東北の祭り
■東北の祭り「こんな時こそ盛り上げたい」各地で開催の動き
東日本大震災で大きな被害が出た東北地方で、地域の伝統的な祭りの開催を探る動きが出ている。関係者らは「こんな時だからこそ、盛り上げたい」と意気込みを見せている。「サッコラチョイワヤッセ」という独特のかけ声と踊りで知られる「盛岡さんさ踊り」。盛岡市の谷藤裕明市長は「復興に向け、元気に頑張っているところを発信していきたい」と語り、パレードなどは縮小するが、例年通り8月1~4日の開催が決まった。谷藤市長は「祭りは東北の核。盛り上げていかないと、復興につながらない」と強調。実行委では被災住民の祭りへの招待、踊りのキャラバン隊を結成して市外の避難所に派遣する-などの検討も始めた。実行委事務局の盛岡商工会議所は「各地に少しでも元気を届けたい」としている。盛岡市と滝沢村で6月11日に予定される伝統の「チャグチャグ馬コ(うまっこ)」も開催予定だ。岩手県内では、平泉町で開催される奥州藤原氏にちなんだ「春の藤原まつり」(5月1~5日)でも、練習ができなかったことなどで大半の行事が中止となるなか、中尊寺が行う神事の能楽「古実式三番」は実施する。宮城県では、東北三大祭りのひとつとして有名な「仙台七夕まつり」(8月6~8日)も開催に向け、準備を進めている。仙台七夕まつり協賛会の鎌田宏会長は「豪華絢爛(けんらん)とはいかないかもしれないが、復興と鎮魂の意味を持たせた祭りにしたい」と意欲的だ。青森市の「青森ねぶた祭」(8月2~7日)も開催予定。青森市の鹿内博市長は「東北の元気を発信していく」と話している。秋田市の「秋田竿燈まつり」(8月3~6日)も予定通り実施される。だが、被害があまりに大きく、開催が難しいケースもある。原発事故で避難指示などの区域となっている福島県南相馬市と周辺自治体は、約500騎の騎馬武者が繰り広げる荒々しい神事で知られる「相馬野馬追(のまおい)」の開催に頭を悩ましている。7月23~25日に予定されていたが、市の担当者は「原発の状況が変わらない限り、少なくとも従来通りのやり方では開催しようがない」と話す。多くの住民が市外に避難している上、死者・行方不明者も約1500人に上っており、祭りで「騎馬武者」を演じる住民を確保するどころではない。担当者は「難しい判断になる」と苦悩している。
■仙台七夕まつり協賛会は東北の三大祭りでもある一大イベントを途絶えさせないことで、東日本大震災で大きな被害を受けた仙台市民や東北の人々を元気づけたいとして8月6日(土)~8日(月)の日程で「仙台七夕まつり」の開催を目指すことを発表。被災者にも節電にも配慮するため豪華絢爛とはいかないかもしれないが、復興と鎮魂の意味を持たせた七夕まつりを目指し、東北各県の祭りとも連携しながら、復興を目指す東北の姿勢を全国に訴えたいとのこと。
■竿燈まつりへ被災者招こう/秋田の有志ら費用捻出へ募金
東北三大祭りの一つ、秋田市の「竿燈まつり」(8月3~6日)に東日本大震災の被災者を招待するための費用を集めようと、秋田市竿燈会は4日、JR秋田駅前などで募金活動を始めた。会のメンバー35人が太鼓と笛の音色に合わせて技を披露し、買い物客らに募金を呼び掛けた。竿燈会の藤田勝会長は「今も避難所で暮らす被災者がいる。竿燈まつりを楽しんでもらうために寄付をお願いしたい」と話した。募金した女性(35)は「まつりを見て被災者が元気になるお手伝いができれば」と語った。竿燈まつりには宮古、釜石、多賀城の3市と秋田県内に避難している被災者計1600人を招待する予定で、バスのチャーター代や宿泊代などに約3300万円かかる。秋田市が約2700万円を負担し、残り約600万円を募金や企業の協賛金で賄う。募金活動は今月の毎週土、日曜(12日は除く)の午後0時半~1時半まで、秋田駅前のアゴラ広場で行われる。
■東北の夏祭り仙台に集結へ
東日本大震災のあと大幅に減っている観光客を呼び戻そうと、東北6県の代表的な夏祭りが一堂に集まるイベントが、ことし7月、仙台市で開かれることになりました。東北地方を訪れる観光客は、東日本大震災の影響や東京電力福島第一原子力発電所の事故による風評などで、大幅に落ち込んでいます。このため、仙台市は、夏祭りのシーズンに向けて観光客を呼び込もうと、青森市など5つの市と合同で、東北6県の祭りが集まる大規模なイベントをことし7月に仙台市で開くことを決めました。会場では、仙台七夕まつりや、青森ねぶた祭、秋田竿燈まつり、それに山形花笠まつりなど、東北の代表的な6つの祭りの実演を見ることができるということです。イベントはことし7月16日と17日の2日間、仙台市青葉区の勾当台公園で開かれます。仙台市では2日間で数万人の人出を見込んでいて、「復興に前向きに取り組む姿を東北地方が一丸となって全国にアピールしたい」としています。
■8万羽の鶴折って願いかなえたい/仙台の子どもたち挑戦
