Webコンサルタントの松崎です。
これまで「自分でできる!SEOセルフチェック」で、常時SSL対応やページ表示速度、スマートフォン対応、ページタイトル、画像のalt属性、見出し構造、内部リンク、コンテンツの定期的更新などについて個別記事で詳しく説明してきました。
今回は、集客の成果(コンバージョン)に直結する「問い合わせフォーム」の使いやすさについて詳しく解説します。
問い合わせフォームとSEOの関係
「問い合わせフォームの使いやすさ」と聞くと、SEOとは直接関係ないように思えるかもしれません。
確かに、フォームの設計自体が検索順位に直接影響することはほとんどありません。しかし、SEOの最終目的は「検索結果で上位表示されること」ではなく、「ビジネスの成果につなげること」です。
せっかく検索上位に表示されてサイトに訪問者を集めても、問い合わせフォームが使いにくければ、最終的な成約(コンバージョン)につながらず、これまで行ってきたSEOの取り組みの効果が半減してしまいます。また、使いやすいフォームはユーザーの使いやすさを向上させ、間接的にSEOにもプラスの影響を与えます。
ここでは、SEOの視点も含めた、問い合わせフォームの重要性と改善方法を見ていきましょう。
なぜ問い合わせフォームの使いやすさが重要なのか?
問い合わせフォームの使いやすさが重要である理由をいくつか詳しく見ていきます。
1. コンバージョン率への直接的な影響
問い合わせフォームは、見込み客が初めて企業との接点を持つ重要な窓口です。フォームが複雑で使いにくいと、途中で離脱するユーザーが増え、コンバージョン率(フォーム閲覧者のうち、実際に送信する割合)が大幅に低下します。
調査によると、フォームの入力項目を11個から4個に減らしただけで、コンバージョン率が120%も向上したという事例もあります。必須項目の多さや、複雑な入力規則は、ユーザーの離脱を招く大きな要因となります。
特に目的達成が近い段階での離脱は、それまでのマーケティング投資(SEOやWeb広告なども含む)が無駄になることを意味します。つまり、フォームの最適化は、投資対効果(ROI)の向上にも大きく貢献するのです。
2. ユーザーの使いやすさとSEOの間接的な関係
Googleは「ユーザーの使いやすさ」をSEOの重要な要素として位置づけています。使いやすいフォームは、サイト全体のユーザー体験向上に寄与し、以下のような指標に良い影響を与える可能性があります。
- 直帰率の低下(ユーザーがすぐにサイトを離れる割合の減少)
- 滞在時間の延長(サイト内でより長く過ごす時間の増加)
- ページビュー数の増加(一人のユーザーが見るページ数の増加)
これらの指標は、サイトの質を示す重要なシグナルとしてGoogleに認識され、間接的に検索順位にもプラスの影響を与えると考えられています。
3. モバイルフレンドリーとの関連
現在、Webサイト訪問の60%以上がスマートフォンなどのモバイルデバイスから行われています。Googleは「モバイルファーストインデックス」を採用しており、モバイルでの使いやすさを重視しています。
スマートフォンで使いにくい問い合わせフォームは、サイト全体のモバイルフレンドリーの評価を下げる要因となります。特に小さな画面での入力のしやすさ、タップで選択できるインターフェイス、適切なフォントサイズなどは、モバイルユーザーにとって非常に重要な要素です。
4. ブランド価値と信頼性への影響
問い合わせフォームは企業とユーザーとの重要な接点です。使いにくいフォームは「この会社はユーザーのことを考えていない」という印象を与え、ブランド全体の評価を下げることがあります。
逆に、使いやすく配慮の行き届いたフォームは、「ユーザーを大切にする配慮のできる企業」という良いイメージを与え、信頼感の向上につながります。この信頼感は、長期的な顧客関係構築の基盤となります。
5. データ品質とビジネス効率への貢献
使いやすいフォームは、収集するデータの質の向上にも貢献します。入力が簡単で明確なフォームでは、ユーザーが正確な情報を入力する可能性が高まります。
質の高いデータは、その後の営業活動や顧客対応の効率を大幅に向上させます。不明確な情報や誤った連絡先などが減ることで、フォロー作業の手間が省け、成約率の向上にもつながります。
問い合わせフォームのセルフチェック
自社の問い合わせフォームの使いやすさを確認するための方法をいくつか紹介します。
1. 実際に自分で試してみる
最も基本的な方法は、自分自身でフォームを試してみることです。
実際に全ての項目を入力し、送信まで完了させてみましょう。その際、以下のポイントに注目します。
- 入力にかかった時間
- 迷った箇所や入力しづらかった項目
- エラーが発生した箇所とその理由
- 必須項目の多さと入力負担
- 送信後の案内の分かりやすさ
客観的な視点で評価するため、普段使わない端末(別のスマートフォンなど)で試してみるのも良いでしょう。
2. テストユーザーに協力してもらう
自分では気づかない問題を発見するために、社内の同僚や家族など、Webサイトに詳しくない方に協力を依頼し、実際にフォームを試してもらいましょう。
