今回の内容は、2014年にこのブログで投稿したことがある文章です。いいねもコメントも付きませんでしたが、おれにとっては実体験でベストテンに入るような不思議現象なのですね。
なので、もう一度同じ文章を以下に掲載してみようと思います。ぜひ読んでみてください。
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未だにはっきりと憶えている、不思議な出来事がある。
おれがまだ札幌に住んでいて、札幌市立宮の森小学校の一年生だった時の、休み時間の教室だった。
友達と話すのが苦手で、少し苛められているような女の子がいた。その子の隣の席にやや乱暴な男の子がいて、きっかけは知らないがその男子が隣のその女の子の頭を叩いたのだ。女の子は机に突っ伏してベソをかき始めた。
あーあ、という感じでみんなで二人を取り巻いて見ていたが、やがて誰か女子が気づいて、突っ伏している女の子の耳を指差して何か言っている。みんな代わる代わるその子の耳を覗き込んだ。
おれも見た。その子は髪を刈り上げていて耳がむき出しだったのだが、左の耳の穴が何かで塞がれていた。それは暗い深緑色の液体で、耳の奥の方から溢れてきたようにしか見えなかった。耳の穴の入口まで溜まっていて、こぼれてはいないものの、今にもあふれそうに見える。
男子が叩いたせいで奥の方から何かの液体が出てきたとしか思えない。
「何?」
「何か出てきてる」
「これが固まったらツンボになっちゃうよ」
と周りの子たちが囁き合う。
誰かが担任の山本先生を呼んできた。山本先生は中年の男の教師だ。先生は女の子の耳をしばらく見て、「ああ、大丈夫だから」とはっきりと言った。
驚いた。耳から液体が出てくるなんて大変なことだと思っていたのに、先生が全く慌てなかったからである。みんな少し緊張が解けたようになって女の子から目を離したらしい。少しして誰か女子が「なくなってる」と言った。
みんながまた女の子の耳を覗き込むと、さつきの液体は消えていて普通の耳の穴に戻っていた。また奥へ吸い込まれたのだろうか。
この話はこれで終わりである。
おれがいちばん不思議というか不気味なのは、先生が「大丈夫」と言ったことだ。普通なら保健室に連れて行ったり大騒ぎになるところではないだろうか。
それとも、子供たちが知らなかっただけで、あの深緑色の液体は一般に知られている大したことのない現象だったのだろうか。
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ここまでが過去ブログからの再掲載である。
実はこの出来事を、ある文庫本に投稿したことがある。ブログよりもさらにずっと前のことだが、どこかの文庫編集部が「実際に体験した不思議な話」を募集していたわけだ。要は、素人の体験談を集めて一冊作ろうという企画でしょう。
上記の深緑色の液体の話を送ってみたが、何の連絡もないのでつまりは「没」だった。やがてその本が発売されたので立ち読みしてみたら、岡田恵美子の投稿が採用され掲載されているではないか。岡田恵美子はアニメ評論家としては大ベテランのおばさんで、おれの『海がきこえる絵コンテ集』の月報に文章を書いてくれている人でもある。
この偶然もまた不思議なことでございました。
