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🪖ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって100日が過ぎました。


この侵攻を米国のニューヨーク・タイムズ紙は「ロシア・ウクライナ戦争」と書きましたが、連日、欧米メディアに追随する日本のマスコミ報道に危機感注意を覚えます。




🧠人の脳は「わからない」という状態に耐えることができないといわれます。本能的に、早く理解をして、安心したいと考える。そこに善悪が関わってくると、なおさら早く結論を出したくなってしまう…


ウインク今日はロシアに詳しい元外交官から、私たちが考えるべきこと、目指すべき未来を学んでいきたいと思います下矢印



佐藤優

(さとう・まさる)1960年東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、専門職員として外務省に入省。在ロシア日本大使館に勤務。帰国後、外務省国際情報局で主任分析官として活躍。作家として大宅壮一ノンフィクション賞、毎日出版文化賞、第68回菊池寛賞など受賞。キリスト教徒。現在、末期の腎不全と前立腺癌であることを公表し闘病中。




2月24日にロシアがウクライナを侵攻した。ロシアの行為は、ウクライナの主権と領土の一体性を棄損する国際法違反の行為だ。


日本は米国と連携する姿勢を明確にして、従来の対ロシア外国を根本的に転換した。ロシアは日本を、米国、EU加盟諸国などとともに非友好国に指定した。


日本のマスメディアの報道は、ウクライナ、米国、EU諸国を情報源とするものがほとんどだ。戦時になると、各国指導者の支持率は向上し(今回、米国だけは例外)、マスメディアは無意識のうちに自国の政策を支持するようになる。



筆者は、毎日、ロシアのテレビを観て、ニュースや有識者の討論をチェックしているが、日本や欧米とロシアの情報空間は、全く異なるものになり、交わらなくなっている。


国際情勢を分析する場合には、相手の立場や論理を正確に知らなくてはならない。しかし、現下日本のメディア状況では、ロシアの論理を紹介するだけでも非難されるような状況になっている。


日本政府は冷静に情報を収集、分析しているが、その内容は国民に知らされない。国民にもマスメディアにも「こうあってほしい」という思いがあり、その流れに反する情報は受け入れなくなっている。



このような状況で、創価学会やキリスト教などの世界宗教を信じる人たちは、各国政府の立場とは別の切り口から事態を観察しなくてはならないと思う。


筆者はプロテスタントのキリスト教徒だが、戦争を分析する際には、池田大作創価学会第3代会長が創価学会の「精神の正史」として書いた小説『人間革命』の有名な冒頭の格言を基本として考えることにしている。


"戦争ほど、残酷なものはない。戦争ほど、悲惨なものはない。だが、その戦争※はまだ、続いていた。愚かな指導者たちに率いられた国民もまた、まことに哀れである"


※当時は太平洋戦争のこと


特に「愚かな指導者たちに率いられた国民もまた、まことに哀れである」という視点が重要だ。



ウクライナ国家もロシア国家も自らの行為が正義であると主張する。しかし、世界宗教の視点からは、指導者たちの心の歪みが、国民を哀れな状況に追い込んでいるのだ。


侵略戦争に駆り立てられているロシア国民も哀れである。ウクライナでは、2月24日に戒厳令が布告され、18歳から60歳の男性の出国が禁止されている。ウクライナ政府は国民に武器を配り、火炎瓶製造法を教え、ロシア軍に対する徹底抗戦を主張している。



日本国民、ウクライナ国民、ロシア国民、米国民など、どの国家に帰属しているかに関わりなくウクライナ戦争に直面している我々は、「人間はいかに生きるべきか」「何が正義で何が悪か」「人間の苦悩はどこから来るのか」ということについて、考えざるを得ない状況に置かれている。


そのような意識を持たない人がいるならば、その人は戦争の熱気に煽られて視野が狭くなっていると筆者は考える。こういう人も、愚かな指導者たちに率いられた哀れな国民の一人なのである。



池田氏の発想は、常に現実的だ。宗教人として、当時、体制が異なったソ連とどう付き合っていくかについても真剣に考えている。


"昭和31年10月、日ソ共同宣言が取り交わされ、両国の国交が回復された。平和条約は将来の課題となったが、これを契機として、日本の国連加盟が可能となり、国際社会の仲間入りを果たすことになる。まさに歴史的な方向転換であったといってよい。


そうした時代の動きを肌で感じながら、国会で行われた批准書決議の様子を傍聴したことも懐かしい。約2時間にわたる決議の行方を見つめつつ、私も将来、自分なりの立場で両国の友好の舞台を開くことを心に期したものである。


国と国を結び、人と人をつなぐ ー 。それは何よりまず、互いを「人間」として尊敬し信頼し合うことから始まる"


1956年の日ソ共同宣言第9項では、平和条約交渉の継続と平和条約締結後にソ連が日本に(北方領土の)歯舞群島と色丹島を引き渡すことを約束している。


『日ソ共同宣言』

1956(昭和31)年に日本とソ連との間で交わされた国交回復のための条約。


『日ソ共同宣言』第9項

〈日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。

ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望に応えかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする〉

(日本外務省HP)


日ソ共同宣言は、宣言という名称であるが、日ソ両国の国会で批准された法的拘束力を持つ国際約束だ。ロシアはソ連の継承国なので、日ソ共同宣言の約束を履行する義務を負う。このことについては、ロシアのプーチン大統領も何度も明示的に確認している。



3月21日にロシア外務省は声明を発表し、日本との平和条約交渉を継続する意思がないと表明した。平和条約は、領土問題を解決し、国境線を確定しないと締結できない。ロシア外務省声明によって、北方領土交渉は当面、動かなくなった。


しかし、ロシアは日本の隣国であるという客観的状況は変わらない。ウクライナ戦争もいつかは終わる。その後、日本はロシアとの関係を再調整しなくてはならなくなる。このときの両国間の対話の基礎となるのが日ソ共同宣言だ。


日本とロシアの関係も「互いを人間として尊敬し信頼し合うことから始まる」と筆者も考える。逆に軽蔑と不信のスパイラルに入ると、日本とロシアの間で武力衝突が起きる可能性すら排除されない。


どの国にも善い人、平和を真剣に望む人はいる。そういう人々との信頼関係を強化していく作業に、今から静かな形で従事することが日本の国益に適うと筆者は考える。



月刊『潮』6月号

より抜粋



1974年9月 モスクワ

中ソ関係が一触即発な危機の中、ソ連のコスイギン首相から「中国を攻める気はない」と言質を取る。


1974年12月 北京

中国の周恩来総理にソ連の意向を伝え、日中の未来を語らう。周総理は公明党代表団に対して日本への賠償請求の放棄を語り、1978年の『日中平和友好条約』へと結実。


1975年1月 ワシントン

キッシンジャー国務長官と初会見。ヴェトナム戦争の即時停戦を進言。世界の平和を望む対話は7回を数え対談集も発刊。


1990年7月 モスクワ

ソ連崩壊後のゴルバチョフ大統領と初会見。「一番大切なのは対話」と響き合い、以降公私を超えた会談は10回を刻む。





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