●Malu Cafe●

はじめまして、Malu Cafe(マルカフエ)です

11月27日(日)-12月25日(日)マルカフェ文藝部「棕櫚」展2016

表紙画、扉絵、マルカフェ文藝部×マルカフェ美術部による初のコラボ作品を含めた、原画展示会。神社裏にて、只今好評開催中。

 

 

ここでは、コラボ作品を、作家本人によるあらすじ・小説作品冒頭とあわせてご紹介させていただきますね。

 

スパイス/文 石川友助、画 Kazu Tabu

廃村をまつばかりのキムラ村に、バイクの一団が辿りつく。一団は村に住みつき、女たちは次々と子を産む。村はずれにあるカレー研究所を訪れたボスの三女はスパイス探しを手伝うようになる。やがてカレー研究所のどえらい発明が村の運命を変えていく。書き下ろし読み切り短編小説。お気に入りのスパイスを探してください。

 

(KazuTabu/キムラ郡キムラ村/¥9,000)

 炎天の下、六台の改造バイクが停車した。補修された道はそこで終わっていた。その先もアスファルトは続いていたが、ひび割れ、やつれた色をしている。先頭の男はバイクにまたがったまま『この先キムラ村』と書かれた標識を睨み付けた。男の背には髪の長い女がしがみついている。

 どこにでもある山深い農村、キムラ郡キムラ村。不要なものは朽ち、必要なものさえ寿命が尽きて、挙げ句、村自身が森に呑み込まれようとしていた。使われなくなった納屋には植物の蔓が絡みついてどちらが支えているのかわからない。菓子の家ならぬ野菜の家といったところ。学び舎もグランドの遊具たちも。畑だった土地で馬が草を食んでいる。交差点では鶏が揉めている。今年もひとり亡くなって、ついには村人と案山子の数が同じになった。田んぼで稲穂が揺れている。収穫は近い。みな老いているが今のところはなんとかやっている。
 村長の家の庭先で狼煙が上がった。マタギが獲物を仕留めたのだ。それを合図に歩けるものは村長の家へと集まる。役所仕事は郡に集約され、村役場が閉じられてから、村人たちの議会と称した世間話は村長宅で行われるようになった。郡からは廃村を検討するように言われている。それでも村人たちは生まれた村で死ぬのだと拒んでいる。みな村を愛しているが、このままでは滅びてしまうことも知っている。郡は村人に有利な条件を次々と提示してくる。
「老いぼれがここに居座れば銭が嵩むんだと」 
 誰ともなく口火を切る。集まれば毎度同じ話だ。 
「あいつらはわしらがくたばるのを願ってやがるのさ」 
「忌枝を落とさねば国が美しく育たんのだと。すぐにでもキムラ村を切りたくて仕方がないのさ」 
誰かが上手いことを言うとこの話は終わる。それもいつものことだ。そもそも妙案などないのだ。植木職人だった男が白髪を掻きあげるとみな黙って盃に手を伸ばした。
 外からの風に微かな匂いを感じたマタギが話題を変えた……


(画:KazuTabu/山の神ンガイ/¥9,000)

 

香港酒宴/文・画 くりまる

勤めていた出版社を辞めてフリーで編集の仕事をしていた頃。肌寒い二月の初めに旅行雑誌の編集者N氏から香港ルポを依頼された。タイミングの良さに驚いて仕事を引き受けた。別件で進行中の仕掛け絵本の印刷所が香港にある。担当のT氏と会えるかもしれない。

 

(くりまる/香港酒宴/非売品)

最後の客を迎える準備を済ませる。
一八時四十五分。約束の時間までまだ間がある。

カーテンを開いて窓ガラスに顔を近づける。
高層ビルの灯り。点滅するネオンサイン。
群青色の夜空に輝く中秋の名月。

一九九六年。変転の始まり。勤めていた出版社を辞めてフリーで編集の仕事をしていた頃。肌寒い二月の初めに旅行雑誌の編集者N氏から香港ルポを依頼された。タイミングの良さに驚いて仕事を引き受けた。別件で進行中の仕掛け絵本の印刷所が香港にある。担当のT氏と会えるかもしれない。
週明けに高田馬場にある編集部へ出向く。同行カメラマンはM嬢だった。打ち合わせの後に彼女と駅前の喫茶店に寄る。M嬢は皮ジャンを脱いで、切り過ぎちゃいました、と言って短くなった髪を撫でた。
今回の仕事は編集者のN氏が香港フリークのM嬢をカメラマンに指名して、M嬢がライターに私を推して決まったという。
S姉と一緒に香港に行けるなんて、最高に嬉しいです。上機嫌でM嬢が笑う。初めて仕事で組んだ時から彼女は年上の私をS姉と呼んだ。M嬢とは妙に気が合う。映画や音楽も男性の好みまで似ている。
彼女となら楽しい旅になるに違いない。


