『 -巷談・勝小吉- 気ままにてござ候 』 まとめ(1)                   | 満天の星Lovelyのブログ

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60周年をあれほどに輝かせながら61周年へと繋げていかれた舟木さん、本当にお見事でした!
2023年もこれからもずっと、素晴らしい夢時間を頂けますように・・・。

                           舟木一夫特別公演
                 -巷談・勝小吉- 気ままにてござ候 』 まとめ (1)                 
                   
                  平成27年12月1日(火)~23(水)
                        新橋演舞場 

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             プロローグ―― 「就活の日々」― 江戸時代末 夏の朝
    
             第一場 ――― 本所亀沢町 小吉の住居
                        「小吉の爆発― 同日昼過ぎ

             第二場 ――― 吉原 大黒屋の二階座敷
                        「居続け― 4か月後の夜更け
                                                             

             第三場 ――― 同じく仲ノ町
                        「再会― 続く時刻                         


             第四場A、B ― 亀沢町 座敷牢
                        「麟太郎の誕生― 数日後の昼~三か月後

             第五場 ――― 両国 道具
                        「八年後の商売― 春爛漫の昼

             第六場 ――― 本所割下水 小吉の家
                        「女房の覚悟― 続く時刻

                     第七場 ――― 元の道具市
                        「花の喧嘩場― 続く時刻

                  エピローグ―――本所回向院辺り
                                            手打ち― 続く時刻

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             プロローグ―― 
            「就活の日々」― 江戸時代末 夏の朝
    
         勝 小吉(勝家の婿養子)
                  ・・・・舟木 一夫

     お熊(小吉の乳母)
                  ・・・・英 太郎

     小林隼太(小吉の喧嘩友達)
                  ・・・・山内 としお

  (花道より)
   (お熊)      さあさ おほほ 早よう 早よう 
              お出かけの前にご挨拶をせねば。 おぼっちゃま、 おぼっちゃま~ 。
    (小吉)       お~い、お熊~。 朝っぱらからやってられねぇよ。 どうでもいいけどその
              ぼっちゃまというのは、そろそろやめてくれないか。
                         では、若様、おだんな様、殿様とか。
                         どっちでもおんなじようなもんじゃねえか。これでも、おれは旗本勝家の当主
                         なんだぞ。

 イメージ 3            年寄りを相手に威張ってないで、さあさ、お番入りのご
      挨拶を。
             今度こそはお役を頂いて参る。
             御免下さりませ。 小普請組の勝小吉がご挨拶に参り
      ました。
             あ~ごくろう、ごくろう。
      小普請組とは聞こえはいいけれど、何のことはない、お
      役のない暇な人たちの集まり。  南無 妙見様、 南無 
                         妙見様、 ぼっちゃまにお役がつきますように。

                         あら、おぼっちゃま、やけに早うございましたね。
                         取次ぎもしない。 ろくに顔も見ないで、、、。
                         次へ参りましょう。
                         ぼっちゃまのお兄様方は、 お二人とも今じゃお代官様。本来ならぼっちゃまも
                         こんな苦労はしなくてもいいものを、 旗本の三男坊として勝家に養子に入った
                         ばっかりに、、。  あんなに様子がよくって、喧嘩が強くて女にもてて、勿体無い
            とはお思いになりませんか。
                         失礼をつかまつる。 本所の勝小吉でございます。
                         ああ、けっこう、けっこう。
            ばか、 間抜け                                                  イメージ 4
                         旗本41俵の勝小吉が、このような辱めを
            受けるおぼえはない。
                         (門を出ながら裃を脱ぎ、叩きつける)
                         役者じゃあるまいし、お役はなくても生き
                         ていけるわ。 
                         ぼっちゃま、もう一軒。
                         ああ、もういい。 俺が短気なのも脳みそが
                         弱いのも、 元を正せばみ~んなおまえの
                         おっぱいの質が悪いからだ。 
            (着物の衿を開け、小吉のほうを見るお熊)
                         そんな湿度の高い目で見るなよ。 今更おま
            えのおっぱいに付き合っちゃいられねえわ。    
                         俺だってこれだけの男っぷりだ、 おっぱいの二つや三つ抱えて忙しいんだ。
            それには奥様もはいっておられますか。
                         当りめぇだ。

    (花道より、小林隼太が道場仲間と登場)
                         あれだけ叩きのめされて、まだ腕の差が判らないのか。
     (小林隼太)    まことの腕だめしは、道場では判らん。
            今日の小吉はちっと機嫌が悪いぞ。
                         今日という今日は、ズタズタのボロボロに
                         おぼっちゃま
                         婆あは黙ってろ。 (恨めしげに小吉を見るお熊) お嬢さんという面か。
            お主、こんなものはいらねぇよ。

            (刀を放り投げ、隼太たちと喧嘩をしながら花道を去る。)

