映画『日日是好日』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『日日是好日』

日日是好日

(上映中~:J-MAXシアターとやま、TOHOシネマズ高岡))

 

「本当にやりたいこと」を見つけられず大学生活を送っていた20歳の典子は、

母からお茶を習うことを勧められ、最初はやりたいとも思わなかったのですが、

従姉妹の美智子が乗り気だったので、流されるまま茶道教室に通い出します。

和室には「日日是好日」と書かれた額が掲げられていまして・・・。

 

森下典子さんが通った茶道教室での日々を綴ったエッセイの映画化でして、

映画もエッセイのように日々が綴られて24年が過ぎていきます。

最後には「日日是好日」とはなんぞや?・・・を感じ取ることができます。

「にちにちこれこうじつ」と読むのですね。

 

茶道教室の先生は「ただものではない」という噂の武田のおばさん。

樹木希林さんはやはり素晴らしかった。改めてご冥福をお祈りします。

武田先生は言葉は優しいのですが、茶道をきっちり教えてくれます。

最初に教えてくれたのは、「先に“形”を作り、あとから“心”が入る」ということ。

 

ハウツー映画ではないので、茶道にそう詳しくなれる映画ではありません。

ただ、深いところまでは分からなくても、世界を垣間見ることはできました。

なんで「の」の字?なんで「ゆ」の字?私も典子や美智子と同じ疑問が・・・。

でも、理屈じゃないんですって。うん、そういう真理ってあるかもしれません。

 

典子は真面目な性格で理屈っぽい。おっちょこちょいとも言われていました。

特徴はその程度。特に趣味もなく、いってみれば“普通”のお嬢さんです。

黒木華さんが演じてます。特別じゃない感じが本当によく出てます。

樹木さんと黒木さんの共演(競演?)シーンはやはり見どころです。

 

武田先生がお茶をいれるシーン。緊張と緩和の両方を感じました。

典子は徐々に成長していきます。後に先輩にもなります。

となると、黒木さんは段階を踏んだ上手さを表現しなくてはいけません。

また、典子は成長しては壁にぶつかって・・・。俳優さんはたいへんですね。

 

典子は茶道を続けていますが、好きなのかどうかが自分でも分かりません。

美智子に「典子は茶道が好きでしょ?」と言われた時は即座に否定します。

でも、日々いろいろなことがあって、今日はさぼろう!と一度は決めても、

結局は教室に行ってしまいます。そうしないと落ち着かないんです。

 

これ、全く同じとは言いませんが、私にとっての「落語」に近いかも。

私が最近よく「落語嫌い」と言っているのは半分以上はネタですが、

では大好きなのか?と聞かれたら、実はそれほどでもありません。

でも、もうやめてしまおう・・・とはこれっぽっちも思わないんです。

 

物語の中にフェリーニ監督のという映画の話が出てきます。

典子は幼い頃に、父に連れられて映画館でこの“名作”を観ました。

子供に『道』を観させるとは、このお父さんやるな!って感じもしますが、

当然、当時の典子には理解不能。でも、大人になって観なおしてみると・・・。

 

茶道に限らず、映画に限らず、人生とはそういうものなのかも・・・。

「日日是好日」の積み重ね。茶道は難しいようで、日常的な一面もあります。

エンドロールが流れたときに、お茶を一服いただいたときのような、

「ふ~」と心地良いひと息をつきたくなる、そんな素敵な映画でございました。