気持ちを込めて滑れたと思います。日本にちょっとでも届けばいいな、と。

――今回の世界選手権。いつもとは違う意味での注目もされましたし、選手たちも考えるところがあったと思います。そのなかで安藤選手は、被災された方への思いを自分の演技にしっかりリンクさせて、ショートプログラムからエキシビションまで、滑り切りましたね

 でも自分は、ダイレクトに震災の被害を受けているわけではないので、被災地の方がどれだけ大変か、どれだけ辛い思いをしているかは、本当の意味では分からないと思うんです。きっと簡単に言葉で表すことのできない苦しみではないかと思う。ただ、本当に大切な人を失う辛さ、その辛さから立ち直ることの大変さは、少しは分かっているつもりで……その気持ちを今、すごくたくさんの人が味わっているのだと思うと、震災直後はリンクの上に立つことも辛く感じていました。

■うれしかった「ありがとう」のメッセージ
$ゆうゆうのブログ――実際に世界選手権が始まってからはどうでしょう? 日本のために勝ってほしい、メダルを取ってほしい、そんなプレッシャーを感じてしまったのでは?

 いえ、それはまったくないんです。普段から、メダルを取りたいという気持ちで試合に臨むことはほとんどないので……。今でも優勝した、金メダルをいただいたという実感がほとんど沸いてこないくらい、いろいろな気持ちでいっぱいで、その気持ちのままに滑ってきました。今年も自分なりにいろいろなことがあったシーズンなので、まだ本当に優勝してうれしいのか、ちょっとよく分からないくらい(笑)。優勝したことによる気持ちの変化、というものもほとんどありません。ただ今回は、もちろんすごく緊張はしたけれど、世界選手権という雰囲気をそれほど重く感じずに。日本で滑れなかった残念な気持ち、そして無事開催されてこうして試合の場をいただいた感謝の気持ち……そんな気持ちと自分の演技が、なんとなくひとつになれたかな、と思うんです。結果よりも、のことに対する達成感で今はいっぱいかな。

――そんな気持ちで滑ったことに対して。何か反響、リアクションなどは感じていますか?

 世界選手権後、移動続きでなかなかネットにもつなげていないので、実感はないんですが……。でもフリーの後のスモールメダルセレモニーで、ひとりの女性の方が「美姫ちゃん、ありがとう」というメッセージを皆さんの前で伝えてくださったんです。あ、ひとりでもそんなふうに思ってくれる演技ができたんだって、まず実感できたのがうれしかったですね。日本でそんな気持ちになってくださった方が、ひとりでも多くいてくれれば、自分もそれで幸せだなあ、と。

■「今回ほど意味のある試合は今までなかった」
$ゆうゆうのブログ――特に今回、ロシアが日本の危機に手を差し伸べる形で、世界選手権が無事開催されました。そこで、ロシアに関わりの深い日本人である安藤選手が優勝した。この大会を機会にふたつの国のきずなが深まったような気がしますし、安藤選手の優勝はその象徴であるように思いました。「レクイエム」というプログラムも……

 振付けのニコライ(・モロゾフ)がロシア人、滑った美姫が日本人、ですもんね(笑)。自分でも、こんなことってあるんだな、って驚きました。本当に思いがけないロシア開催でしたが、自分にとって日本もすごく大切な国だけれど、ロシアも「二つ目の母国」って思えるくらい大切な国。すごく思い入れのある場所で滑らせてもらって、ゴールドメダルを獲ることができて……やっぱり振り返ってみると、良かったなあと思います。

――ここまで意義のある優勝、重い経験は、トップ選手といえどなかなかないのではないでしょうか

 はい、もし昨年のオリンピックでメダルが取れていたとしても……今回の世界選手権ほど意味のある試合は今までなかった、と言えると思います。きっと今後もこんな試合はないでしょう。本当に良い場所で、いろいろな意味を持って演技させていただいた。本当に良い経験をさせていただいたんだな、と思います。

■心から楽しみ、自分の演技ができるように
――終わってみれば、確かにさまざまなことがあったシーズン。しかし6年ぶりの全日本選手権優勝、4年ぶりの世界選手権優勝など、良い思い出の多いシーズンとなったのでは? 

