まさにグッドタイミングともいえるこの番組に見入りました。国会の憲法改正論議で争点になってる「緊急事態条項」は、自民党が東日本大震災を教訓に盛り込んだと記憶するが、草案では首相が「緊急事態」を宣言すれば、法律と同じ効力を持つ政令を定め、国会の承認は事後承諾でもよいということになっています。しかしこれには、権力の集中や内閣に独裁権を与えるものだとして否定的な意見もあります。

 

自民党 憲法改正草案のポイント

有事や大災害の時には、緊急事態の宣言を発することができることとし、その場合には、内閣総理大臣が法律に基づいて一定の権限を行使できるようにするとともに、国等の指示に対する国民の遵守義務を規定しました。

 

ドイツ・ワイマール共和国は、1世紀前に誕生した当時最先端の民主主義国家でした。それは帝国主義が謳歌していたヨーロッパにおいて、初めて国家が国民に対し基本的な人権を付与した点にあります。これは、フランスのように民衆が勝ち取ったということではありませんでしたが、これを下敷きにして学者ら憲法草案を起こしました。

 

男女平等の普通選挙、1日8時間労働制など理想とされる近代国家がこのワイマール憲法によって誕生しましたが、当時の経済は不安定で、いわゆる金融政策や財政政策といった現在当たり前にあるような経済をコントロールする考えは当時なく、市場に任されることが最良とされました。そのため、世界恐慌に陥り、これがきっかけとなってワイマール共和国は崩壊します。

 

もう一点、この番組で注目したのはこのワイマール憲法の第48条大統領の緊急令です。これは、公共の安全・秩序を回復させるため国民の基本的人権を制限できるという条項で、緊急事態条項といわれるものです。

 

初めての人民のための憲法でしたが例外が設けられたことになります。のちにヒトラーは、この緊急事態条項を盾に、国家の秩序を維持するためと弄して国家の全権を掌握します。それが第2次世界大戦の悲劇を産んだことは言うまでもないでしょう。

 

この民主的で理想的なワイマール憲法の反省点は、戦後の日本国憲法に生かされていると感じています。つまり第13条の個人の尊厳、幸福追求権が「公共の福祉」によって制限されている点です。

 

多くの人から意見や苦情が相次いだ都知事選の掲示板。政治腐敗が根底にある。

 

つまり、人権の制限を権力者に与えるのか福祉に供するのかという点です。一例をいうと、今月行われた東京都知事選挙。ポスター掲示板にいかがわしいものを張り付けたことで問題になりました。このことについて、「表現の自由」を盾に言い張った候補者もいましたが、まさに、この13条の「公共の福祉」の条項を当てはめるべきでしょう。

 

※憲法 第13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。