「シィ、今日の午後予定ある?」

 

 

その日突然。お互いが起床して少し経った頃、兄は、ソファーで本を読む妹にそう声を掛けた。

 

 

「兄さん。……ううん、特にはないよ」

 

 

「もし良かったら、一緒に買い物に行かないかい?」

 

 

ライファが他人を誘うなんて珍しい。だから、少し気になって、

 

 

「良いけど、珍しいね。兄さんが買い物に誘ってくるなんて」

 

 

「あー……なんて言うか、気分転換にどうかと思って」

 

 

本人が気分転換に、と言えるという事は手が空いているのだろう。

 

 

「(普段なかなか誘ってくれる事ないし…)うん、良いよ!行こっ?」

 

 

シーファも折角の兄の誘いに乗る事にした。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

身支度を済ませた二人は市街地へとやって来た。目的地は市街地の中でも有数の、買い物客が多く集まるショッピング街だ。

 

 

「こんな風に兄さんと出掛けるの久し振りだから嬉しいな」

 

 

「そう?まぁ、シィが嬉しそうだから何でも良いけど」

 

 

「もー、兄さんってばいっつもそう!今日は兄さんの気分転換に来てるんだから、行きたいとことかあったらちゃんと言ってね!」

 

 

「はいはい」

 

 

彼女の言う通り、基本的にライファは研究か、もしくは妹優先な所為で自分の事が疎かになりがちなのである。

 

 

誘いに乗ったのはそんな兄の休息を手伝うためでもあった。

 

 

「ところで、兄さんの目的は?何か買いに来たんでしょ?」

 

 

「あぁ、うん。ちょっと研究資料を買い足したいから、本屋に行こうと思ってる」

 

 

ショッピング街はかなり広く、ここの大きな本屋や図書館ならライファの求める資料も置いてあるだろう。

 

 

「本屋かぁ。……あ、資料探しだと長くなる?それなら、わたし見たいところがあるんだけど……」

 

 

「気分転換に付き合うって言った側からごめんね」とシーファは申し訳無さそうに両手を合わせる。

 

 

「気にしなくて良いよ。ずっとシィを待たせるのも悪いし、行っておいで」

 

 

「うん、ありがとう!また後で合流しよ!」

 

 

そう言って、一旦分かれて行動する事にした。約束した、「2時間後にシンボルの時計塔で合流」するまで。

 

 

 

◇◆

 

 

 

兄と別れたシーファは一人、とある場所に向かっていた。それは、飲食や雑貨、様々な店が立ち並ぶエリアだ。

 

 

(来月、兄さん誕生日なんだよね。…あ、わたしもだけど)

 

 

それもそのはず。双子なので誕生日は同じなのだが、シーファは兄に送るプレゼントを探しに来たのだ。

 

 

先程、別行動を申し出たのもこのためである。ライファが本屋に長居することはお見通しだ。

 

 

(何が良いかな……兄さんの事だから、やっぱり利便性が高い物?)

 

 

具体的な物は決まっていなかったが、見掛けた良さげな雑貨屋に入る。

 

 

雑貨屋と言うだけはあって、本当に色々な物が置いてある。

店内を眺めて悩みに悩んだ末に、兄が喜びそうな物を選ぶ。

 

 

手に取ったのはブックマーカーと、タオルが2つ入ったギフト用のセット。

 

 

(やっぱり日頃から兄さんが使ってる物が良いよね。あとは……)

 

 

チラッと先程から気になっている商品の棚を見遣る。

 

 

そこにあったのは、指輪。ファッションリングというやつだ。

 

 

ライファは派手な物やごちゃごちゃした物はあまり好まないが、シンプルなピアス等はよく着けている。きっと、そんなに邪魔にはならないだろう。

 

 

それに……

 

 

(兄さんがさりげなく着けてるところ、見たいな……)

 

 

(若干、後者の気持ちの方が勝ったような気もするが)形は男性が着けても違和感がないような細身の物で。

デザインは兄に似合いそうな色でシンプルな物を選び、購入を決める。

 

 

(うん、良い買い物ができたかな!)

