ようやく千葉県も三密になりやすい業種に休業要請出すようで。近隣都県の休業要請により千葉に人が集まるとマズいから、という後手後手の情けない理由ですし、緊急事態宣言からすでに1週間経っているのは痛いところですが、やらないよりは遥かにマシです。

 

ひとまずこれで、ようやくうちも本来の体育教室らしい話題に入れます。うちが体育教室らしくない話題をするのはいつものこと、とか言わない(苦笑)

さて、体育教室らしい話題として何を書こうかなぁ…と思ったのですが、普通に逆上がりのやり方とか書いても外出自粛で公園行くのも厳しいですし(公園の鉄棒は不特定多数が触って消毒もされないので、むしろ今は使用を控えてください)、跳び箱なんて家にないし、マット系も家でスペースとれる技って少ないし…。

と、道具もスペースも問題なく家でできるものを考えた結果、ストレス解消と集中力の訓練にもってこいの「新聞パンチ」というトレーニングを今回はご紹介したいと思います。

実はこれ、「家でできる変わったトレーニング」としてうちの上級クラスでは紹介したことがあるのですが、別に上級レベルの子でなくても普通にできます。上級クラスでだけ紹介したのは時間的な問題だっただけで。

もう一つ断っておくと、「新聞パンチ」は私のオリジナルではありません。元ネタはこの本です。
『身体能力を高める和の所作』 安田登・著

読んで、実際に自分でやってみて、なるほどと思うことがあったので取り入れました。この本自体、結構興味深い内容が多く、体育に携わる人なら試しに読んでみる価値はあると思います。まぁ、とりあえず「新聞パンチ」というのがどんなものか紹介します。ぶっちゃけ簡単です。

まず、新聞紙を一枚用意して、新聞紙の真ん中と手の位置が同じ高さになるくらいにして構えます。
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ヘソの下(丹田)に息を溜めて、新聞の真ん中めがけてパーンチ!
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上手くいくと、拳が新聞を突き抜けて破くことができます。

これだけです。用意するのは新聞紙だけ、スペースも三畳もあれば十分で、お金もかかりません(笑)
 

な~んだ、こんなの簡単じゃん♪と思いますよね?実は、ヒラヒラした新聞紙を打ち抜くのは「のれんに腕押し」状態になるので、実際やってみると意外と難しいです。試してみてください。

なお、拳は縦でも横でもどちらでも構いませんが、「貫手」にはしないでください。
 

※右が貫手
貫手でやると、画鋲の原理と同じで力が「面」でなく「点」になり、新聞紙を貫くことが超簡単になってしまいトレーニングにならないので。

コツは
・構えるときは力まずに肩の力を抜き、「殴る」のではなく「貫く」イメージで
・新聞紙の向こう側に的があって、そこに届かせて打ち抜くイメージで

・最初のうちはヘソ下に溜めた息を「ハッ」と声を出して一気に出すイメージで
といったところでしょうか。

では、これが何のトレーニングになるのか。本の方では「丹田呼吸」という武道系でよく使う腹式呼吸とそれを使った瞬発力の練習として紹介しているのですが、私の見解ではそれ以外にも次のような利点があると考えています。


まず最初に力んだり筋力に頼って殴ろうとすると腕に力が入って拳の軌道が真っすぐにならず、新聞紙を正確に貫くことが難しくなります。「力まずにしっかり真っすぐ伸ばす」というのは腕に限らず体のどの部位でも運動において重要かつ難しいことで、その感覚的トレーニングになります。

また、腕を動かすだけで体が使えてないと、腕の距離が伸びず貫通力が落ちます。単独の部位だけでなく体全体を連動させて動かすことは運動の「上手さ」と直接比例しますので、そうした点でもトレーニングになります。

更に、当たった/触った瞬間に油断してその動作を止めず「動ききる(振り抜く)こと」はたとえば短距離走のゴールを油断せず最大速度で走りきることや、野球のバッティング、サッカーのシュート、バレーのスパイクなど様々な運動場面で必要になります。

また、こうした体の使い方だけでなくメンタル的な「集中力」のトレーニングにもなります。何度かやってみるとわかりますが、いい加減にやったり雑念が多いときに打ったりすると、成功率はかなり下がります。

「力まず落ち着いて構え→集中→初動」というのは短距離走のスタート時、テニスやバレーのサーブ、バスケのフリースロー、サッカーのフリーキック、野球のバッティングや守備の初動など、運動における「静から動」への転換時に必ず入る動作です。そのような場面で落ち着いて集中するためのトレーニングになりますし、慣れてきて練度が上がれば「静から」だけでなく「動から動」の動きにも応用できます。

このように、動作自体はただのパンチですが、汎用性が高いトレーニングとなっております。

でもそうした小難しい理屈や視点によるメリットもさることながら、おそらく最も効果があるのは「ストレス解消」です。これ、実際にやってみると思った以上に「楽しい」んです(笑)

 

なかなかやぶけないと「チクショー!」と思うのですが、破けたときの嬉しさと楽しさの方が遥かに上回ります。気が付けば、つい「もう1回」「1枚行けたらから今度は2枚で…」と新聞紙を何枚もボロボロにしてたりします。

ここで一つ注意なのですが、ついつい「もう1回」とやりたくなるのですが、意外と体全体を酷使しているので、最初のうちは10~20回発程度で止めた方がいいでしょう。やり過ぎると次の日腰のあたりが筋肉痛になって、たぶん後悔します(苦笑) おそらく最初のうちは2,3枚破くだけでそのくらい打つので、最初から「何発」または「何枚」とある程度決めておいた方がいいかもしれません。

なお、ボロボロになった新聞紙は集めて畳むか丸めるかして捨てればいいだけですので、終わったときの見た目はすごい惨状になりますが(笑)、片づけは簡単です。

身体操作とメンタルの両方のトレーニングになる上に、この外出自粛で暴れられないストレスを解消するにももってこいの「新聞パンチ」。よろしければ、ぜひお家で試してみてください。


蛇足&自慢。
ちなみに、私は今のところ8枚まで貫けるようになりました(笑)

   
なお、最初に載せた新聞紙1枚のときはボクシング的な「後ろ足の位置は変えない」打ち方をしていますが、この8枚のときは空手的な「後ろ足ごと半身を前へ」という打ち方をしています。どっちの方がいいのか、実は私にもよくわかってません。私がやるときは「何も考えず体に任せる」ようにしているので、ボクシング的/空手的を枚数とかで使い分けているわけではないので。

本来、私はキックボクシングをやっていたのでボクシング的な打ち方なのですが、剣術の動作と空手の動作が同じ「後ろ足ごと半身を前に」という体の使い方をするので、剣術稽古をやっているうちに空手的な打ち方も自然と出るようになりました。どっちがいいんでしょうかね?実戦ではどちらも一長一短だと思うのですが。

 

それでは、また♪