宗教の現在地 資本主義、暴力、生命、国家 池上彰 佐藤優 23254
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偶然だがアメリカ同時多発テロ事件の日、911に読む。
宗教の暴力、怖さを身に染みた日、でもあった。
佐藤
実は仏教でもイスラム教でも神道でも、
エキュメニカルな思考・行動をする人と、
ファンダメンタルな人と、両方がいます。
そのファンダメンタルな人のごく一部に、
暴力を使って他者に自分たちの思想を強要する、
あるいは暴力によって他者を排除しても
構わないと考える人たちがいるのです。
ところが、その人たちの思考には、
きわめて共通した面白さ──敢えて「面白い」と言います──があります。
それはまず、自分たちの宗教のために
自分の命を捨てる覚悟ができていること。
そして命を捨てる覚悟があると、
途端に他者の命を奪うことに対するハードルが低くなることです。
・・・とっても怖いね。
全く違う思想、価値観、判断基準を持つ人がいる。
これは日本人にはなかなか想像できないところ。
池上
本当に世界の終わりが近いという危機に瀕したとき、
これからどうやって生きたらいいかわからないときこそ、
人々は救世主や教え導く人を求めるのだと言えます。
そういうときこそ宗教が役割を果たすことを、
こうした危機を訴える思想は示しています。
そのような観点からみると、
「 A Iによってシンギュラリティがやがてやって来る。
シンギュラリティが来たら、私たちの仕事はなくなってしまうのだ」
という危機を訴えるA I教という宗教があるように感じます。
A I教が客観的に果たす役割があるのではないかと。
佐藤
それは同感です。「悔い改めよ。神の国は近づいた」の代わりに、
「悔い改めよ。シンギュラリティは近づいた」と言う。
それで今までの律法はすべて廃され、
今までの仕事はすべて廃される。
そうして新しい時代がやってくるのだということで、
基本的には洗礼者ヨハネやイエスと同じフレームで人を煽っています。
ということは、キリスト教をよく勉強しておけば、
人を煽り、政府から助成金を得、
民間からカネを吸い上げる形で儲けることができる。
その秘訣はキリスト教の中にあるから、
神学を勉強すると金儲けにつながるかもしれない。
このようになるのではないでしょうか。
池上
佐藤さん、本当にクリスチャンですか?
佐藤
もちろん洗礼を受けた正統派のクリスチャンです。
佐藤優さんのぶっちゃけトークが面白い。
ここまで冷静に多角的に自らの信仰を客観視できることと
深い信仰というのは両立できるものなのか。
先ほど、インドでは馬小屋を王宮に変えて布教したと言いました。
これは、シンクレティズム(宗教混淆)の一種です。
このシンクレティズムは日本をはじめ、
どこにでもあるわけです。
たとえば、キリスト教の原形は砂漠の宗教だから、イスラムに近い。
それが哲学や学問体系と結びつくのは、
ギリシア思想、ギリシア哲学とのシンクレティズムでしょう。
カトリック教会の場合は、教会法ができることで
秩序、ヒエラルキーが生まれてくる。
これはローマ法とのシンクレティズムです。
ドイツの教会が民族と結びつきやすいのは、
ゲルマン的な部族神話とのシンクレティズムです。
それぞれの地域でシンクレティズムはある。
だから「土着化」とも言うわけです。
純粋なるキリスト教など、存在しません。
本書前段にもあったが「キリスト教だから・・・」「日本人だから・・・」
とステレオタイプに考えるのはダメだ、ってことなのだろう。
「思考停止」の怖さを改めて思い知る。