仙台市の全ての国公立小中学校に通う約8万人が27日から、東北三大祭りの一つ「仙台七夕まつり」の飾り作りを始めた。東日本大震災からの復興を願い、1人1羽ずつ折り鶴を作り、8万羽を全長4.5メートルほどの吹き流しにする。教職員や保護者も加わり、7月下旬までに十数本の吹き流しを作る。地元百貨店の藤崎も協力し、8月6~8日の祭りでは、人通りが多い市中心部の藤崎本店前アーケードを彩る。避難所にもなった同市宮城野区の岩切中では27日午前、3年生の約140人が竹の繊維を混ぜ入れた白っぽい専用紙に願いを書き込み、丁寧に折った。山内優希さん(14)は震災で自宅に住めなくなり、6キロ離れた父の社宅に家族7人で避難中だ。「私たち被災者が前向きに歩いていけるよう、きれいな吹き流しを作りたい。観光客にも仙台はこんなに元気なんだぞってことを知ってもらいたい」
■復興の願い込めた折り鶴を仙台へ/博多まち協が復興支援プロジェクト
博多まちづくり推進協議会は現在、東日本大震災復興支援の一環で「七夕折り鶴プロジェクト」を展開している。博多川端商店街では2004年より、「仙台七夕まつり」の七夕飾りの吹き流しを譲り受け、7月下旬に同商店街で開催する「納涼フェスタ」で飾っていることから、「今度は福岡・博多から仙台に活気を届けよう」と始まったもの。復興の願いを込めて折った折り鶴1万羽で吹き流しを製作。仙台に送り届け、仙台七夕まつりで飾ってもらう。7月9日にはJR博多シティ、10日にはキャナルシティ博多で折り鶴製作のワークショップを実施。折り鶴に加え、寄せ書きも集める。市内小中学校にも呼び掛けており、同15日までに1万羽を目指す。7月24日より開催する川端商店街の納涼フェスタで完成作品を披露した後、仙台へ送付。8月6日~8日の仙台七夕まつりで飾られる。
■七夕まつり復興願う/8月、姶良の竹を仙台へ
鹿児島県姶良市に産する国内最大級の太さを誇るモウソウ竹と七夕飾りが、仙台市で8月6~8日に開かれる「仙台七夕まつり」に“出品”される。東日本大震災被災地の復興に希望の光を届けようと有志らで企画、「『姶良の心を東北へ』届ける実行委員会」を立ち上げた。7月6日は、姶良市山田小学校で、5、6年生が現地に届ける七夕飾り用の短冊に「大きく前へ前へ日本みんなで-」「東北のみなさんがんばって-」などと思いのこもったメッセージを書き、折り鶴を作った。6年の生永詩音さん(12)は「大震災で家や家族を失った人がたくさんいるので、一日も早い復興を願って書いた。思いを届けられる良い機会、頑張ってほしい」と話した。同実行委員会は七夕飾りの短冊3000枚と万羽鶴を市民から集め、直径50センチ超、長さ20メートル超の竹と一緒に、8月初めに仙台市に送る。姶良市の夏祭りでも七夕飾りを披露する。なお、一般向けにも一口500円で短冊を書いてもらい、経費を除いて復興支援金に充てるとのことです。
■復興と鎮魂、願い込め七夕飾り作り/仙台
仙台市の「仙台七夕まつり」(8月6~8日)を彩る七夕飾りの製作が急ピッチで進められている。今年の祭りのテーマである「復興と鎮魂」の思いを込め、連日作業が続く。利府町の「鳴海屋紙商事」の作業場では、3月から作業を始める予定だったが、震災の影響で5月下旬から開始。パートの女性たちが、故人の霊を慰める意味合いもあるという「くす玉」を丁寧に仕上げていた。いとこが行方不明の松野美也子さん(71)は「今年は、みんながそれぞれの願いを込める特別な七夕になると思います。大勢の人たちに来てほしい」と話した。
■被災地の夏祭りの季節を前に、和服愛好家らが6月19日、岩手県大船渡市の避難所「リアスホール」で、被災者に浴衣や帯などを配った。浴衣は全国から善意で寄せられた約450着、げたや帯、巾着袋などもそろい、被災者らは好みの浴衣を探していた。祭りは浴衣姿でゆったり過ごしてと、愛好家らが企画、宮原伶奈(れな)さん(9)は津波で失った浴衣によく似たピンク色の一着を手に入れ、これで家族と一緒にお祭りに行けたらいいなと話した。
■復興願い機体に描く七夕/ANA
東日本大震災の被災者を元気づけようと、全日空は七夕の7日、関西に避難している被災者を大阪(伊丹)空港に招待し、笹と短冊のペイントを施した小型旅客機の機体に願い事を直接書き込んでもらうイベントを開いた。同社の大阪空港支店が企画。大阪や兵庫に避難してきた被災者ら14組37人が参加して、旅客機の格納庫敷地内で行われた。参加者は「被災地が元どおりになりますように」「以前の平和な日常に戻りたい」などと短冊につづった。旅客機は新潟-大阪線などで運航される。
■「祇園祭」が仙台七夕祭りに参加へ
京都・祇園祭の各山鉾町でつくる祇園祭山鉾連合会(吉田孝次郎理事長)と京都市は15日、東日本大震災被災地の仙台市で8月6~8日に行われる「仙台七夕まつり」に約40人の町衆を派遣し、長刀鉾の日和神楽(お囃子)と綾傘鉾の駒形提灯や傘を披露すると発表した。連合会として府外に出向くのは異例という。祇園祭は、平安時代の貞観11(869)年に東北地方で起きた「貞観地震」などの悪疫を鎮めるために行われた「祇園御霊会」が起源とされることもあり、京都らしい方法で被災者を元気づけようと企画した。日和神楽は、屋台を組んで「コンチキチン」で知られる笛、太鼓、鉦からなる祇園囃子を奏でながら練り歩く行事。長刀鉾は山鉾巡行の先頭を行くことで知られる。また祭りの雰囲気を伝えるものとして、綾傘鉾の傘(高さ約3メートル、直径約2・8メートル)や駒形提灯を披露する。吉田理事長は「『コンチキチン』は鎮魂の曲。喜んでもらえるのではないか」と話している。






