営業の資質と才能 | 営業の魔法 中村信仁と永業塾の仲間たち

営業の資質と才能

広辞苑によると、【資質】は生まれつきの性質や才能。そして【才能】は訓練によって得られた能力、とこのように定義されている。つまり、どう考えるかが「資質」であり、どう行動するかが「才能」です。

 

昔、こう考えた人がいました。

「自分はきっと一流の営業パーソンになれる」

なんの根拠もなく、なんの裏付けもなく、このように考えられることこそ営業の資質です。

その人物は世界のホンダを築いた本田技研の創業者本田宗一郎。

 

本田宗一郎は、浜松の町工場時代に十数人の社員を前にしてミカン箱の上に立ち「ホンダは世界一のホンダになる」と演説しました。

 

そして、昭和27年(創業から6年)、ホンダは600万円の資本金しかない中で「日本の工作機械ではいいものが作れない」といって、当時の日本円で4億5千万円もする機械を、回りの大反対を押し切って輸入しました。

この投資に失敗すればホンダは倒産です。

しかし、大成功をおさめるのです。

反対を押し切れた自信となる根拠は何だったのか。

それは本田宗一郎の生きることへの資質と才能に他ならなかったのです。

(営業の意味 HS刊より)

 

どう考えるのか……。

これが営業の資質のひとつです。

どう動くか……。

これは才能です。

 

昔、靴の営業パーソンがアフリカへセールスミッションを持って飛びました。数日間、その担当者は市場をリサーチし、日本へ報告の電話をかけます。

「部長、ここはダメです。全員ハダシで、誰も靴なんか履いちゃいません」

「そうか、大きなマーケットだと思ったんだが……」

「とりあえず、もう2~3日調査してから日本へ戻ります」

結局、この会社はアフリカへの進出をあきらめました。

 

ときを同じくして別の会社の営業パーソンも、その地においてリサーチをしていました。

数日間の調査を終え、彼も東京へ報告の電話を入れます。

「最高の市場です。ここでは誰も靴を履いていません。裸足という文化なのです。考え方次第では全員がお客様となる可能性を秘めています」

そしてこう続けた、

「靴の素晴らしさと安全性を僕はみんなに説いて廻ります」

ふたりの営業パーソンは、同じ時に同じ場所に立っていました。

そして同じ景色を見ていました。

しかし、根本的な考え方(資質)が違っていました。

ひとりはダメだと感じ、もうひとりはいけると感じた。

この考え方(資質)の違いの原点はなんでしょう。(営業の魔法 ビーコミュニケーションズ刊より)

 

それは、資質を才能へ変化させる過程で経験した様々な事象をどのように記憶したかということの違いです。

困難に出会ったとき、もう駄目だ、自分には無理だ、と記憶にインプットしていくのか、オッ面白いぞ、やりがいがありそうだ、という記憶にインプットするかの違いです。

 

成果をあげている営業パーソンは、常に、嬉しいことも困難なことも「楽しもう」という習慣ができています。このように「楽しもう」というのは資質ではなく才能です。訓練によってポジティブに行動できるように習慣化したんです。

 

誰もが売れる営業パーソンでありたいと願います。しかし、誰もがそうはなりません。

その理由は、せっかくの資質を才能に変える前向きな努力を怠っているだけです。

 

資質が才能に開花する瞬間は営業活動において辛いときやしんどいときなんです。

でも、ほとんどの人がそのタイミングのときグチったり他人のせいにして逃げてしまいます。営業というものはダメなときこそ運が溜まるものなんです。