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この島は車であれば1日でゆったり島内めぐりを出来るのがわかった。貸しスクーターに乗って島内を走りめぐっている観光客の姿も目に付いたものだった。植物に疎いわれわれ夫婦にとってガイドさんの説明の奥深さには感服するほどだった。ガイドの矢田部さんに脱帽!
この日は夜の「ナイトツァー」も申し込んであった。せっかく来たのだ、何でも見てやろうで、疲れは二の次。夕食が終わると7時に車が迎えに来た。ナイトツアーの目玉を聞くと、オガサワラ大コウモリと光るキノコ、海辺の夜光虫とのこと。同じ宿の昨夜行った人たちはコウモリが見られなかったと残念がっていた。出発すると暗いながらも道路の状況からコースが昼のコースとほぼ同じなのに気が付いた。打ち寄せる波頭には、ほのかに夜光虫の光るのが見えた。光るキノコがあるという場所にも行ったがなかなか見つけることが出来ない。「あれがそうです」と言われ指差す方をじっと見るが、闇夜に目を凝らしてかろうじてやっとうすぼんやりと薄緑に光るのが見える程度。ぼんやり歩いていたのでは気がつかないほどの弱い明るさである。夜光塗料の光りの方がまだ明るいほどだ。
  (写真中央・光るキノコは小指の爪先もないほどの小ささだった。妻のコンパクトデジカメで写したが、あまりに真っ暗でピントが合わなかった。)
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闇夜の中に幾グループものツアーの人がうごめいていて異様な光景だった。問題は、昨夜は見つけられなかったという大コウモリだったがこの夜は何頭も見ることが出来た。木の実を狙って何頭ものオガサワラ大コウモリが1本の樹に集まっているのをガイドさんがようやく見つけ出し、数メートル離れた場所から見ることが出来た。羽を広げ、バサッバサッと飛ぶオガサワラ大コウモリは大きなカラスのような大きさだった。何年ぶりにこんな真っ暗闇を歩いたろうか。
 期待していなかったが雲が流れ、闇夜に星空が広がる数分間があった。ガイドさんが魔法の杖のようにレーザー光線で星を指し示し、星座の説明もしてくれたのは実に幸いだった。これは偶然の瞬間だったようで同じこの晩、星を見るための「スターツアー」は出発の時刻に雲が出ていたため中止になってしまったそうだ。宿の「ウエスト」に戻ったのは夜の9時半過ぎだった。
 
翌日は母島。
この日は皆既日食の日で7時過ぎから用意してきた観測メガネで皆既日食を見た。テレビの映像からは本土から見える日食の様子が映り、画面と見比べると1000キロ離れているため欠け方が違って見えた。小笠原の皆既日食は一部日食に近い見え方だった。
朝食後、荷物共々宿の車で港に送ってもらう。前日にはお土産も購入していた。小笠原のお土産はそれほど種類が無く「塩」と「パッションフルーツ」やそのジャムが主なお土産になった。後日、「たかが塩」と思って買ったこのお土産の塩を調理に使うと、いつもの料理が格段の味になり驚いたものだった。たかが塩、されど塩と言っていいほど格別の料理に変える塩であった。最終日には土産を買う時間が無いだろうと予想して急いでツアーの間に買出しに行ったものである。この日、朝8時出港の「母島丸」は490トンで「おがさわら丸」と比べると親子のように小さな船である。2時間少しの船旅だがこの間にイルカや鯨を航海中に見かける可能性もある。チケットは乗船の時と下船時用、それと帰りの引換券が港でツアー会社の人から渡された。よく見ると昨夜、ナイトツアーで案内してくれたガイドの「ヒロさん」だった。チケット手配やらガイドやらツアー会社として何役もこなしているようだった。
(母島丸へ乗船する人の中には観光のほか、仕事でやってくる人も)
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船は少し揺れたがそれほどたいしたことは無かった。妻は今回も船酔いには平気でつくづく強くなったものだ。もっともこの船酔いは体調や精神的なものもかなり働くようで、トイレに行くと、便器を抱えてへたり込んでいる若者がいた。若い人ほど弱いようで船酔いする船も人によってさまざまである。私や妻は海釣りの小型船に乗ると酔ってしまう。しかし貨物船に乗っていた時代は日本海の冬の激しいピッチングにもほとんど酔うことは無く、むしろ揺れるほど腹が減って食欲が増したものだった。船酔いはそのときの体調に深く関係するが胃の強い人、酒に強い人は一般に船にも強いようである。そういえば妻は私と生活を重ねている間に、それまでほとんど飲まなかったのに最近では晩酌に薄めのウィスキーなんぞを召し上がるようになった。今に一升瓶を抱いて毎晩飲むようになるのではないかしら、オーッ、怖ッ。
父島から母島の距離は50Km位らしいが途中で前後にまったく島影が見えなくなった。入港1時間前になって母島がぼんやりと前方に見えてきた。ぼんやりと陸地は見えるのだが上は白いガスに覆われている。港が前方に見える頃になってイルカが幾つかのグループに分かれて船に近づいてきた。
数分、歓迎するように付き添ってくれたがそれが今回の航海中で唯一のイルカウォッチングとなった。まっ、イルカを見られただけも幸せと言うものだろう。
(港近くに船が来ると歓迎に現れたイルカ。背びれだけカメラに収める)
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母島には数えるほどの歓迎の人と、やはり警察官が乗客たち一人一人を降り口で見ていた。やましさに身に覚えのある犯罪人にとって接岸地点にパトカーが停まり、警官が待ち構えているだけでもビビッてしまうことだろう。警察の方、よく見張って下さいね。