私には80歳になった父と81歳の母が
います。
訳あっていい歳してこの数年、私は両親と
向き合うことをやめていました。
けれど、気がつけば2人とも80を超え、
老いた体にムチをうってでも、
私を自分たちの娘として受け入れ続けて
くれていました。
私たち家族三人は当たり前のことですが
みんな人間です。
三者三様の人間です。
でもなかなか「三者三様」であることを
お互いが認め合わなかった気がします。
けれど、この数ヶ月、少しずつではありますが
やっと何かが動き始めている、認め合い始めて
いる。
そんな兆しを感じていました。
昨日、父に付いてくれているケアマネさんが
引き継ぐ人との顔合わせのために
やって来てくれました。
彼女はケアマネさんとして本当に優秀で
まだ半年のお付き合いですが、私の頭では
思いつかないことをお願いしなくても
うちの家族が生活しやすいように、
いつも先回りしていろいろ手配してくださるし
無理なお願いも業者と交渉して通してもらえる
よう、努力してくれる人。
昨日もたまたま玄関先で会い、ちょっと
父の状況を話して、こう振舞って欲しいと
お願いしたら、すぐ状況を察して父が
元気が出る方へ出る方へ話し続けながら
次に見てくれるであろうケアマネさんに
父の状況を引き出し、示してくれていました。
「お父さん、すごいんだよね!
カラオケが趣味なんだよね!歌いに行った?」
とか、
「絵も描くんだよね!すごい才能だよね!」
とか、いろいろやる気がでない父を奮起させる
べく話し続けてくれたので、
私は父が2年前に描きかけてやめてしまった
ほおづきの絵を出しました。
「ここまで描けているのにまだ途中なんだって。
描きたい気持ちはあるみたいなんだけど
なかなか筆が進まないのよね」
と父に問いかけながらケアマネさんに見せると
「お父さん!すごいよ!
あと少しなら仕上げようよ!?
そうしたら額に入れて◯◯(父が通うリハビリ
センター)に飾ってもらおうよ!」
とニコニコしながら、父に力づけてくれました。
父は「無理なの…描けないの」
と弱気な発言でしたが、絵を褒められて
うれしそうな顔。
私もまた描き出してくれたら、とは思っていた
けれど、目標もなく描けと言われても
なかなか筆が進まないのは、自分に重ね合わせ
わかる気がして、強くは進めていませんでした。
一通り話が済んで、「また来るからね、お父さん!」
と言って彼女ともうひとりのケアマネさんは
帰っていきました。
そして私が少し外に出た間に父も事務所から
自分の部屋に帰ってしまいました。
今日もあまり話せなかったなぁ。
と思いながら仕事をしていたら。しばらくして
彼女から電話がかかってきました。
「今、リハビリセンターに電話して聞いたんです
けれど、お父さんの絵、完成したら飾って
くれるそうです。
なので、お父さんに応援してるから頑張ってって
伝えてください」と。
思わず「ありがとう!私も一緒に描きます、
自分の絵!私と一緒に話ながら描いてくれたら
嬉しいもの!!」
とお礼をいい、父に話しました。
「ホントにいいケアマネさんに出会えて
よかったね!
リハビリセンターまで確認してくれたんだよ?!
一緒に描こうよ!」
父は相変わらず、「うん」とは言わなかった
けれど、目にうっすら涙が見えた気がしました。
父の歳になると、友人に連絡をとっても
どちらかと言えば悲しいお知らせしか
入ってきません。
そして自分の体調もなかなか自分の力だけでは
コントロールしづらくなっている。
そんな時、一番最初にお世話になったケアマネ
さんが、こんなに素敵な人で本当によかった。
父だけじゃなく、私まで彼女に揺り動かされて
いたのです。
親と向き合うことが、どれだけ大切で、
実は楽しいことだということを彼女は教えて
くれました。
最近私が事務所の中に自分の作品をたくさん
飾ったこと。
快く思っていない人がいることも知っていたので
私はずっと内心ドキドキでした。
実は父も嫌なのではないかと。
でも数日前
「お前がさ、たくさん描いた絵を飾ったでしょ。
パパ、あの中にいると気持ちがいいの」
って言ってくれた直後、また父が絵を描くことを
アシストしてくれる人がいる。
いや、この数年があったから今がある。
やっとここまでたどり着いた。
先日ピンクで書いた「愛」の字は
親に向けての愛であることも確信できた昨日。
一緒に描こうね、パパ☆




