20代から30代のころ、仕事関係の会合に行くと、たいてい聞かれました。

「どうして結婚しないの」

いまは、セクハラやパワハラになるから、そんなことは言われないかもしれませんが、20年以上前はそんな感じでした。就職試験の面接でも、結婚するのか彼氏はいるのか、そんなことばかり聞かれました。

 

仕事関係の会合で、仕事の話がしたいのに結婚のことばかり言われて面倒になって、

「いますぐ結婚して、子どもを産んで日本の少子化に一石を投じたいと思っているのですが、相手がいません。どこかにいい人はいないでしょうか」

と返事をしました。このくらい言えば、相手が驚いて、それ以上聞かれずに済むと思いました。

 

結婚すると、「子どもはまだなの」と言われます。

一人産んだら、「二人目はまだないの。一人っ子はかわいそうよ」と言われました。

 

二人産んだ人は大丈夫かと思ったら、そうでもなく、二人の子をもつ知人は「三人目はまだかと言われる」と言いました。彼女は三人兄妹で、親から三人産むように期待されてプレッシャーだそうです。

 

心ないことを言う人は、どこにでもいますが、気にしなくてもいいと思います。

なぜならば、よく知らないで言ってるからです。

 

たとえば、「どうして結婚しないの」と言う人は、たいてい結婚しています。結婚したら、結婚しない人生は経験できません。その人は、結婚しない人生のよさも苦労も知らずに言っているのです。

 

同じように、「子どもはまだなの」と言う人は、たいてい子どもがいます。子どもをもったら、子どもをもたない人生は経験できません。

 

「経験は未経験という経験を失うことで、プラマイゼロだ」と澁澤龍彦さんの言葉にあるそうです。(背中の正面さん、コメントありがとうございます)

 

たしかに、結婚する、子どもをもつ、などの経験することはプラスのことと思われがちです。でも、考えてみると、経験をすることは、経験しない人生を失うことでもあります。たとえば、私は結婚して子どもをもちましたが、同時に、結婚せず子どもをもたず仕事中心だった生活を失いました。

 

人はひとつの生き方しか選べません。ほかの生き方を選んだ人が批判的なことを言ったとしても、知らずに言っているだけなので、あまり意味がないと思います。

 

だから、心ないことを言われても気にしない。

どの生き方にも、よさと苦労があり、本人がそれを選んだのなら、いいと思います。

 

 

 

分数をひつくり返し天の川 秋山裕美

(「炎環」2018年11月号)