日本戦後史論/内田樹 白井聡 22065
★★★★☆
内田樹さん中毒未だ解毒ならず。
カタストロフ待望って誰にでもあるのかも知れない。
『方丈記』の中の印象深いシーンって、
みんなカタストロフなんですよ。
大火であったり、飢饉であったり、大風であったり。
でも、読んだあと、僕たちもそれしか覚えていないんです。
大廈高楼が倒壊するさまを見て「諸行無常」を感じる。
そのとき、「ここが原点」だという確信が得られる。
方丈の庵に住んで、無一物で暮らしている自分の
ありようがいちばん真っ当な、地に足が着いた状態なのだと思う。
鴨長明でも吉田兼好でもそうですよね。
いろいろと人工的な制度を作り上げて、
それをさまざまな物語で装飾するのを見ていると、
「こんなもの全部滅びてしまえばいい。
そうすれば、人間がほんとうにあるべきかたちが現れてくる」という
シニカルな氣分が嵩じてくる。
カタストロフ願望というのは、
日本の伝統的な無常観に根を持つものかもしれません。
それまで営々として築き上げてきたものがすべて灰燼に帰して、
「俺たちがしてきたことは、いったい何だったんだろう……」と
呆然自失して、諸行無常を感じること。
それこそが人間としてあるべき本然のかたちではないのか。
そういうふうな心性って、日本人の中にはあるんじゃないですかね。
死骸が鴨川を流れていくのを見下ろしながら
「なんだかすごいことになっちゃったな」とつぶやきながら、
「まあ、こういうのが俺たちには似合っているんだよ」と思って、
足が地に着いている実感がする。
一九四五年の八月一五日も帝都の廃墟を見ながら、
敗戦国民たちはみんな妙に明るかったっていうでしょう?
戦争が終わったからと言って泣く人もいたでしょうけれど、
ほとんどの人は焦土と化した自分たちの街を見ながら、
「やれやれ」という氣持ちになった。
それは自己同一性と現実が一致して安定感を得たからじゃないでしょうか。
これが自分たちの原点だ、ここから始めるのだ、と
そうかぁ、なるほどなぁ。
だから
がロングセラーになったり、
ノストラダムスの大予言が一世を風靡したり。
最近Audibleで聞いている「平家物語」も
諸行無常でありカタストロフィだ。
これって「日本人」のメンタリティなのかな?
「人間」のではなく。
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