 

 

買い物が終わった時には時間も良い頃合になり、そのまま時計塔へと歩き始めた。

 

 

◇◆◇

 

 

時計塔で合流した二人は、別行動でいられなかった時間を、一緒に食事をしたり街を歩いて埋める事にした。

 

 

と言っても、ライファはほとんど自分の希望を言わず、基本的にはシーファが行き先を決めていたが。

 

 

「兄さんの気分転換だったのに、結局わたしが決めてばっかりでごめんね……」

 

 

「謝る必要なんか無いよ。オレはシィと出掛けるならどこでも楽しいから」

 

 

「もう……でも、兄さんがそう言うならそれ以上言えないんだけどさー…………あ」

 

 

ーーとある店先で不意にシーファが足を止めた。

 

 

「わぁ…綺麗…」

 

 

そこは色々なアクセサリーを売っている店だった。

外観もまさに女の子が好きそうな雰囲気である。

 

 

「気になる?寄ろうか」

 

 

「えっ、でも……」

 

 

自分の要望ばかりが通って遠慮気味なのが分かると、シーファの手を引いて入口まで歩みを進める。

 

 

「シィの見たい物が、オレの見たい物だから。ほら、入ろう」

 

 

 

 

 

 

 

予想通り店内は女性客が多く、それに付き添う男性客が少々といった感じだった。……が、付き添いの男性客の中には真剣に商品を眺める人もいる事に気が付く。

 

 

(相手への贈り物か。あるいは…自分用、ってこともあるのかな……)

 

 

そんな事を考えながら、自分も何となく商品棚を眺める。

 

 

(……これ、シィが好きそうだな)

 

 

手に取った髪飾りを、少し離れた場所にいる妹の後ろ姿にかざす。

 

 

色も合いそうだし、せっかく街に来たのだからプレゼントもアリかと考えて、ライファはふと思い出した。

 

 

(そういえば、来月シィの誕生日……)

 

 

それなら尚のこと丁度良い。ついでに買っていこうと思ってーーレジへ向かう足を止めた。

 

 

購入物を見られる事で本人にバレては面白くない。先に買うとそのリスクは高まる。

 

 

商品は一旦元の場所へと戻し、シーファの元へ向かう。

 

 

「どう?良い物はあった?」

 

 

「あ、うん!これすごく可愛いなーって」

 

 

手に持った耳飾りを見て妹が目を輝かせるのを見て、兄も微笑ましく感じる。

 

 

「うん、シィに似合うと思う。欲しかったら買いなよ。財布は出すから」

 

 

「え、でも悪いよ。これわたし個人の買い物だし、今日ずっとわたしに付き合ってくれてるし……」

 

 

「良いよ。気分転換についてきてくれたのはむしろシィの方だろ?」

 

 

「さっき一人にさせたお詫びだと思って。ね?」と言えば、シーファは「分かった」と頷く。

 

 

ここで頑固になって断ればお互いに良い思いをしないことが分かっているからだ。

 

 

シーファから耳飾りを預かると、レジへ向かうついでに先程目をつけた髪飾りも手に取る。

 

 

チラッと妹の方を見ると、先程とは違う商品棚を眺めていてこちらの行動には気が付いていないようだ。

 

 

 

 

 

「お待たせ。はい、これ」

 

 

「兄さん、ありがとう!大切にするね!」

 

 

小袋を受け取り、シーファは満面の笑みを見せる。

 

 

「他にやりたい事がなければ、そろそろ帰ろうか」

 

 

「うん!今日はありがと!」

 

 

店を後にし、夕日が差す帰り道を歩み始める。

 

 

お互いにプレゼントを渡すまで。

あと1ヶ月……

 

 

◆――――◇――――◆――――◇――――◆

 

 

こんばんは!テオです

 

今日は11月23日。

 

11(いい)23(兄さん)の日!

 

ということで過去話以外のうちの子小説を初めて書いてみました。

 

"自分の気分転換"のつもりだったけど、結局は妹の希望に付き合ってあげちゃう……良い兄さんですねぇ(自画自賛)

 

まぁ、ライファの場合、自分の物欲がほとんど無いだけとも言いますが←

 

 

 

 

この後の展開は読んでの通りなので、ここから双子誕生日に上手く繋げられるとイイナー(白目)

 

 

こんな感じで今後も○○の日とか、うちの子の誕生日とかで小話挟めたら良いなと思っております。

ちなみに管理人の気力次第です(ぇ

 

 

 

 

 

という事で、今回はここまで!

 

本日も最後までお読み下さいまして、ありがとうございます!

テオでした。それでは、また! (* ̄▽ ̄)ノシ マタネ-