6月14日 金曜日 | ママ、わたしは生きていくよ。

ママ、わたしは生きていくよ。

バリキャリ母と、平凡娘ひとり。
母子家庭を襲った母の癌。
闘病3年9か月で風になった母。

母の知らないわたしを徒然したためます。

木曜日はさわやかな晴れ模様で

母から預かった大量の洗濯物が

太陽の香り満タンに吸い込んで

気持ちよく乾いた。

 

金曜日は

涼しげな風があったけれど

「アイス食べたい」なんて母が呟いていたから

家から片道50分かかるお店の

前回入院した時喜んでいたアイス最中を

買いに行くかどうか。

 

散々迷って

この迷っている時間よ!と

自分で突っ込みをいれながら

 

母と病院でいる時間が長いほうをとった。

 

毎年夏には必ず一回

「チョコモナカジャーンボ!」と歌いながら

母と分け合って食べていたから

それを手土産に病室を訪れた。

 

母はまた座っていたけれど

もう病院ついた

わたしのラインに「早!」と返信してすぐ

座って準備していたのだという。

 

わたしはまた

じゃじゃーん♬

チョコモナカジャーンボ♬

そう掲げながらどや顔で母に見せる。

 

「おー!」

母は嬉しそうに歓声を上げて

さっそく袋をハサミで開けようとする。

 

早速食べんの!

「だってとけるやん」

 

そう言いあいながら

わたしに割って渡そうとする母だけれど

力が入らなくて出来ない。

 

少しふくれっ面をしながら

「やって!」と少し乱暴にアイスをわたす。

 

わたしがわると

チョコまで割れずにひどく不格好に千切れてしまった。

 

「ダッサ!」母はえーっという目を向けながら受け取る。

 

それでも

「はんぶんこやね」といいつつ母が多く食べた。

息は上がっていたけれど

おいしそうにペロッと食べた。

 

アイスははいんねんな。

わたしの悪態にも「ふん」顎を突き上げ

なにさという表情でふざける。

 

良かった。

今日は調子がいいと安心していた。

 

相変わらずひどくむくんだ足を

マッサージしながらおしゃべりして

 

お昼ご飯を「味ない」口パクで文句言いながら

にゅうめんをすすっていた。

 

ただ、食べる前に鎮痛剤を追加でいれてもらう。

 なんでこんなんするん?

わたしの直球疑問に

「食べると息が上がるから、その前に入れてもらうねん」

言いたくないけれど

今更隠してもという表情で教えてくれる。

 

お水とって

これなおして

お盆片付けて

 

いろいろ甘えたおしていたけれど

食べ終わってしばらくしても息が整わない。

 

苦しそうな肩呼吸。

  (看護師さん)呼ぼか?

ナースコールに目配せしながら母にきくと

小さくうなずく。

 

食べるだけでこんなに苦しくなるなんて。

麻薬鎮痛剤は最低30分はあけないといけない。

食べる前に追加したから

間を置くことなくの追加になる。

 

ちょっときつそうな看護師さんが

食前にお薬を調整してくれた

後輩であろう看護師さんを引き連れてきた。

 

さもその人のミスか何かのように

効かない薬を不振がって

「これ何?」

「(逆さまに取り付けられていた機械)これはあえての逆?」

などとその看護師さんが担当する前からの

あれこれをチェックしながら追加してくれた。

 

2人が去った後

「こっわ~~」

また口パクで母がふざけて

わたしに目をシパシパさせながら言う。

 

大げさに震えながらわたしも頭を振り

ふざけながら

「あんたもうお迎えの時間やろ」

「ごはんもたべなあかんし、帰り」

時間にうるさい母がソワソワしだした。

 

  わかったわ。

  また明日な。

「チョコモナカジャーンボ うまかった」

母はそういうと手をひらひらさせて「ありがとう、いつも」と言って

送り出す。

 

ほなねー わたしもヒラヒラ手を振る。

それが母とのふざけあった最後の会話。

 

車に乗り込むころ

「息おさまったわ。あんがと。」

ラインがきた。

 

明日もこれが続くと思っていた。