そんな事になるなら、もういっその事、ちゃんとダメにして欲しい。
そんな事が世の中にはたまに起こる。
昔チャリのサドルだけが盗まれたことがあった。誰かが欲しがるような特に素晴らしいサドルだった訳でもないので、明らかに嫌がらせである。その時思ったのは・・・
盗まれた方がまだマシ!
という事だ。彼女が浮気を繰り返してはいたが、本番はしていない。でも本番直前まではネチネチとやっていたみたいに、だったら本番された方が逆に良くね? みたいな、そんな感じ? 隕石落ちて来て、地球上で自分だけ助かっちゃったみたいな、一緒に死にたかったんですけどみたいな気分? 分かるか? 分かるか? 分かるのか?
そしてサドルのないチャリを立ち漕ぎで帰るのは物凄く恥ずかしい。どこかで隠し撮りされてんじゃねえかと疑いの気持ちすら沸き起こる。サドルだけ盗むって、犯罪としては極めてラフな訳でそんなラフさの犠牲になりました感全開な立ち漕ぎに耐えるタフさは俺にはない。
しかも交番前で職質されるというダブルパンチ。
おまわりさん「あ~君、どうしたのその自転車? 何でサドルがないの?」
俺「・・・僕が知りたいです」
おまわりさん「え?」
僕「盗まれました」
おまわりさん「サドルだけ?」
僕「はい」
おまわりさん「何で?」
僕「分かりません(と答えつつ、犯人捕まえてテメエで犯人に聞いてみろ、馬鹿!と思ってる)」
でもって当然疑われる訳です。本当は君がこのチャリを盗んだんじゃないの? みたいに・・・。
道行く人はサドルのないチャリを片手に職務質問されている俺を珍しげに横眼で眺めながら通り過ぎる。
こんなことなら、いっそ本当に盗んで逮捕された方がマシ!
と俺は思った。
でも不思議と人生はそんな事には滅多にならない。いっその事なんてやらせては貰えない。日々若干不幸だが、日本に生まれただけまだマシかもしれないというグレーゾーンで繰り返される中途半端な薄さのカルピスのような日々。
もういっそ、原液のまま飲みたい!
というのは、嘘だ。でもそう叫びたい。そんな湿度の高い空気感だけはなぜか拭えない。
本番は7月2日から、下北沢シアター711なのである。
実は宣伝だったりするのである。
さようなら。。。