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この本の主役であるコミーの社長、小宮山さんとは、
ある社会的な活動の中で知り合った。
人の話をじっくりと聞く、
人間的にも素晴らしい方だと思っていたが、
この本を読んで、よりその思いを強くした。
やはり人間性は企業経営にも表れる。
たとえば、「無料破損保証制度」
に象徴されるユーザー視点。
近江商人の「三方よし」を思い出す。
古くから日本の商人は「信用」を第一に考え、
その「信用」を守る方法や心構えを
伝えるためのものが「家訓」であった。
小宮山さんはここで言う「家訓」のようなものを、
社員のみんなと共有することを
非常に大切にしているように思う。
また「考える」ことを大切にする環境、
「新人の意見が簡単に採用される」環境というのは、
今回の震災で露呈した「官僚制の弊害」とは
全く逆の仕組みが働いていると言えよう。
あと印象的だったのは
「物語をつくる会社」という言葉である。
「この世界にあるすべてのものには、
それぞれ物語が存在します。
今、ここにおいしいリンゴがあるとすれば、
その陰には壮大な物語があるはずです。」
この一見当たり前に思えることが、
見落とされているのが現代だとも言えよう。
その土地とともに生きる共同体が失われ、
現在につながる「過去」の物語が
語られなくなった結果、
僕たちは「未来への想像力」をも
失いつつあるのかもしれない。
「昔、ダメ人間であった」という
小宮山さんの人生そのものが、
この本を読む多くの人に希望を与えるだろう。
以下、引用メモ。
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コミーのカタログやホームページには、こう明記している。
「万が一、お客様のミスで
破損した場合でも無料交換しています。
例えば10年前に購入したもので、
移設するときに落として
割れてしまったような場合など…」(p38)
作り手同士がいくら話したって、駄目です。
気を付けているつもりでも、
作り手側の理屈に終始してしまう。
それが経営における諸悪の根源なんですよね(p46)
売れない理由をあれこれ考えるより、
その1人がなぜ買ってくれたのかを
深く聞くほうが次につながるはずです。
われわれの立場から見れば1つしか売れなくても、
お客様の立場からすれば
「購入の決断」をしたのですから(p58)
他社が競争に使うエネルギーを、
コミーは創造に向ける。
これが会社員生活で自分を
生かせなかった私が選んだ道です(p66)
「なぜ?」という言葉ほど、
日常の中に隠れている問題を顕在化し、
真因を見つけ出すのに便利な言葉はありません(p98)
掃除ができるということは、
心に余裕があることです。
余裕とは、周囲の気持ちを考える
心の余地を持っているということ。(p156)
でもこれからは、「Tokyo」ブランドを使わずに、
地元の「川口市のKomyブランド」を
どうつくっていくか、考えていきます。
(中略)地元の経営者をはじめ
いろいろな人が集まって川口の歴史や特徴を研究し、
ブランドづくりに生かしていく。
それが世界市場で生きるコミーのブランド力にも
かかわる課題の1つだと思っています。(p163)
1、SS(整理整頓)時間を最優先
工場の掃除のほか、仕事の整理も含みます。
直接の生産性はないように思うかもしれませんが、
このSS時間こそ優先すべきです。(p170)
5、一点突破全面展開
小さな1つのことをまず完成させる。
突破口が開けたら、それに関連する仕事へと
全面的に広げていく。このイメージを
意識しながら仕事をしましょう。(p171)
すごいと思いました。
新人の意見が簡単に採用されるのですから。(p184)
この世界にあるすべてのものには、
それぞれ物語が存在します。
今、ここにおいしいリンゴがあるとすれば、
その陰には壮大な物語があるはずです。(p198)
万物が流転するこの世界にゴールはなく、
あるのはプロセスだけ。(p199)
昔、ダメ人間であった私にとっては、
現在はちょっとありがたすぎる。
理由を考えると、ある時に目覚めたような気がする。
利口なふりをするよりも、「この点が非常に弱い」
と本当のことを言い、自分としての努力もするが
「頼む」と人にお願いし、それに応じてくれた
人々に恵まれたことであると思う。(p204)
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