「建前抜きで言う。お前が好きだ。恋人になってほしい」


…あり得ない発言とその真剣な眼差しに私は頭が真っ白になった。

「男嫌いなあんたに告白しても断られると思ってリスク回避を理由に恋人のフリを提案したけど、男嫌いが無いなら正攻法で行く。何よりあんたは全然危機感を持ってない。ぼうっとしてたら本当に痛い目にあうぞ」

告白、という言葉を聞いたがそこからイメージする雰囲気とはかけ離れたお叱りを私は受けている。

「だいたい男嫌いが無くなったというのも俺は疑っている。休憩室で手が震えていただろ。顔も真っ青で。それと今の態度が違いすぎるんだよ。俺を恋人にしとけ 。お前に好意を持っていて事情を知る俺はあんたを傷付けない。」

手の震えに気付かれていた。やっぱり檜山さんは凄いな。気付かれたことさえ私は分からなかった。

いや、今はそこじゃない。

急に檜山さんの感じが変わった。元々口は荒い人だったけれど、勢いが違う。この人は何を言っているのだろう。

「おい、聞いているのか?リスク回避を優先しろ。今度出先で口説かれたら恋人がいると言うんだ。俺の名前を出していい」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

この法律事務所に転職して思い知ったことがある。事件や事故に巻き込まれることは非日常ではないということ。当たり前に起きている事なのだ。話を聞いただけ見ただけ、当事者となる被害者加害者、とその立ち位置の違いで感じ方が違うだけだ。

仕事として携わる檜山先生の、そのリスク回避の考え方は理解できる。でもだからって。

「檜山先生の助けを必要としている人は沢山いますよ。クライアントでもないのに何でここまで...私なんてただの...」 

「好きだからに決まっているだろ」

檜山さんは、私の言葉を待たずに言った。



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