映画『鈴木家の嘘』
『鈴木家の嘘』
(上映中~1/17:J-MAXシアターとやま)
引きこもりだった鈴木家の長男・浩一が自室で自殺しました。
発見した母の悠子はショックのあまり記憶を失って入院してしまいます。
一月後、目を覚まして息子のことを気にかける悠子に家族は嘘をつきました。
「浩一は家を出て、アルゼンチンで働いている」と。
『マダムのおかしな晩餐会』とはタイプの違う嘘ですね。
とっさについてしまった。ついた以上は継続しなければならない。
悠子は息子の自殺発見直後に包丁で手首を切っている状況から、
医師は「あの場合、あの嘘は良い判断だった」なんて言ってます。
ということで、あの手この手でアルゼンチンネタが放り込まれていきます。
予告編で観た感じではコメディタッチだったんですが、本編はそうでもない。
作品全体は八割以上、辛気臭い雰囲気で進んでいきます。
別にそれが嫌だったわけじゃないですが、ちょっとアレ?って感じ。
鈴木家は浩一が自殺する前からぎくしゃくしています。
稚拙な論評をするなら会話不足。お互いのことが理解できていません。
どこの家族でもそんなもんかもしれませんが、そうじゃない家族もいます。
と、長らく、そしてこれから先も一人暮らしの私がほざいてみる・・・(^_^;)
でも、これは家族に限らず、会社や学校、社会全体に言えることですが、
「言わなくても分かる」なんてことは実はない!と僕は思っています。
はっきり言われないと、その人が何を思っているかなんて分からないんです。
察するなんて無理です。そして、察する必要もない。たいてい間違うし。
よく「喧嘩するほどの仲の良さ」っていいますよね。
喧嘩するってことはお互いが本音をぶつけ合うってことだから、
その後、分かりあえることも多いのではないでしょうか。
ちなみに、片方が一方的に言っちゃうのは喧嘩ではないですね。
浩一の生前のことを知るために、父親がソープ嬢に会いに行きます。
そこでトラブルが起きるのですが、それも先にちゃんと言わないからです。
息子の自殺は言いにくいかもしれませんが、それを言いに来たのでしょ。
一事が万事そうなんです。で、はっきり言わないくせに嘘はつくのです。
自殺した家族の集まりの会があって、長女の富美が終盤に激白します。
そこでやっと彼女の本当の気持ちが分かった。と思ったら・・・。
言ったら言ったで、それが嘘じゃなくても本心だとは限らない。
そこは難しいところ。とまぁ、そんなことを考えながら鑑賞しておりました。
この富美を演じた木竜麻生(きりゅうまい)さんの演技が新鮮でした。
近くで見ると別人ですが、遠目でパッと見た雰囲気は能年さんぽいかな。
とにかく、本作の鑑賞での一番の収穫は木竜さんでした。
あと、大森南朋さん演じる悠子の弟はコメディ的立ち位置で面白かったです。