その際、「思考発話法」(操作しながら考えていることを声に出してもらう方法)を用いると、迷いや困惑のポイントをより詳細に把握できます。
「この項目は何を入力すればいいのかわからない」「このエラーメッセージの意味がわからない」など、具体的なフィードバックを記録し、改善に活かしましょう。
3. モバイルとPC両方でのテスト
スマートフォンとパソコン、可能であればタブレットなど、複数のデバイスでフォームを確認しましょう。特にスマートフォンでは以下の点を重点的にチェックします。
- タップできる要素(ボタンやチェックボックスなど)のサイズは十分か
- フォントサイズは読みやすいか
- 横スクロールせずに全ての項目が見えるか
- プルダウンメニューや日付選択などの操作は指でしやすいか
- 入力途中での画面の拡大・縮小が必要ないか
iPhoneとAndroidの両方でテストすると、より多くのユーザー環境をカバーできます。
4. アナリティクスデータの分析
Google AnalyticsなどのWeb解析ツールを使って、問い合わせフォームの実際の利用状況を確認しましょう。
特に以下の指標が重要です。
- フォームページの直帰率
- フォーム完了率(フォームページ訪問者のうち、送信まで完了した割合)
- フォーム入力の平均時間
- フォーム入力開始から放棄までの経過時間
- デバイス別のコンバージョン率の差
特にコンバージョン率が低い(業種にもよりますが、5%未満など)場合や、PCとモバイルでコンバージョン率に大きな差がある場合は、改善の余地があると考えられます。
5. フォームツールの診断機能を活用
多くのフォーム作成ツールには、使いやすさを診断する機能があります。
- フォーム内のどの項目で離脱が多いかを示すヒートマップ
- フォーム入力の所要時間の分析
- エラーが多発する入力項目のレポート
- アクセシビリティ(障害のある方への配慮)のチェック機能
専用のフォームツールを使っていない場合でも、Microsoft Clarityなどのヒートマップツールを導入することで、ユーザーの行動パターンを可視化できます。
使いやすい問い合わせフォームの設計ポイント
SEO視点も含め、使いやすい問い合わせフォームを設計するためのポイントをいくつか紹介します。
1. 入力項目の最適化
フォームの使いやすさを決める最大の要因は、入力項目の数とその内容です。
- 必須項目を最小限に抑える(理想は3〜5項目程度)
- 本当に必要な情報だけを収集する
- 「任意」と「必須」を明確に区別する
- 「名前」「住所」などの項目は可能な限り一つのフィールドにまとめる
- 「姓」「名」を別々に入力させる必要があるか再検討する
例えば初期段階では、「名前」「メールアドレス」「問い合わせ内容」の3項目だけにして、詳細情報は後続のコミュニケーションで収集するアプローチも効果的です。
2. 入力しやすいデザインと機能
フォームの視覚的なデザインや入力支援機能も、使いやすさに大きく影響します。
- 入力フィールドは十分な大きさを確保する(特にモバイル向け)
- フォームの流れが一目でわかるよう、視覚的に整理する
- フォーカスされている入力欄を視覚的に強調する
- プレースホルダーテキスト(入力例)を適切に配置する
- オートコンプリート機能を活用する
入力例やヘルプテキストは、ユーザーが迷わないために重要です。
例えば、「電話番号」欄に「例09012345678(ハイフンなし)」と表示するだけで、入力ミスが大幅に減少します。
3. エラー表示の最適化
多くのユーザーが離脱するポイントが、エラー表示です。
適切なエラーメッセージは、ユーザーの挫折感を減らし、完了率を高めます。
- エラーは入力時または送信時ではなく、入力欄からフォーカスが外れた時点でリアルタイムに表示
- エラーメッセージは具体的で建設的な内容に(「無効です」ではなく「半角数字で入力してください」など)
- エラーがある入力欄を視覚的に強調する
- 全てのエラーをまとめて表示するのではなく、該当欄の近くに表示
- パスワードなどの入力規則は事前に明示する
また、ユーザーが入力した情報は、エラーが発生しても保持されるようにしましょう。
入力内容がリセットされると、大きなストレスとなります。
4. モバイルフレンドリーなフォーム設計
スマートフォンユーザーにとって使いやすいフォームには、特別な配慮が必要です。
- 適切な入力タイプを指定する(電話番号にはtel型、メールアドレスにはemail型など)
- タップしやすいサイズのボタンとチェックボックスを使用する
- 長いプルダウンメニューは避け、別の選択UI(ラジオボタンなど)を検討する
- 複雑な入力項目は分割する(住所など)
- キーボードが表示されても操作できるデザインにする
重要なのが、スマートフォンに適したキーボード表示の設定です。数字入力欄には数字キーボード、メールアドレスには@マークが表示されるキーボードが自動的に開くよう設定しましょう。
5. 送信後のユーザー体験の最適化
フォーム送信後の対応も、ユーザーの使いやすさとブランド評価に大きく影響します。
- 送信成功の確認ページをわかりやすく表示する