 そうですね。全日本は「とにかく世界選手権に出ること!」って、いつもと同じ思いで滑りました。とはいえ、長野は初めて全日本で優勝した(2003年)、すごく思い入れのある場所。その同じリンクで優勝できて、やっぱり良かったなあ、と思います。その他の試合もそれぞれ思い出がありますが、ワンシーズン通して大きなミスもなく最後の大きな試合まで終われたこと。調子が悪くても、いつでも自分のやるべき演技ができるようになったこと。その点で、一番成長できたのかな。選手としてまた一歩踏み出せたかな、と思っています。

――体調やメンタル面に左右されず、いつでも「自分の演技」ができるようになった。その成長の理由は、どこにあるのでしょうか?

 スケートを……本当に心から楽しめる方法がみつかったのかもしれません。これまでだったら、緊張感や不安など、そのときの自分の気持ちがリンクの上にまでついてきてしまって、調子が悪かったらそのまま演技も不安定なものになってしまった。でも昨年のオリンピックの後からは、スケートを心から楽しむ、そのために自分をコントロールする方法が、自然に身についたような気がするんです。それが一番の理由かな。やっぱり、2度のオリンピックを経験させていただいたことがすごく大きかった。そしてバンクーバーの後、ひとつ大きく吹っ切れたものがあって、その後のトリノの世界選手権では、お客さんとの本当の一体感を感じながら滑れたんです。滑っていて楽しい、そんな気持ちに心の底からなれた。その気持ちが、伸び伸びした演技につながった。あ、自分はそういうタイプの選手なんだって、やっと気が付いたんですよ(笑)。じゃあなるべくストレスなく、毎日を本当に楽しく過ごすことが、一番じゃないかなって。それが、スケートにもつながっていくんだろうな、と。私の場合は、ですけれど(笑)。

■練習ではさらなるジャンプの工夫も
$ゆうゆうのブログ――精神的な安定を得て、今後はジャンプへの挑戦も続けていきたいとか。練習では、トリプル-トリプル-トリプルの連続3回転にトライしていると聞きました

 ルッツ-ループ-ループの3-3-3……あくまでエクササイズとして、ですね。試合では絶対にやらないですよ(笑)。今のルールでは、リスクの高いジャンプにトライしても、回転不足だったり質が悪かったりしたら、マイナスがついてしまう。やはりきちんと自分のできるものの完成度を高めて、加点のつくジャンプを降りた方が、演技全体の印象も上がります。トリプル-トリプルにトライしないことが多かった今シーズンの評価を見ても分かることですね。でもやっぱり今後……またトリプル-トリプルはきちんと入れられるように練習して、試合で跳んでみたい。そのために、ひとつ難易度の高いトリプル-トリプル-トリプルを練習すれば、トリプル-トリプルも感覚的に難しくなくなるのではないかな、と。同じように、今回は力んで失敗してしまったダブルアクセル-トリプルトウ。自分はトウループがすごく苦手で、まだアクセル-トウはプログラム後半に跳ぶにはリスクの高いジャンプなんです。それをクリーンに入れるために、すべてのジャンプのセカンドにトリプルトウをつける練習をしたりも……。練習ではいろいろな工夫をしていきたいと思っています。

――プログラム面も、技術面も、さらに磨いていくオフシーズン。そのなかでアイスティショーも続いて、大忙しですね。

 はい、先日のサンクトペテルブルク、バンクーバー。この後も日本、韓国とスケジュールに入っています。今、フィギュアスケート界では、チャリティー的な日本を応援するショーがすごくたくさん、世界中で企画されているんですよ。そんな海外のみなさんの気持ちもうれしいですし、世界のスケーターたちと一緒に、各国で日本のことを伝えて、もっともっと日本のためのヘルプになれればいいな、と思っています。本当は日本でのショーにももっと出たかったんですが、日本では小塚選手はじめ皆さんががんばってくれているので、じゃあ、自分は海外担当で(笑)。私が出演することで、海外の皆さんにもっと日本の大変さを分かってもらえたら、また少し力になれるかな。これから先も、各地のショーでたくさんの人に会って、スケートを滑って、皆さんにさまざまな思いを伝えていけたら、と思っています。

<了>
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/winter/skate/figure/text/201105310003-spnavi_1.html