東京藝大卒の声楽家(ソプラノ)・声楽講師の緒方麻紀です。
横浜で、音大受験生や大人の方へ向けた声楽レッスンを行っています。
私自身も「声が小さい」「本番でうまく歌えない」と悩んできたからこそ、
同じような不安や葛藤を抱えている方の力になれたらと思い、
声楽に役立つヒントをお届けしています♪
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レッスンをしていると、
「この人の声が好きで…」
「この人みたいに歌いたくて…」
「宝塚歌劇団や劇団四季が大好きで…」
そんなふうに、憧れの存在があって私のところに来てくださる方が多くいらっしゃいます。
それは、とても素晴らしいことです。
ですがその一方で、憧れの歌手と、まだ習い始めたばかりの自分自身を比べてしまい、
「全然あの人みたいに歌えない…」
「どうして私はこんな声なんだろう…」
そんなふうに、自分の声を否定してしまう方も少なくありません。
私自身も、
「あの人の声、みんな好きな声だよな~羨ましい!」、
『自分の歌声にはまるで価値がないのではないか』と、
思ってしまっていた時期があります。
◆ 憧れは時に、自分を苦しめる
歌を学び始めたばかりの頃こそ、憧れの歌手の存在はとても強烈で、輝いて見えるものです。
でもその光がまぶしすぎて、今の自分とのギャップに苦しんでしまうこともあります。
けれど、憧れのあの人も、最初から今のように歌えたわけではありません。
何年も、何十年もかけて積み重ねてきた経験と練習、失敗と発見の積み重ねがあるからこそ、あなたの心を震わせる今の姿があるのです。
◆ 自己ジャッジの癖が、声を閉じ込めてしまう
憧れの歌手と比べて、「うまく歌えていない」と感じるたびに、自分を責めてしまう。
その繰り返しで、“自己ジャッジ”が習慣になると、声そのものが出しにくくなります。
喉も心も固くなり、自由さを失ってしまうのです。
せっかく良い声で歌えているのに、先生の言葉よりも自分の“ダメ出し”を信じてしまう……。
これは、本来の学びの流れを止めてしまう、一番の原因かもしれません。
◆ 「今の声」も、あなたの大切な一部
未完成な声にも、ちゃんと価値があります。
それは、“これから伸びる声”であり、“変化する前の大切な素材”。
だからこそ、今の自分の声も、大切にしてあげてほしいのです。
「下手でもいい」のではなく、「まだ途中なだけ」。この違いは、とても大きいのです。
◆ 同じ声にはならない。だからこそ面白い
憧れの歌手のように歌える日が来るかもしれません。
でもそれは、自分を否定し続けることで得られるものではなく、「今の自分を大事にする練習」の先にあるものです。
そもそも、人間は一人ひとり違う“楽器”。
憧れのあの人と、まったく同じ声にはなりません。
そして、それが自然であり、むしろ面白いところでもあります。
あなたにしか出せない声、あなたにしか歌えない歌があります。
それを磨いていくことこそが大切なのです。
◆ 私自身の話
私自身も、歌を始めた頃はカルメンに憧れて、メゾソプラノの声を目指していました。
でも、始めてみたら全然違いました(笑)
また、大学でも、周りはとても素晴らしい歌声を持っている人ばかり。
そんな環境で勉強できることをとても有難いと思いながらも、
やはり自分と周りを比べてしまい、落ち込む日々でした。
それでも今は、自分の声を研究することがとても楽しくて、日々の発見が喜びになっています。
◆ 感動は「背景」に宿る
誰かの歌に感動する時、それは「誰にでもできること」ではないからこそですよね。
オリンピック選手にしても、ただ勝ち負けの結果ではなく、そこに至るまでの厳しい練習や悔しさ、ケガや乗り越えた経験…。
その背景にこそ、その人の“力”や“魅力”が宿っていて、人はそこに心を動かされるのだと思います。
◆ 「少し前の自分」と比べてみて
「上手くいかない…」「どうしてあの人みたいにできないんだろう…」
そう思うことは、誰にでもあります。
でもそれは、もっと上手くなりたいと、“あなたが真剣に向き合っている証拠”です。
練習している時は、「憧れのあの人」とではなく、「少し前の自分」と比べてみてください。
真剣に取り組んでいるあなたなら、きっと少しずつでも前に進んでいるはずです。
◆ 最後に
どうか、焦らないでください。
憧れの声も、あなたの声も、どちらも素敵なものです。
少しずつで大丈夫。あなた自身の音色がどんどん輝いていきますように
緒方麻紀