M. L. ステイリー 作 「盗まれた心」(3)
The Stolen Mind By M. L. Staley


*** [盗まれた心 (2)] のつづき ***


「試してみたんですか?」 クエストが疑わしそうに言った。

「ああ、やったとも。ここの実験室で -- ただし、もちろん規模を小さくしてだがな。しかし今は、それを見せている暇はない。問題は、私の弟が、相当な対価を得られるなら、この発明を売ろうとしていることだ。世界に大災厄をもたらすかもしれないとはいえ、いかなる文明国も、この機械のあまりの恐ろしさに、戦争を起こそうという気など永久に起こさないだろうというのだ。私の反対に耳も貸さず、バルカン半島の有力国に売り込もうと交渉を始めている。すぐにも売却してしまうかもしれない。

「だが」 と言って、クレイソン氏が深く息を吸い込んだ、「もう1つの装置を見てくれ。単純なものに見えるかもしれないが、それが、今の状況を何とかするための鍵だ。それを -- われわれ2人で -- 使って、弟の野心を挫いて、とんでもない取引を阻むことが止出来る。われわれ2人なら出来る。私だけでは、実際のところお手上げなのだ」

「プロジェクターを政府に没収させるか、破壊させたらどうでしょう?」 とクエストが言った。「問題を始末するには、安全で確実な唯一の方法に思えるのですが」

「君は分かってないな」 とクレイソン氏が苛立ちを露わにして言った。「弟が売ろうとしているのは、装置そのものではなくて、装置の詳細なのだ。このモデルや私たちが作ったより大型のテスト・マシンが破壊されても -- たとえ弟を終身刑の囚人としてレブンワース刑務所に送り込んだとしても -- それでもプロジェクターを売ることは不可能ではない。

「だが、そのもう1つの発明品、オズモティック・リベレイター [浸透式解放機] を使えば、弟の心を制御し、仲介者を媒介として、実際に心変わりをさせることが可能だ。君を雇ったのは、私の代理人として働いてもらうためなのだ、クエスト君。私の見るところ、君は特異な性質と活力を有する青年のようだ。君には報酬として、金銭と輝かしい未来とを保証する」


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(つづく)