オッス、オラ、無職。社長なのに無職ってのも変かもしんねぇけど、コロナのおかげでなんも仕事できねぇからなぁ。みんなに迷惑かけてるコロナのやつらを全部元気玉でふとっばしてやりてぇとこだけど、外出るなって言われてるから元気玉も作れねぇし…オラ、早く授業してぇぞ。

次回「マンモスコーチ、暇すぎて壊れる!」んじゃ、いっちょ派手に壊れてみっか!

ってこれじゃもう終わっちゃうじゃん!?今、書き始めたばっかだから!と相変わらず一人で虚しくボケツッコミしている禁断症状中のマンモスコーチです。皆さん、こんにちは。


さて、ボケて多少のストレス解消をしたところで、ここからは真面目に「選手向け一人練習(3)体編」に行きたいと思います。まず、人間の体というのは非常に出力が不安定なもので、場面や状況次第で本来の実力が出し切れなかった、なんてことがよく起こります。

仮に能力が100のAさんと80のBさんが競ったら、Aさんが勝ちます。でもそれは能力を100%出せたらの話で、Aさんが70%しか力を出せず、Bさんが100%を出せたら、70対80でBさんが勝つことになります。お互いに100%を出し切って負けたのであれば仕方ないと諦めもつくでしょうが、本来の実力を出し切れないで負けたとなればきっと悔いが残るでしょう。

今回紹介するのは、なるべくそういうことにならないよう、少しでも100%に近い実力を発揮するための体の使い方(あり方)になります。

前回、「特定の動作が上手くいかないのはその前段階に問題があることが多い」ということを書きました。そしてすべての動作の最初は「構え」になります。100mのクラウチング姿勢、バットを振る直前、ゴルフのテイクバック前、レシーブの用意をしているとき、どんなスポーツでもまず「構え」ます。そこで力んで体が固くなっていたら出だしは遅れ、力んでいるがゆえに正確な体重移動や身体操作ができず可動範囲も狭くなって、ミスに繋がります。

ミスというのは「本来ならできることができなかった」からミスなのであり、もともとできないことができなくても、それはミスとは言いません。では、本来ならできることをができなくなる確率を少しでも減らすにはどう構えたらいいか?

ポイントは「ミスをするときは無駄に力んでいる」です。力むからミスをする。ならば力まなければいい。よく「リラックス!リラックス!」とか「固いよ!体の力を抜いて!」と言いますが、それは正しいです。問題は「どこの力を、どうやって抜けばいいのか」です。

答えは「首と肩」です。悪い緊張状態が続くと「首や肩がこる」ことになりますが、これは緊張しているから首や肩に力が入った結果とも言えますが、逆に首や肩に力が入っているから緊張しているとも言えます。そしてそれによって本来のポテンシャルを発揮できなくなる。

首と肩というのは、脳に送られる全身の刺激情報(求心性神経)、脳から送る全身への指令情報(遠心性神経)、それらが必ず通る通り道、いわば関所です。その関所が細くてなかなか通れなかったら困りものです。交通渋滞が起こります。首や肩に力が入るというのはこの状態で、脳と全身を行き来して情報を伝える神経や血管が圧迫され、脳の判断や各部位の反応が遅くなる、とイメージしてください。

実際には、首と肩に力が入ると全身筋肉が連動して硬直します。おそらくこれは人間の動物的防御反応で、全身を固めることで外部からのダメージを軽減しようとしているのでしょう。避けてダメージゼロにした方がいいと思うのですが、神様もいい加減な設計をしたものです。まぁ、理由や理屈はどうあれ、首と肩に力が入ると全身も力んで反応速度も動作の正確性も落ちる、というわけです。


では、首と肩をどうすればいいか。いきなりクラウチングスタートの姿勢や球技の守備姿勢(前傾の中腰)の状態で首と肩の力を抜くのは難しいです。一番力を抜きやすい直立姿勢=立つ、歩くの状態で力を抜く練習から始めます。

まず、ヒモとフックに引っかけられて頭のてっぺんが上に引っ張られるような状態を意識します。頭のてっぺんにヒモが付いたてるてる坊主状態です。頭から下はブラ~ンブラ~ン。頭が上に引っ張られているので首が自然と真上に軽く伸びます。

 イメージ図


次に、肩を軽く落とします。力を入れず、フッと力を抜いた状態です。ただし、普通に力を抜くだけだと背中が丸まり、先ほどやった首の伸びが悪くなるので、頭のてっぺんと肩の距離が通常より遠くなるようにして首の伸びを維持してください。

※左が肩の力が抜けている状態、右は気をつけ姿勢で肩に力が入った状態。

 頭の位置は変わらないが(青線)、肩の位置が僅かに変わっている(赤線)

