日本人が電車を待つ際にきちんと列をなしたり、財布やスマホを落としても持主の下に戻ってくること、あるいは街中が清潔であることに対して、外国人が驚いているなんていう話をユーチューブなどでよく見聞きする。

 

 私自身はそうした感想を海外で直接聞いたわけでもないし、日本で生活している身からすれば「いやいや、ロクでもない人間もいるよ」と思ったりはするのだが、ホントのところはどうなんだろうね。

 

 私が小学生ぐらいの頃は、筒井康隆が『農協月に行く』で描いたように日本人の海外旅行時のマナーの悪さが言われたり、韓国に買春旅行へこぞって出かけていたみたいな話もよく聞いていたのだが、いつの間にマナーの良い民族になったのか。

 

 70年代頃だと、戦中戦後に苦労した世代の人たちが慣れない自由を得てはしゃいじゃったということがあったのかもしれない。

 戦中戦後に育った世代だと、教育勅語から戦後民主主義へガラリ変化したことで、倫理観や道徳観がバグってしまったということもあったのだろうか。

 

 そのまま日本人の文化慣習がグズグズになってもおかしくなかったところを、なんとか今も規律を保ち続けているのだとすれば、その大きな原因の一つには「漫画、アニメ」があったのだと思う。

 

 少年ジャンプに代表される少年漫画は「友情、努力、勝利」をモットーとして作品作りを続け、また少女漫画においても前記3要素のうちの勝利を純真純愛に差し替えたような作品を世に出し続けた。

 少年少女たちは、それらを読むことで「まっとうな生き方、まっとうな考え方」というものを学び、身体の芯にまでしみ込ませた。

 

 また「日本人の多くからの共感を得られる感動のドラマ」を紡ごうとした時には、どうしても古くから慣れ親しんできた物語、つまりは戦前からの古典や伝記に依るところも大きかったハズで、そうしてつくられた漫画等の創作物が、新たな世代にまで伝統的な感性を継承することになった。

 

 世界各国でグローバル化やらポリコレやらと騒がれる昨今、それでも多くの日本人の思考や生活態度がまだなんとか「壊れていない」のは、そうしたことの影響が大きいように思う。

 

 そして、そんな日本の漫画が世界中で人気になれば、もっと世界は良くなるのかもしれない。