『分かつもの』≪四話 ①≫ | Eimi企画のオフィシャルブログ

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物語を作っています。コンセプトは「心を豊かにする物語作り」です。小説、動画、ボイスドラマ、自然、愛犬、題材は様々ですが、紹介とお喋りのブログです。

『分かつもの』    ≪四話 ①≫
 
 
 満月の夜、暗い彩に紛れるように、暗い服装の男が、黒いローブの男を連れて路地を歩いていく。
 
 綺麗に清掃された石畳を進み、奥まって分かり難い建物の扉を開き、中へ招き入れた。
 
 長い廊下の突き当りにある部屋の戸を開くと、蛍光灯で明るく照らされる部屋の真ん中の椅子に、フードを目深に被った老人が座っている。

 老人は、案内役の男に手で合図して、部屋から出した。
 そして逆に、『彼の者』を手招きして近くに寄らせる。

「聞いているよ、貴方のことは。だから貴方に頼もうと思っているんだよ」
 
 受け答えはしなかった。老人は一人で会話をしている。
 
『彼の者』の存在を知っていながら、老人の声はまだ元気で、もう直ぐ死ぬ者の声ではない。

「私の領域を踏み荒らしたことを」

 ザクっという音と共に、『彼の者』の後ろに立つ者がある。
 

そいつは、『彼の者』の心臓を後ろからナイフで一突きしていた。

『彼の者』は声を上げずにそのまま前に倒れると、『彼の者』の周りに血溜まりができ、それは次第に広がろうとしていた。

 周りの者達は警戒して、近づくことも出来ない。いつまでも様子を窺っている。

 三十秒ほど待ったが、倒れた体は起き上がる事はなかった。

 老人は被っていたフードを脱いで、刺殺した男に『彼の者』の処理を命じる。

「私はもう寝る。ふとどき者の処理が終わったら、お前は交代しておけ」

 そう言い残して、老人は、椅子の後方のカーテンの向こう側へと姿を消した。
 残された男は、彼の者を背に担いで焼却炉まで運ぶこととなった。

 建物を裏口から出て数百メートル。満月の光が届かない道を選んで、街の焼却炉の所まで誰にも見つからないように進む。

 到着したが、時間外のため焼却炉は停止している。

それでも構わず、男は炉の投入口を開き、『彼の者』を炉に投げ入れた。

 中は暗くて見えないが、中はドーム状になっていて、高さは十メートル以上ある。
「よし、戻って交代しよう」

 男は炉の投入口を閉じて、帰り始めた。
 だがその瞬間、後方の焼却炉の中から“ガタン”という音が響いた。

 男は息が詰まり、完全に足を止めて強張った表情で振り向く。
 投入口は閉まったままだ。
 中から響いてくる音は聞こえない。

だが、男は、自ら炉の投入口に近づいた。
「……」
 緊張で胸の鼓動を高鳴らせながら、炉に耳を当てて中の音を聞き取ろうと息を潜める。

 疑心暗鬼となり、耳を当てたまま動けずにいると、“ドォン!”という爆発音が響いて、鼓膜が破れそうな程の衝撃を受けた。

 耳を抑え、声を潜めたままのた打ち回る。
 ゴロゴロ転がってうつ伏せとなったとき、足元から鈍く重い戸を開けるような音がした。
 男は固まったまま大量の脂汗をかく。

 瞼をギュッと瞑り、炉の中から出てきたであろう存在など、とても目視出来ない。

「……は、はやく、早く、居なくなってくれ」
 そうしていると、しばらく動かなかった足音が、男を通り過ぎるように消えていった。
 
 男は瞑ったままで一息吐くと、ゆっくりと瞼を開く。

 目の前に、真っ黒な靴を履いた足が視界に入った。それも丁寧にこちらの方向に向いている。

 男は震え、喉を絞められるような感覚に襲われながら、顔を上へと上げた。
 真っ黒なローブを着たその者の影で顔は見えない。
 
 だが恐怖で、自分の命を狩りに来た死神のように思えた。

 真っ黒なローブの『彼の者』は、手を男の背中・・・左胸に位置する場所に伸ばしてくる。

 男は当てられた手によって、何かが掴まれたような感覚を覚えるが、数秒後には「おやすみ」と言う言葉を聞いた。
 そして、その言葉を最後に、視界が真っ暗になった。
 

「それでは、再び失礼させていただきましょう」
 

 そのときの『彼の者』の挨拶を聞くものは、誰も居なかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
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