私立探偵富頭冴シリーズ第二弾「尾行対象者」/文 カフェラテ・イリエ、画 なかの真実
「誰もが書きたかったミステリー、書きました」カフェラテ・イリエ
・読む前から手に汗握る展開で、なんだかもう ― 45歳主婦
・富頭も悩んでるんだ……私、元気出た ― 33歳OL
・女性のスーツや鎖骨やバックシャン、いまだによだれが垂れるね ― 83歳老人
・わたしもあいさつしていますみんなもしましょう ― 4歳女児
・登場人物が意味をなさない!?ミステリーの常識ここに覆る! ― 56歳出版社編集長

  

(なかの真実/尾行対象者/¥25,000円/2枚セット)

 

デジタル機器によるミクロで緻密な捜査が全盛の現在、アナログ捜査の筆頭格「尾行」など現場では流行っていないに違いない。デジタル機器の奴隷と化した面々はそう思うに違いない。

隣のテーブルの女性はノースリーブだから動作の折々に腋が開かれて、見える。ところどころ色素沈着の赤褐色が目につくが全体的には色白無毛できれいな腋だ。顔立ちも整っているが、口を開けたまま咀嚼するからにちゃくちゃと音が周囲に飛び散っている。せわしなく確認するスマートフォンの壁紙は娘姉妹だろう。年端もいかない姉妹はこの先の人生、母のにちゃくちゃした音を聞き続けることになる。母の生きた証は咀嚼音ということになるだろうか。行儀が悪いと教わることのないまま、口を開けた咀嚼は母から娘そして末代まで受け継がれてゆく……行儀が悪いというのも現在の基準でしかない。三世代後、五世代後などどうだろう。基準も揺らぎ真反対に逆転しているかも知れない。行儀の変遷に左右されない咀嚼音は一族の強固なアイデンティティだとも言える。

天然パーマのもっさりした髪の富頭冴(とむがしら・さえる)はナポリタンを食べていた。ずずずとパスタを吸い込むと最後の先端がぴんとはね、赤いソースが弧を描いて飛ぶ。ソースは向かい合っているくすんだ刑事、地平遠見(じだいら・とおみ)の白いブルックリン・シャツにぺしゃりと激突した。「おい……おい!」「……」地平はお手拭きでソースをぐりぐり拭うが染みは伸び広がるばかり。「富さん、頼むよ、今日は白いんだから……お手拭きじゃあだめだ、石鹸じゃないと」地平は手洗いに立った……


おとなひ/文 中川マルカ、画 hunton
心に生じ、外に節有る、之を音という。
「言は祝詞。その言の祈りに神の反応があって、その器が自ら鳴るのを音という(字訓)。」
グラナダに行かなければいけない、と、思い立った僕は列車に乗り込み西へ向かう。あたらしい土地で仕事を得、恋におち、ギターを手に入れ、いつか、心の内に生まれた音を探して、ふたたび海を渡る。僕を訪れたキミエ、僕の訪れたエマとエマの世界……おとぎ話のような、もしかしたら、本当の話。

 

(hunton/キミエ/非売品)

「グラナダに行かなきゃいけない」、って。

顔を洗って鏡を見ていたら、そう思った。
起き出した時には、太陽はもうほとんど真上にあって、にわとりもひとしきり鳴いたあとだった。頭もずんずん痛いし、痺れた背中に指先が冷たい。鏡の僕は、収穫し忘れた茄子のようにむくんでいる。水をしこたま飲んで思いっきり吐いて、胃の中が空っぽになったところで、また水を飲んで熱い湯を浴びた。

