成果主義と人事評価/内田 研二 06327 | 年間365冊×今年20年目 合氣道場主 兼 投資会社・コンサル会社 オーナー社長 兼 グロービス経営大学院准教授による読書日記

成果主義と人事評価/内田 研二 06327

内田 研二
成果主義と人事評価
★★★★★

大学院の「人的資源管理」クラスの参考書として。


この本は良かった。


先日の「メルク社」で人事評価の難しさ、奥深さを学んだが、

この本は成果主義から人事評価へアプローチした本。


 人事評価は存在感の証明

 

 会社での人事評価や処遇に対して常に不平不満を持つ社員がいる。

 世間から見れば恵まれた処遇であるにもかかわらず

 不平不満を訴えるのは、他に自己の存在感を確認する手段が無いからだ。

 上司や職場の同僚から正当な評価を受けている人に

 処遇の不満が少なくないのは自分の存在が安定し、

 自己主張をする必要が無いからである。


 反対に上司との関係が悪かったり、職場で孤立している場合には、

 自分の価値を宣伝し、認めてもらいたいがために不満を訴える。

 このような社員は、給与水準に不満があるのではなく

 正当に評価されていないことにこだわっているので

 この不満を金銭で解決しようとしてもムダである。

 本人の存在感を認めてやらない限り問題は解決しない。


 この点で今日の人事評価は難しい。

 評価は、単に昇進の序列や金銭的な生活保障だけではなく、

 社員の存在感を証明する役割を担っているのだ。

 ある優秀な年棒制社員と年棒改正交渉の面談を

 行なった時のことである。

 「今年度は非常に良く頑張ってくれたので、

  翌年度の年棒は2割アップでどうか」

 と切り出した。

 当然相手は喜んで了承するだろうと思っていたが、

 彼は「自分の何が優れていて、何が課題であるのか、

 上司の評価を詳しく聞かないと納得できない」という。

 「新年棒の水準には全く異論が無い」といいつつ

 自分がどう思われているのか確認しないと

 納得できなかったのである。


 人は孤独や不安感を感じると

 自己の存在感の証明を第三者に求めようとする。

 職場の人間関係が希薄であったり、

 上司とのコミュニケーションが悪くなると、

 社員は人事評価と処遇にますますこだわるようになる。

 ところが、自分を認めて欲しいという、

 社員の期待に応えたくても、

 人員削減や処遇の抑圧を徹底しなければ

 経営が成り立たない。

 自己の存在感が薄くなりつつあり、

 生きている実感を取り戻したいという社員の人間的な欲求と、

 コスト抑制という経営の論理が真っ向から対立するのだ。

 経営の要請を重視すると社員の人間的な欲求が満たせなくなり、

 社員の欲求に応えようとすると経営を圧迫する。

 この矛盾が現代の人事評価と処遇の運営を難しくしている。


クラスでのディスカッションにおいて、

評価やそれに伴う報酬が「金銭」に偏っていたのが

どうしても氣持ちが悪かった。


仕事の報酬とは何か。


改めて、

田坂 広志

仕事の報酬とは何か


を読みたくなった。