魚影(4)
■宮嶋康彦 1951年長崎生まれ。1975年フリーランスのカメラマンとして活動を始める。1981年東京から標高1500メートルの奥日光に移住。1985年プレイボーイ・ドキュメントファイル大賞受賞。1986年、まる五年暮らした奥日光を引き払い再び東京の生活に戻る。以降、一貫して写真の富と言葉の富を融合させて新しい富を築こうと活動を続けている。テーマは人を含めた自然。特に人と自然が出合う接点(山河海浜、都市)がフィールド。
●魚影
奥日光まで、渋滞を覚悟でやってくる車の列。
それは車であって、人ではない。
湯元にひっそり暮らしたトキコさんのことを、
誰も知らないから・・・。
彼女の苦悩と喜び、孤独と諦観を知る人は、
たぶん、この世にはいない。
水面を横切る魚影の、
魚の名前を知ったところで、どうだというのか。
路傍の石となったトキコさんには伝えようがない。
●「たい焼の魚拓」 手製の私家本。本文はもとより、表紙、綴じ紐など、すべて和紙で制作。2004年、王子の紙の博物館で行われた『和紙でルリユール展』に出品。
●「たい焼の魚拓」 北海道から九州まで、絶滅寸前の天然物たい焼37種、一匹ずつ丁寧に焼かれる天然たい焼、今や絶滅寸前のため、魚拓に採って緊急発売。
●『誰も行かない日本一の風景-水景色』撮りおろしオリジナル版。日本各地の水辺の景色を写真とエッセイで紹介。詳細な地図や撮影ポイント、データを併載。
●「水母音sui-bo-in」 モノクローム写真と短編小説連作。血縁の神秘への憧憬がモチーフになった。毎日新聞夕刊に、週一度、十六カ月にわたって連載(写真と短編小説)した同名の作品集。
●「紀の漁師 黒潮に鰹を追う」プレイボーイ・ドキュメント・ファイル大賞受賞作。三重県安乗港を母港とする夫婦漁師、「収漁丸」の物語。一年のうちおよそ三百日を漁場で暮らす夫婦。浦々を転戦するあいだに、三人の娘は成長する。夫婦漁師の視線からながめた、漁業国日本の姿。四季折々の悲喜こもごも。二年にわたるルポルタージュ。
■倉阪鬼一郎1960年三重県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒、同大学院日本文学専攻中退。在学中に幻想文学会に参加、季刊「幻想文学」に書評などを執筆。本邦で唯一「怪奇小説家」を名乗り、俳句と翻訳も手がける。著書に短編集「怪奇十三夜」「地底の鰐、天上の蛇」(いずれも幻想文学出版局刊)、句集「怪奇館」など、訳書にストリブリング「カリブ諸島の手がかり」、ウエイクフィールド「赤い館(共訳)」(いずれも国書刊行会刊)などがある。
●「妖かし語り」 怖さの形を異にする八つの怪異がいつしか一本の流れとなって背筋も凍る恐怖と化す。本格恐怖小説の第一人者の書き下ろし長編ホラー。『顔』『鈴木伝兵衛』『魚影』『眼』『紅豆腐』『剃刀』『ラストショット』『妖かし』にプラスαをつけた連作短編集的長編。
●「魚影」
志摩半島の小漁村に伝わる奇習の背後に潜む恐るべき真相が描かれるクトゥルフ神話ものです。主人公に加えられる拷問(?)が、なんとも痛いです。また「愛の技巧」という「愛称」を持つ作家が出てきたり、舞台が「I村」というところは、クトゥルフ神話ファンを喜ばせてくれます。






