
海賊とよばれた男(下)/百田尚樹 26146

★★★★★
琴線に触れるところばかりで
人前で読めない「海賊とよばれた男」
書斎に籠って読了。
国際的に孤立していたイランへ密かに向かう日章丸。
その船中で新田船長が国岡店主から
予め預かっていた手紙を船員たちに読み上げるシーンが最高だ。
新田はマイクを手にすると、
「諸君に告げる」と大きな声で言った。
マイクは持ち場を離れられない者に
船内スピーカーを通じて伝えるためのものだった。
「今から本船は、本社からの指令により、イランのアバダンに向かう」
乗員たちの顔に驚きと動揺が走った。
「今から店主の手紙を読む」
新田はそう言うと、胸のポケットから鐵造から渡された
封筒を取り出して、封を切 った。
そして中から便箋を取り出すと、力強い声でそれを読み上げた。
「日章丸乗組員諸君————」
新田の声がキャビンに響いた。
「終戦後、国岡商店は日本の石油産業確立のために猛進した。
しかしメジャーと、彼らと手を結んだ石油会社のために、
さまざまな圧力と妨害を受け、ついに重囲の包囲網を敷かれ、
身動きが取れなくなった。
この絶体絶命の窮地を打ち破るために、
与えられたのが日章丸である」
新田の太い声が続く。乗員たちは身じろぎもせずにそれを聞いていた。
「世界の石油業界は「七人の魔女」と呼ばれる欧米の石油会社に
長い間支配され続けてきた。
イランはそれに立ち向かった勇氣ある国である。
しかしイランはそのために 厳しい経済封鎖を受け、
彼を助ける者は誰もない中、世界から孤立し、困窮に喘いでいる」
新田は便箋をめくった。
「国岡商店はイランの石油を購入することによって、
彼を助け、また日本の石油業界の未来に貢献する。
今や日章丸はもっとも意義のある矢として弦を離れたのである。
行く手には防壁防塞の難関があり、これを阻むであろう。
しかしながら弓は桑の矢であり、
矢は石をも徹すものである。
ここにわが国は、はじめて世界石油大資源と直結したる
確固不動の石油国策の基礎を射止めるのである。
この矢は敵の心胆を寒からしめ、
諸君の労苦を慰するに十分であることを信じるものである」
鐵造の檄文を新田船長が読み終えると、
キャビン内は静まり返り、異様な緊張が張り詰めた。
新田は乗組員たちの顔を見渡しながら言った。
「諸君らもすでに知っておるように、
イギリスはイランの石油を積んだ船には
あらゆる手段を取ると宣言しておる。
したがって今から日章丸とわれわれは、戦場に赴くこ とになる」
新田が言い終えたとき、誰かが「日章丸、万歳!」と叫んだ。
次の瞬間、全員が口々に、
「日章丸、万歳!」「国岡商店、万歳!」と叫んだ。
狭いキャビンの中に「万歳」の声が何度も轟き、
やがてその声はひとつになった。
「日本、万歳!」
日本を守るために戦ってきた男たちに熱くなる。
今なおホルムズ海峡は不安定なままだが
出光興産が所有する「日章丸」が、
イラン産の石油を日本へ運ぶために
1953年に行った歴史的な任務は、
両国間の長きにわたる友情の証であり、
そのレガシーは今日においても
極めて大きな意義を持ち続けています。
その結果の
出光タンカーがホルムズ海峡通過 原油積載200万バレル、名古屋へ―日本人3人乗船
出光、石油調達でイランと歴史的関係 ホルムズ通過、通航料支払わず
を見て、政権も変わりながらも70年も前の信義を忘れずに貫く
イランと出光興産に感動する。
それにしても、イギリスや米国が
イランにして行ってきた仕打ちのあまりの酷さよ。。
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