僕の仕事は、倉庫番だ。家には石造りの旧い蔵が四つもあって、石炭から反物、昆布や米まで収納されている。代々財産持ちだったものだから、僕は、倉庫を管理するという名目で適当な賃金をもらっていた。周りには随分とうらやましがられる。が、仕事らしい仕事をしていたわけではない。何の面白味があるでもなく、そこに居るふりをするばかりの「仕事」がどれほどのものか。うらやましがっている連中は、ちゃんと考えたことなんか無いのだと思う。本当の管理人は別に居たし、とりあえず金を受け取るだけの仕事に、僕は時に負い目さえ感じた。もて余す時間に、最近は専ら聖書をめくる。二番目の蔵の道具入れから見つけたぼろぼろの本だが、装幀が良く、気に入っている。イエスは結構破天荒だし、天は理不尽を突き付ける。荒唐無稽な物語はなかなか愉快で、退屈な毎日にほんの少し色を添えてくれた。それでもしかし居たたまれなくなると、陽の高いうちから酒を飲んだ。信仰のない僕には、酒が一時の安らぎをもたらした。アルコールが身体をめぐると時間の流れも変わったし、心が晴れるような気がした。いや、実際には、何が変わるでもない空白の時間に過ぎないのだけれど。昨晩も、何か気に入らないことがあったのかもしれない。つまらなさをごまかすために、ビールとワインとウィスキーを飲んで、気付いたらひどい恰好で床に転がっていた……
 

(hunton/エマ/非売品)

 

オーケストレーション/文 ナマハゲ、画 sheeno
オーケストレーション(音楽用語):管弦楽法
オーケストレーション(コンピュータ用語):多数のプロセスが独立して動作する複雑なシステムを管理・統合し、首尾一貫した意思決定が提供されるよう制御・自動化する仕組み。
フィクションか誠か、どこまでも続くサーバラックの森の中で男が見たものは。

 

(sheeno/オーケストレーション/非売品)

 

「雨が降ったらどうすんだろうなぁ」
思わず独り呟いていた。ちょうど棺桶ぐらいの大きさの鼠色の長方体が地面に整然と並んで立っていた。サーバやストレージと呼ばれている機器を搭載するラックのようだと直感的に思った。どの箱にも排気用のスロットがいくつも入った金属扉が付いている。いったいこの箱は何本あるのだろうと少し歩き回ってみると、横一列に十二本、通路と思われる二メートルほどの空間を挟んで次の十二本、というようにどこまでもその箱は横一列に並んでいて、さらに奥行きを眺めるとそれと同じものが遠くの丘の上までどこまでも一面に並べられていた。どうやらここは巨大なデータセンターのようだ。だが奇妙な事にここは屋外だ。見上げると雲ひとつ無い青空が広がり、地面には緑の芝がなだらかな丘陵まで広がっている。さきほど思わず口を突いて出た言葉は何百台もの掃除機をいっぺんに使っているような空冷用ファンの騒音にかき消されたが、もとより周囲には誰もいないのでそれは本当にただの独り言だった。
残念な事に、自分がここに居る事情についての記憶が無い。
まいったなと思いながらラックの間の通路をうろついてみると、排気スロットの隙間からは奇麗に高速明滅する赤やグリーンのLEDが見えた。何かしらの目的のためにサーバはきちんと稼働しているらしい。
「ほんと雨降ったらどうすんだよ」
同じ事ばかり繰り返し呟きながら歩いていると、少し先の方のラックの扉にA4サイズのコピー用紙が一枚だけ貼り付けられていて、冷却ファンによる強力なエアフローにパタパタとなびいているのが見えた。近づくと、緑の蛍光ペンを使った雑な文字でこう書かれていた。
「長時間試験中!(HVT2)」
やれやれと思ったが他に何か手がかりを得られそうなものもなさそうだったので、観音開きの扉に付いているノブを回し、ほんとに棺桶みたいだなぁと思いながらも勢いよくそれを開けてみた……


●●●

 

続きは、ぜひとも店内でおたのしみください。

棕櫚展会期中に本誌お求めのお客様には、特製おやつをご用意させていただいています。この機会に、よかったら!
 
【今後の予定】
●11月27日(日)-12月25日(日)マルカフェ文藝部「棕櫚」展2016開催
●12月17日(土) マルカフェライブ×保利太一企画第五弾!
●12月25日(日) 終日貸切/年内営業終了
●1月30日(月) 第十三回マルカフェ美術部
よくあるご質問(Q&A)は、コチラです。
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金土日の週末カフェ(営業時間 11:00-17:00)

 

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