収録の時には、もう出血も収まって腫れもなかったから、メンバー以外は知らない秘密になった。

帰り支度をしていたら、当然のように松本が智君のところに来て
〔このあと、すぐに行ける?〕
って聞いていた。
自分で撒いた種とはいえ、こんな時にアルコールはダメだろ

「それは、やめた方が良いんじゃないかな?」
思わず本音が口をつく
〔へぇ、そんなこと言えた義理かな?誰がそうしたんだよ〕
松本は即、挑んでくるような眼をしてきた。
殴りたかったのは、お前の方なのに……
『やめてよっ!もうっ……翔君だってやりたくて、やったんじゃないんだから。翔くんを責めないでよ』
珍しく智君が、松本に噛みついた。

再び楽屋は騒然となった

〔丁度いい…〕
やがて、ポツリと松本が口を開いた
〔大野さんさ、前から感じていたんだけど……翔さんに甘すぎない?リーダーがこんな差別的なことするんじゃ、うまく行くものも、うまく行かないよっ!これから嵐のことうまく回せるの?今の(嵐の)状態をどう思っているのさっ〕
と、手にしていた新聞を叩きつけた。

松本だけじゃない。
みんな口にはしなくても感じていた。
俺たちは、デビューしてもう六年が過ぎようとしているのに、どうしてもイマイチの認知度で、数字も出せていなかった。
先輩のKinKi Kidsや、
V6に比べたら、かなりの差がある。
デビューしたら、人気者になれると思っていた松本は、不快感を露にしていた。
だけど、それと今日の智君のことは別だろ?
そう言いたかったけれど

『不満はこのあと、ゆっくり聞くよ。だからもう行こうか?みんな待たせてるんだろ?』
松本の肩に手を置いて、
智君が松本を覗き込む様子を見て
油に火を注ぐような事はやめた。


「さとし君……行くの?」
智君が、余計なことを言うなとばかりに、俺を睨んだ
『飲み物は、アルコールだけじゃないよ。さ、じゅん……いくよ』
〔お疲れっ!〕
振り向きもせず、松本が出てあとに智君が続いた。


「みんな?……じゅん……」


<相変わらず不器用な人ですね。>
腕を組んで二宮が、
呆れたように俺を見ていた
〈お…おいっ!ニノぉ……やめろって!〉
慌てて相葉が止めに入る
<なぜ、自分も行くと言わなかったんですか?あの場合、自分が大野さんなら一緒に行って欲しかったと思いますよ。>
〈翔ちゃんさ、気にすることないよ。ただのシャーク団の飲み会なんだから〉

まだ、あの舞台の連中と付き合っていたの?
舞台に出なかった相葉だって知っているのに、なんだ、このaway感は………

「シャーク?ジェット団ならわかるけど。何で智くんまで?」
<あれ?もしかして……知らないんですか?Westside~からずっと、切れる事なく、食事会は続いてるんですよ。
メンバーだから、てっきり知ってるものだと…
だってさ、
俺たちだって、誘われたことありますよ。>
「それは、当然リーダーは松本?」
<そうです。その仲間には『潤くん』って呼ばせてますよ>
…………

〈し、翔ちゃんさ、気にすることないよ。おーちゃんだって、好きで…じゅん……って言ってるんじゃないからさ。〉
「何で知ってるの?」
〈おーちゃんが、『じゅん…って呼んでくれ。って言われたんだ。』って言ってたから〉

そんなことすら、知らなかった。
そう呼べと言われたからって、
即、恋人みたいな呼び方するか?
悔しいっ!
もう、頭の中が、ぐちゃぐちゃだ……


お疲れ~
ふと………
気がつくと
バックを持った二人が出ていった


バタン………