男は負けの中にある渋みが効いた美学が大好物である。とちょっと偉そうなのである。
ドンキ・ホーテがどんな話なのかは良く知らないが、風車に戦いを挑むあの気持ちは何となく男なら分かるのではないだろうか? そして男はドンキで大人のオモチャが売られている気持ちもきっとよく分かる。それはいいとして、先日も僕の知り合いが電柱に凄い勢いでローキックを3発かましていた。
ローキックの「ロー」の所に彼が本気で戦いを挑んでいた感じが滲んでいて、何だか切ない。
電柱はびくともしない。いや、びくともされたら困る。電柱にパンチを入れる奴やとび蹴りをかます新卒らしきサラリーマンは深夜2時の立川南口の名物だが、誰も本気で電柱を倒そうとは思っていない。倒れたら400万の弁償なので、むしろ絶対に倒れるなくらいの勢いだ。倒れたら俺の人生も倒れると言わんばかりだ。
しかし電柱には何度か痛い目に合わされた。小学校の時はチャリで電柱に激突し、あの電柱に巻いてある無数のボツボツが顔に複写され、しばらく消えなかった。そのお陰で顔にチラシを貼られずに済んだ。
今でも時折電柱にぶつかることがあるが、普通に硬い。風ってこれ倒しちゃうの? すげーな風! と変な感心をすることもある。また携帯を見ながら歩いている時など、その影に驚き、恥ずかしい時もある。鳥の影に驚くよりかろうじてマシくらいの救いしかない恥ずかしさだ。
かく言う私も電柱に何度かパンチをかました事がございます。
理由は忘れた。。。多分大した理由ではなかったのでしょう。自分の席についたキャバ嬢がワキガだったとか、その程度の理由だったのではないでしょうか?
毎年7月くらいになると、立川の電柱はよく新卒のサラリーマンに殴られるという受難の季節を迎えます。
大学生だった去年まではバカにしていた臭いおっさんに怒られ、頭を下げ、別に入りたかった訳でもない会社でやりたくもない仕事をやらされ、ヘトヘトになる・・・。
このまま、こんな感じで終わるんだろうか・・・俺の人生???
そうだよ、終わるんだよ。と笑顔で教えてあげたいところですが、そうもいきません。新卒サラリーマンの苦悩は続きます・・・。
なんて書くと、サラリーマンにならなくて良かった、とか、夢が大事、とか、ほざく役者やミュージシャンは腐る程いますが、僕は声を大にして言いたい。
こういう人がいるからお前ら呑気にバイトやって夢なんてぬるいこと言ってられんだよ!
と・・・。
そう、夢を追っているのではなく、追わせて頂いている、という事があまり分かってない人って多い。
そういう人が皆ちゃんと働いて税金入れたら消費税上がらずに済んだんじゃね?
とすら思うのであります。
役者だと言ってしまえば、そりゃ役者です。
ミュージシャンだと言ってしまえば、そりゃミュージシャンです。
脚本家と名刺に書いてしまえば、そりゃ脚本家です。
別に免許が必要な職種ではないので、そりゃそうでしょう。
でも僕は思うのです。
苦痛を伴うルーティンワークや理不尽の明細から引かれる税金などのあれこれ。風邪をひいても仕事は休めず、下げたくない頭を下げるストレス。増える年金。そういったものからちゃっかり逃げ切っておいて、それは都合が良いんじゃないの? と思うのです。
なので僕は、その仕事でしっかりと稼いで、それで税金を納めたのなら、その人は役者だし、ミュージシャンだし、まあ、何でも良いです。そう思うのです。
世の中は厳しいですが、その厳しさの中にいるのは、夢を追っている人ではありません。
というお話。
さようなら。