映画「平場の月」初日舞台挨拶へ。

※ネタバレあります。





https://natalie.mu/eiga/news/648149


【あらすじ】

妻と別れ、地元に戻った青砥健将は、印刷会社に再就職し平穏な毎日を送っていた。そんな青砥が中学生時代に思いを寄せていた須藤葉子は、夫と死別し、現在はパートで生計を立てている。ともに独り身となり、さまざまな人生経験を積んできた2人は意気投合し、中学生以来の空白の時間を静かに埋めていく。再び自然にひかれ合うようになった2人は、やがて互いの未来についても話すようになるのだが……。



原作は朝倉かすみの同名小説。

後から気づいたのだけど、私のとても近くに原作者の方がいらっしゃり、一緒に見ていました。



主人公の青砥は堺雅人さん、相手役の須藤は井川遥さん。

まあ…さ、35年ぶりに再会した初恋の君が井川遥だったら、そらテンションあがるわな。

そして、青砥の元妻は吉瀬美智子さん。


おい。

どんな人生だよ真顔

私が35年ぶりに前に現れても、相手は「げ、なんだこのデブおばさんは」って思って音信不通になるでしょうね。そこからまた素敵な大人の恋なんて、絶対始まらない。そんな自信があります。

きっと相手にされないで終わる。









最近は色々と心も乾いてきていて、歳をとると涙腺が脆くなるとも言いますけれど、私は逆。

そうそう泣くこともないかと思って挑みました。

結果的に、泣きました真顔

堺雅人さん、さすがですよ…

話の展開は、先が読めます。

『こうなるだろうな』と思う通りに進んでいきます。 

なのに、泣いた。



人の心を踏み躙ったり、踏み躙られたり、狡くも愚かでもある時間を経て、50歳の男女が中学ぶりに再会して、また惹かれあっていく。


「私は青砥が『一緒にいたい』と思うような奴じゃないんだよ」


「俺がお前と一緒に生きていきたいんだよ」



素直になれない須藤と、真っ直ぐに思いを伝える青砥。

それは中学時代の想いの大きさにも比例しているようで。






家庭が崩壊して自分が強くならなければと、どんどん"太く"なっていく須藤。

ああ…この須藤の気持ちがよくわかる。

家庭がうまくいってないと、子供だけど自分が強くならなきゃと"太く"なってしまうんですよね…



仕事、結婚、離婚、子育て、介護。

キラキラしてるわけでもない【平場】の2人。

疲れ果てた2人が再会して、夢見ていた頃の自分を思い出す。




「おまえ、あのとき、何考えてたの?」

「夢みたいな事だよ」



現実を生きているリアルな2人。

青砥は自転車に乗っているし、須藤は売店のパートをしている。




いつも2人で飲んでいる居酒屋がいっぱいで他を探すも、他もいっぱいで困り果てる。



「家に来ない?私さ、お金がないんだ。」


どうこうしたいとかじゃない。

ただ青砥といろんなことを喋りたい。

その場所はどこでも構わない。

そんな須藤の心情が見える。

その気持ちもとてもわかる。

お金がもったいない、というのも。 

でも、青砥は少しガッカリする。


同級生の面々もみんないい味出してて好き。

特に安藤玉恵さん演じる同級生。

本当に「いるいる!こういう奴!」って言いたくなるような、ズケズケ人のプライベートにつけこんでくる奴。安藤さんの好演が見事でした。

大森南朋さん、宇野祥平さん、吉岡睦雄さんの3人組も良かった。男友達って、なんか大人になっても感じ良くいられて羨ましい。

居酒屋の塩見三省さんや、同僚のでんでんさんも良かったです。

もう、みんな良かった。




「青砥とはもう一生会わない。」

「来年の誕生日、一緒に温泉旅行行く約束したよな?それは守れ。熱海…」

「熱海か。行ったことない。」



1年後の青砥は温泉旅行の準備を進めていた。

カレンダーにその日を赤丸つけて。

1年間、須藤に送り続けたSNSに返信はない。

でも温泉旅行は約束だから行くはずだ。

"太い"須藤は絶対に約束を破らないはず。

それだけを信じて毎日を過ごす。

そして…現実を知る。


須藤のアパートに行った青砥。

須藤のカレンダーにも同じ日付に赤丸がついていた。


その日1日、ずっと驚いた表情の青砥が、最後の最後にいつもの居酒屋のカウンターに座り、ふと隣席に目をやる。

空の隣にふと気づく。

全てを悟ったような表情になる青砥。



ここで泣きました。はい。

堺さん、お見事でした。

完敗です。


もしかしたら青砥にイライラするかも。

鈍感だって。

でも、実際こんなもんですよね。

言葉にしないと伝わらないもんなんですよ。

きっとすれ違いってそこから起こる。

ニュアンスを感じ取って欲しいと思うけど、それはなかなか相手には伝わらないものです。

青砥はきっと後悔もしたと思う。

でもそれもまた、人生。


「一緒にいてくれる人がいるのは 当たり前じゃない」


でんでんさんの台詞にグッとくるものがありました。









主題歌は星野源。


いやぁ…私、あまりに源くんが売れすぎて、少し離れておりました。

私が源くんの曲で好きな曲は、「くだらないの中に」や「化物」「地獄でなぜ悪い」あたり。

もちろん「SUN」や「恋」も好きなんだけど、先に述べた曲の方が、私には合っていて好き。


で、売れてからは、まあ…うん。

ちょっと源くんから離れようかなと。

でも、今回の曲はバシーン!とハマりました。


歌詞はこちら。


夢見ていたあの頃の未来を実現させるのは難しい。

それにしてはあまりにも苦々しい人生を歩んできた。

夢みたいな未来を約束するのは躊躇してしまう。

それでも夢見てしまう「呪い」。

甘くてキラキラした「呪い」を、人生の最後にかけ合う。

きっと人は死ぬまで、夢見て生きていかなければいけないのだと思う。






さて、舞台挨拶の話です。

全員スタンディング拍手でキャストを迎えた舞台挨拶。

ここまで、完成披露や様々なイベントを経てきた監督とキャストですが、鑑賞後の舞台挨拶は初めて。

言えないことも多かったし、何よりお客さんの反応が気になったそう。

でもなにより温かい拍手で迎えられたことを、みなさん安堵されたようです。


堺さんの挨拶で感じたことは、やはり頭いい人なんだなあ…ということ。

主題歌について

「『いきどまり』って副詞と副詞なんですけど…」

いやいや。なんですか、その分析。


気になった登場人物は?という質問に対しては

「マニアックなんですけど、お坊さん!テストと本番でお経変えてきたんですよ!」

いや、お経変えたの気づいたのがもうすごい。

しかもそれを聞きに行って、中身まで把握して

「映画にぴったりのお経なんですよ!!」

って目をキラキラさせてて、なんだこの人は?って思いました。(褒めてます)

やっぱり、堺雅人好きだなあーと思いました。








好き嫌いが分かれるかもしれませんが、なかなか同年代には響くものがあるのではないかと思います。