            あ~また川に叩きこんで、、、あんなに楽しそうに。 卑怯な、、竹やりなんぞ、
            あ、後から、、卑怯者、、乳母が助けに参りまする、、、とはいうものの、私なん
            ぞお役に立たないし。 家に帰って休ませていただきます。 おぼっちゃま~。
            (小吉の刀を担いで、花道を去る。)



                                       ナレーション

        え~只今マイクのテスト中、只今マイクのテスト中。  平成27年12月、舟木一夫
        特別公演にご来場の皆様、お忙しい中、お寒い中、かくも賑々しく、かくもに(×)
        (×)に(×)ぎ(×)し(×)く(×) ・・はい?  わたくし?
        申し遅れました。 私は今日のお芝居の語り部といいますか、進行役といいますか、
        手っ取り早く言えば、ナレーションを担当いたします、笹野、笹野高史でございます。
        ま、芝居の暗転中の単なる繋ぎ役でございまして、、。 もとより、出演者の一人で
        はございますが、何分、頂くものも超格安でございまして、うっかり引き受けちゃった
        もんですから、弱っております。
        
        このお芝居の主人公、勝 小吉っつぁんは、まったくもって荒っぽい、 雑を絵に描い
         て宴会場に飾っているようなもんでして、、。 それにしても、就職活動の厳しさは、
                 今も昔も変わらないようで、幕府の方だって雇える人数は決まっておりますから、お
                 役もそうたくさんあるわけではなし、 貧乏旗本の次男、三男などは、やむなく由緒だ
             けは正しいところへ養子に入ったりして、 お役にありつくことをしておりました。 小吉
                 っつぁんの入った先の勝家もいろいろと厳しいようで、、、。  おまけに小吉っつぁん、
                 どう見てもおぼっちゃんという柄じゃあないようで、 真面目にお役につこうという気が
                 あろうとは思えない。 おまけに乳母つきの就活とはね~。 いやはやこの先どうなり
        ますことか。



                  第一場 ――― 本所亀沢町 小吉の住居
                     「小吉の爆発― 同日昼過ぎ
    
            環(おのぶの祖母)          男谷平蔵(小吉の実父)       御家人
            ・・・・水谷 八重子             ・・・・北町 嘉朗

       おのぶ(小吉の女房)        男谷彦四郎(小吉の兄)
            ・・・・葉山 葉子               ・・・・林 啓二

                                                           
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    (おばば様)  このおろか者、おろか者、おろか者~。 おろか者に手足をつけて、着物を着せ
            ればおまえ様じゃ。もう、今日という今日は私の堪忍袋もぶちぶちに切れました。
            これ以上勝家に置いておくわけにはいかぬ、今すぐ、ここから出て失(う)しょう。
   (小吉)     そうはおっしゃりましても、おばば様、この家は男谷(おだに)の父が、おばば様と
            おのぶの困窮を見かねて自分の敷地に引き取ったという、、つまりこの家は私
            の家でございます。
            なれば、私は勝家の居候というのか。
            いえ、そういう風に受け取られては、、、。
            あぁ、あぁ、分かりました。 それなれば私は遍路にでもなって、西国の果てで
            野垂れ死にでもいたしましょうか。 なれば、勝家の養子縁組は破談じゃのう。
            おのぶとの祝言も取りやめじゃ。
            それでは私が出て行きます。

 イメージ 6  (おのぶ)    私もご一緒に。
            おのぶ、おまえにも小吉のばかがうつったのか。 
            ばか、間抜け、知恵足らず。
            あのお役を受けてさえいれば。
            そうは言われましても、仕事そのものがないので
            すから。
            では、おのぶに免じて、しばらくはここに居るのを
            許しましょう。
            それはそれは、有り難き幸せ。 (ふくれっ面で)


            お番役に付かぬ限り、祝言はお預けじゃ。         
             (おばば様が退場した後の襖を開けて、)
             ばか~。 あ~ちと、手拭いを冷たくして持って来ては呉れぬか。 おばば様
             ときたら、人の顔さえ見れば馬鹿だの、間抜けだのと、、。
             これは、歯がお悪いのではございませんよ。 漆かぶれと同じで、あなた様の
             はおばあ様かぶれでございますよ。