- 次のステップや期待できるレスポンス(「24時間以内に返信します」など)を明確に伝える
- 入力内容の控えをメールで自動送信する
- 連絡がない場合の代替手段(電話番号など)も提示する
- ソーシャルメディアなど、他の接点も提案する
送信後の不安を解消することで、成約率の向上と顧客満足度の向上が期待できます。
よくある問題とその改善方法
問い合わせフォームに関する一般的な問題とその改善方法を見ていきましょう。
1. 必須項目が多すぎる
多くのフォームで見られる問題は、必要以上に多くの項目を必須としていることです。特に初期接触の段階では、詳細情報の入力を強制することは避けるべきです。
【改善方法】
- 各項目が本当に「必須」かを再検討する
- 情報収集の目的を明確にし、その段階で必要な項目だけを必須にする
- 詳細情報は、見積もりや資料請求の段階で収集するプロセスに変更する
- 入力の負担に対して、得られるメリットを明確に表示する
氏名と連絡先以外の個人情報(住所、年齢、職業など)は、初期段階では任意項目にすることを検討しましょう。
2. フォームが長すぎる・ステップが複雑
一つのフォームに多くの項目がある場合や、複数のステップがある場合、ユーザーは「まだ終わらない」という印象を受け、途中で離脱しやすくなります。
【改善方法】
- 1ページ完結型の短いフォームを基本とする
- 複数ステップが必要な場合は、進捗バーなどで全体の流れを明示する
- 各ステップでの入力項目を最小限に抑える
- スクロールなしで全体が見渡せる長さを目指す
-複雑なフォームは、用途別に分割する(「資料請求」「サービス相談」「見積もり依頼」など)
初期接触のフォームは特にシンプルにし、関係構築が進んだ段階で詳細情報を収集する段階的アプローチが効果的です。
3. エラーメッセージがわかりにくい
多くのフォームでは、エラーメッセージが技術的すぎたり、具体的な対処方法が示されていなかったりする問題があります。
【改善方法】
- エラーメッセージは平易な言葉で、具体的な対処方法を示す
- 「無効なフォーマットです」ではなく「電話番号はハイフンなしの10桁または11桁で入力してください」など
- エラーの箇所を視覚的に明確に示す(赤色の枠線や背景色など)
- 可能な限り、入力途中でリアルタイムにバリデーション(入力値の検証)を行う
- 全てのエラーをまとめて表示するより、各入力欄の近くに個別表示する
ユーザーが何をすべきかを明確に理解できるエラーメッセージは、離脱率を大幅に低減します。
4. スマートフォンでの使いにくさ
PCでは問題なく使えるフォームでも、スマートフォンでは使いづらいケースが多く見られます。
【改善方法】
- フォームの幅をスマートフォン画面に合わせる(横スクロール不要に)
- タップターゲット(ボタンなど)を十分な大きさに設定(最低44×44ピクセル)
- フォントサイズを適切に設定(最低16ピクセル)
- 入力タイプに応じた適切なキーボードが表示されるよう設定
- 複雑な選択肢(都道府県など)は、タップしやすいUIに変更
レスポンシブウェブデザインだけでなく、実際のスマートフォンでの操作性をテストすることが重要です。
5. プライバシーへの配慮不足
個人情報を扱うフォームでは、プライバシーへの配慮が信頼性とコンバージョン率に大きく影響します。
【改善方法】
- プライバシーポリシーへのリンクを目立つ位置に配置
- 収集する情報の使用目的を明示
- セキュリティ対策(SSL対応など)をアピール
- 必要以上の個人情報を求めない
- 情報を第三者に提供する場合は、その旨を明確に示し、同意を得る
プライバシーへの配慮は法的要件であるだけでなく、ユーザーの信頼を獲得するために不可欠な要素です。
問い合わせフォーム最適化のまとめ
問い合わせフォームの使いやすさは、せっかくのSEOや集客の成果を最大化するために不可欠な要素です。検索上位を獲得してもコンバージョンにつながらなければ、その努力は十分に報われません。
問い合わせフォーム最適化重要ポイント
- 問い合わせの敷居を下げるため、必須項目は最小限に抑える
- スマートフォンでの使いやすさを特に重視する
- わかりやすいエラーメッセージと入力ガイドを提供する
- プライバシーへの配慮を明確に示す
- 送信後の流れも含めた、全体のユーザー体験を最適化する
フォームの改善は、専門的な技術がなくても取り組める施策が多くあります。また、比較的短期間で効果が測定できるため、PDCAサイクルを回しやすい領域でもあります。
少しの工夫と改善で、問い合わせ数やコンバージョン率が劇的に向上するケースも珍しくありません。サイト全体のSEO対策と合わせて、問い合わせフォームの使いやすさにも注目し、継続的な改善を行っていきましょう。
より詳しいWebサイトの診断方法については、「Webサイトが集客できない理由 - 10の自己診断法」をご覧ください。また、問い合わせフォームを含めたコンバージョン最適化の専門的なサポートが必要な場合は、当社のSEOの最適化を基本とするWebコンサルティングサービスもぜひご検討ください。
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