M&Oplaysプロデュース
2023年12月16日(土)14時開演
シアタードラマシティ


キャスト:向井理、水川あさみ、小松和重、青木さやか、宍戸美和公、田村健太郎、田口トモロヲ
作・演出:倉持裕

何気に重いお芝居でした。
まぁ、倉持さんですから、そうかなとは思ったのですが。
今回はキャストに魅かれて観に行った感じです。
期待どおりに、それぞれとても素敵で、カッコよくて、上手でした。
以前にも向井さんの舞台を観たことがありますが、それもそこそこ重いお芝居だったなぁ。
確か、赤堀作品だったので、まぁ重いのも肯けます。

とある田舎町で小さな工場を営む康人は、町の実力者の衣川から後継者に選ばれる。
衣川、康人と友人の坂などが参加した、趣味の狩猟で康人は誤って衣川にけがを負わせてしまうが、ついごまかしてしまう。
ちょっとした行き違いから坂に濡れ衣が着せられてしまい、康人と妻の彩花は罪悪感から衣川に真実を伝えようとするも、いざ衣川の前に出るとなかなか実行できない。
専属の運転手付きのリムジンに乗り、豊かな生活をしている衣川の機嫌を損ねることが怖く、時間ばかりが過ぎていく。
小さなコミュニティの中で繋がりの深い友人である坂夫妻ともなんとなくギクシャクしてしまい、都会からこの町にやってきた若者の白水との関係も微妙になる。
康人は自らの様々な「選択」に疑問や後悔を感じながら日々を過ごして…。

これといった大きな展開があるわけではなく、なんとなく解決する細かい日常が描かれている作品ですが、その日々の中で、また小さなコミュニティの中で流されてしまいそうになる康人の気持ちが上手く表現されていたと思います。
のどに刺さった小骨のような、成り行きでついてしまった小さな嘘が、他人の人生に関わりそうなことに繋がって、嘘だと言えなくなってしまう。
最初は軽い保身の気持ちだった嘘が自らの首を真綿で絞めるように徐々に大きな存在となってのしかかる。
やり過ごしてしまえない濃い人間関係に押しつぶされそうになりながら、なんとか自分を救う道を模索する。

なんかね、こうゆうことってあるなぁ、と思って怖くなります。
素直に謝ればそこで完結することが、どんどんオオゴトになり引くに引けなくなり、嘘で嘘を塗り固めることになり、身動きが取れない。
そもそもは誰もが善良な一市民なのに、こんな感じになってしまうんだなぁ、って、しみじみ思いました。

向井さんはとてもカッコ良くて、水川さんはすごく美しくて、それだけでも見た甲斐があるってもんですが(笑)、出演者全員が本当に上手い役者さん揃いで、安心して鑑賞できました。
場面転換はなく、康人の工場の事務所で、関係性の変化と共に、立ち位置とか会話の雰囲気とかが変化して、微妙な緊張感などは役者さんの所作や表情で表現されて、面白い演出だと思いました。
2020年6月上演予定だったそうですが、全公演中止になったそうです。(またまた、あのウイルスのせいで。)
同じ顔ぶれを集めてのリベンジ、発想のもとになった映画作品があるそうですが、さらに発想を広げたオリジナルな物語とのこと。

つまりはまぁ、嘘をつくとロクなことがない、ということですが、恐らくこれからも人は嘘をつき続けるような気がします。