映画『イエスタデイ』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『イエスタデイ』

『イエスタデイ』

(上映中~:J-MAXシアターとやま)

公式サイト/https://yesterdaymovie.jp/

 

イギリスの田舎町サフォークで暮らすシンガーソングライターのジャックは、

幼なじみの親友エリーから献身的に支えられているものの全く売れず、

ミュージシャンとして成功する夢を諦めかけていました。

そんなある日、世界規模の瞬間的な停電が発生し、

同時にジャックは交通事故で昏睡状態になりますが、目を覚ますと・・・。

あの誰もが知るバンド「ザ・ビートルズ」が存在しない世界になっていました。

彼らの名曲を覚えているのは世界でただひとり、ジャックだけ

 

設定がよく出来てます。日本に似たような話の漫画があるそうで、

それはネットで調べた程度なので適当なことは言えませんが、

監督のダニー・ボイルや脚本のリチャード・カーティスが、

その漫画に影響を受けたということはなさそうです。知らんけど(^_^;)

なぜビートルズの無い世界になったのか、そこは不明なんですけどね。

 

ポイントは幾つかあって、ジャックはなかなか以上に歌が上手い。

彼を演じるヒメーシュ・パテルが実際に歌っています。

そんなジャックが誰も知らないビートルズの数々の名曲を歌うのだから、

ちゃんと聴いてくれる人は、そりゃもう素直に感動するわけです。

ちょっとぐらい歌詞があいまいでも、誰も気づかず「良い曲」だと♪

でも、ジャックの両親(人としてはイイ人ですよ)などもそうですが、

歌手としての彼を認めていない人たちは、最初からまともに聞いてない。

 

この状況、私も仁楽斎として何度も経験しています。

本作の予告編を観たときに、

「同じように桂枝雀師匠がいなかったとしたら、僕も爆笑王に・・・」

みたいに少しでも思った自分が馬鹿でした。仁楽斎じゃ駄目なのよ。

そもそも、この映画の本質はそこではなかったですし。

 

さて、なんだかんだでジャックはスターになっていきます。

まずは、エド・シーラン(本人が演じています)に認められたことが大きい。

彼に請われて、ジャックはツアーの前座を務めるようになりました。

そして、打ち上げか何かの席で即興作詞作曲対決を持ちかけられ、

ジャックは「The Long And Winding Road」を歌いました。

素直に負けを認めるエド・シーラン。でも、勝ったのはジャックでもない。

 

この映画、そこかしこにビートルズに対するリスペクトに溢れています。

タイトルは『イエスタデイ』ですが、実はそれはそんなに歌ってません。

が、私程度の知識でも存分に楽しめる、各曲の上手い使い方。

ちゃんとシーンに合わせて選曲されているので、歌詞が心情に重なります。

そして、彼を決定的にスターダムにのし上げていくのは、

ロサンゼルスの女性プロモーター、つまりはアメリカ人だという面白さ。

 

あと、興味深いのは、単純にビートルズが無かった世界なだけでなく、

であるからして、ビートルズの影響を受けたオアシスも存在しなければ、

コカ・コーラやタバコ、そして、某人気小説も世界から消えていたという・・・。

日本のミュージシャンも何組かいなくなってる可能性はありますね。

「ずうとるび」は別のグループ名だったでしょうね。

ちなみに、ジャックが「ザ・ビートルズ」をネット検索したら、

「甲虫」と漢字で出てきました。たしか、そうだったように記憶してます。

 

さて、故郷サフォークを離れ、エリーとも疎遠になり、

しかし、大スターになったジャックは常に罪悪感を背中に抱えています。

凄いのは自分ではなくビートルズだと分かっているから。

でも、求められれば、まだまだ名曲はいっぱい知っているわけで・・・。

そこに、自分以外にビートルズを知る2人が現れました。

手には黄色い潜水艦のおもちゃを持っていたのがツボに来ました。

 

この2人はジャックを責めるのかと思いきや、逆に感謝していました。

「ビートルズの曲をこの世に残してくれてありがとう」と。

ジャックもビートルズの話が出来る人に出会えて嬉しかったりします。

こういう性善説的な描き方に、観ていて心が和みました。

 

が、2人はこうも言いました。「ビートルズの曲を正しく使って欲しい」と。

私、「正しく使う」の意味が最初は分からなかったのですが、

ジャックの決断に納得しました。確かにそれは「正しい使い方」だ!

ロサンゼルスのプロモーターは泡吹いてましたが(^_-)-☆

 

その決断の前に、ジャックはある人物に会いに行きます。

そうか、ビートルズがいないということは、

今も“彼”(書かなくてもバレてますね)が生きていても不思議じゃないんだ!

ロバート・カーライルが演じています。もう“彼”そっくりでした!

ジャックと“彼”の会話こそが本作のクライマックスとも言えます。

 

ずっと設定と展開の面白さについて書いてきましたが、

前述した通り、この映画の本質はラブストーリーでした。

終わってみれば、ジャックのオリジナル曲「サマーソング」も、

そんなに悪い曲じゃなかったような・・・。でも、売れないか(^_^;)

最後にああなるなら、どこかで「いとしのエリ―」も歌えば良かったね♪

 

すっかり気分が良くなって、エンドロールに流れる「ヘイ・ジュード」、

サビの部分は一緒に声を出して歌いそうになりました。危ない危ない(^_^;)

でも、ボヘミアン・ラプソディの時のような応援上映会、

本作でもやっても良いんじゃないかな~と思いました。

すいません、ネタバレ書きまくりですね。

最近、それを気にするのが面倒になってきたんですよ。