            (男谷の父登場)
            これはこれはお父上。 本日は申し訳もござりませぬ。 お加減のほうは、、、。
  (男谷平蔵)   大事無い、大事無い。
            小吉殿、それは何とした。
            虫歯にござります。
            大事にせいよ。 小吉殿、おのぶ殿もお聞きなされよ。 私の父は盲(めしい)
            座頭で、越後より艱難辛苦の末、検校の位にまで上り詰め、30万両を蓄えた。
            30万両!? (声が裏返る)
            そしてこのわしには、3万両で御家人の株を買うてくれた。 お城の方々には、
            口では言えない、数え切れぬ辱めを受けた。 それゆえ、小吉殿には、何とし
            てもこの勝家を立派に盛り立てて欲しいと願うておる。 邪魔したな。
   (お熊)     おぼっちゃま、おぼっちゃま、大変でございます。
            おまえね、もう化けるほど人間をやっているんだから、少しは落ち着けよ。
            これが落ち着いていられますか、お兄様が、、。
            何、男谷の兄上が? またお小言だよ。
            これはこれは兄上、 本日は誠に面目次第もございません。
  (男谷彦四郎) 話は聞いた。 ご免、酒の支度など致せ。
            只今、、。
            で、兄上。
            こちらのお二人が、お前のお番入りに大層な働きかけをしてくれてな。 どうだ
            驚いたか。
  (御家人2人)  これはまた、きばりましたなぁ。
            向島の料理茶屋「葛西太郎」とは、さすがですなあ。
            お番入りには、気配り、心配りが肝要、けっこう、けっこう。
            ささ、勝殿、祝盃、祝盃!
            いや、私は生来酒癖が悪く(彦四郎が、それは言うなと扇子で合図する)、、、
            いえ不調法でござりまして、、、。                                                              イメージ 7
            では、お目見え振舞いのお稽古という
            ことで。
            いざ、いざ。  プ~~~これはたまらん。
  (彦四郎)    酒だか酢だか、見当がつかん。
            いや、けっこう、けっこう、鍛錬でござる。
            ぐいっと空けられよ。お番入りが叶えば、
                          新参いじめとして、これぐらいのことでは
                          済みませぬから。
            さ、おけいこ、おけいこ。 いざ。
            お見事、お見事、ささ、盃を重ねられよ。 
            さすがは勝殿じゃ。
            駆けつけ三杯と行きましょうぞ。

            (小吉、たまらず徳利の酒を御家人へ掛ける)

            世間の裏表も分からぬ廊下とんびの茶坊主が、5000万の組頭へ芸者総上げ
            の大盤振る舞いとは、聞いて呆れる。 どうせ兄上の懐を当てにしてのことだろ
            うが、 あっ いけねぇ、そんなこと言っちゃ太鼓持ちが気を悪くする。
                          これでお番入りが叶うと思うたに、それをおまえは、、ええい、今日という今日は
            おまえのような大ばか者はこの兄が成敗してくれる。
            分かりましたよ。 きれいさっぱりやって下さいよ。
            おまえ様。
            あれっ、なんでおまえがここに出てくるの?
            だって、おまえ様。
            こんなのはね、いつもの兄弟喧嘩なんだよ。
  (おばば様)   おのぶは置いといて、あのばかだけ、この際です、さっぱりとやってお貰いな
            さい。
  (彦四郎)    ええい、おまえにわしの気持ちが分かるものか。
            兄上。
            あぁ、惜しかった。 もうちょっとだったのに。
  (おのぶ)    おばば様。
            ああ、いやな汗かいた。 ちょっとひとっぷろ(一風呂)浴びてくらぁ。
            そうなさいませ。
            (おのぶ、かんざしを取り出そうとしている)
            ところでお熊、あの酒はなんだい?
            いいお酒みたいでしたから、隠しておいたんですがね。
            何時から?
            15~6年前から。
  (おばば様)   おのぶ、そのかんざし、質に入れるつもりじゃないだろうね。
             (おばば様が多額の金を出しておのぶに渡す。 その様子を見た小吉は、
             ニヤニヤしながら、そ知らぬ顔でおのぶが渡してくれるのを待っている。)
            おまえ様。
            おいおい、これは50両ぐらいあるぞ。

            おのぶから有り難く50両を受け取ると、小吉は「ちょいと出掛けてくるよ」と、
            鼻歌を歌い手拭いを振り回しながら、上機嫌で花道を下がる。
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      (おばば様)   あれだけ持たせてやれば、当分は帰って参り
      ますまい。 やっと厄介払いが出来た。 
      イヒヒヒヒ、 アハハハハ~~~。

            
                         
                            ナレーション

       ほ~らね。 さっき申し上げた通りでしょ。 小吉っつぁんに、お役が真面目に勤まるわ
       けがない。  物心ついたときから、 ず~っと企画はずれの気ままもので、 ここまで来
               ちゃったんだもの。 
       小吉っつぁんは、おばば様が大の苦手。 天敵のようなもの。 おばば様にしたって、
       苦りきってはいるものの、憎からず想い想われて一緒になった二人、人形の首を挿
       げ替えるようにもいかず、忍び難きを忍び、、、、。 
       ところで、只今の金子の一件。 おばば様にとってしてやったりだったのか小吉っ
       つぁんにとって渡りに船だったのか、 50両持っての尻に帆を掛けての疾走は、、。
       暇な男の懐が暖かくなれば、大体様子は決まってますな。 花の吉原で芸者を上げて、
               飲めや歌えの大騒ぎ。 50両程度の金はあっという間に吹っ飛びますが、そんなこと
       でめげる小吉っつぁんじゃあない。 女郎たちの用心棒よろしく、平気で一月経とうと
       三月経とうと、、。 このあたりが 小吉っつぁんの小吉っつぁんたるところで、全くもっ
       て、もう手が付けられない。

                                                (2) へ 続 く