※ただ力を抜くだけだとこうなるのでダメ。これはただ気が抜けてるだけ。


立っているときは、横から見たときに耳のすぐ下のくぼみが肩の位置に来るようにします。頸椎(首の骨)と頭蓋骨の接点が耳下のくぼみ部分になるので、これが本来の「自然な位置」となります。首の筋肉で頭と首を固定するのではなく、頸椎でバランスをとって頭蓋骨を支えるイメージでその位置にもってきてください。
 

※頸椎及びその頭蓋骨との接点は意外と後ろにあります。

※首と頭蓋を固めるのではなく、頸椎の上に頭蓋を乗せてバランスを取るイメージ

歩いているときは耳が前に来てしまいますが、首を前に曲げるのではなく、肩から背中が前傾になった結果として耳が前に来るようにします。

※わかりにくいですが歩いているのでやや前傾になっています。

 左は直立時とほぼ変わりませんが、右は首が前に出ることで位置がズレています。

普段立っているときや歩いているときに、この姿勢を意識してやってみてください。なお、呼吸が浅くなっても首や肩に力が入るので、呼吸は「吸う:吐く」を1:3くらいの時間でゆっくり吐くことを意識するといいでしょう。吸うときは肩が上がり、吐くときは肩が下がるものなので。

ついでに、一つ裏技的なものを。手で何かを握るとき、親指や人差し指で握ると肩が力みやすく、薬指と小指で握るようにすると力みにくくなります。刀を握るときがまさにこの小指握りなのですが、たとえばウォーキングをするときに指を全部握るのではなく、小指から軽く握り込むようにすると腕をスムーズに振りやすくなります。

※左が小指から軽く握って親指と人差し指は抜いた状態。右は普通の握り状態。

また、電車でつり革を握るときも(今はコロナのせいでなるべく触りたくないですが)親指や人差し指で握るのではなく、小指と薬指で握るようにすると多少疲れや肩こりを軽減できるかと思います。

※左が小指から握った状態。右は普通の握り。

 

こんな感じで、まずは「立つ/歩く」で首と肩の力の抜き方とその際の姿勢を練習してください。それがある程度できるようになってくると、他の姿勢のときでも首と肩の力を抜けるようになってきます。そうすると「構え」のときに無駄な力みを減らすことができるようになり、本来の自分の力を出しやすくなることで、反応の遅れやミスの確率を下げることができます。

また、無駄な力を入れている時間が短くなり、呼吸も深くなることから、体力が長くもつようになります。体力が「つく」わけではありません。無駄に早く消耗してしまっていた体力を省エネ化できるようになる、ということです。

更にもう一つ、この姿勢と呼吸を身につけることで心も落ち着けやすくなるので、不安や焦りが起こるのを少なくする効果も期待できます。(これについては次回「心編」でまた述べます)

これらの効果は、あくまで「本来の自分の力を引き出す」というだけで、実力そのものがアップするわけではありません。技術や能力、体力のキャパ自体は日頃の練習で身につけていかなければなりません。もちろん、その習得過程でもこの呼吸と姿勢を維持できているほど上達率・吸収率は上がりますので、理想を言えば「意識しないでもそうしている」くらいに自然になるよう日頃から習慣化できると良いでしょう。

余談ですが、実はこの首と肩の力を抜く姿勢、以前紹介した新聞パンチとも繋がっています。力んでいると新聞は上手く打ち抜けません。構えのときに首と肩の力を抜いて全身を柔らかく&鋭く使うことができるようになると成功率が格段に上がります。

武術の達人と呼ばれる人が普段から姿勢がよく力が程よく抜けているのは、礼節を重んじるからだけでなく、むしろ「その方が強いから」です。武術というのは本来、常在戦場であり、技術ではなく生き方なので、急に戦いの場面になっても「ちょっと待って、今ストレッチするから」とか「後日コンディションを整えてからやろう」なんて言ってられません。言い終わる前に斬り殺されます(笑)

もちろん、そこまでやれとは言いません。スポーツは武術ではありません。でも、日頃から自分の実力を100%に近い状態で出せるようにする努力は、それに自分自身を賭けているのであれば武術でもスポーツでも変わりません。

そんなわけで、選手として臨むのであれば今回紹介した「体の構え」はどんなスポーツにも有効ですし、慢性的な首や肩のこりに悩む方にも効果があるので(ちょっと習得までに時間はかかりますが)、ぜひ試してみてください。次回は今シリーズの最後「心編」です。

 

 

いや~、今回は文章も長く、画像の撮影と編集もありで手ぇかかったぁ…(苦笑)