さぁ、天保銭で谷啓のヘンチョコリンな森の石松になろう！
植木等が追分三五郎に扮して、「無責任男」として要領よく任侠道を渡るという設定であるが、笑いの沸点やツボが現在とは大幅に異なるため、今見て面白いかと言われると正直どうかなという気はする。清水次郎長とその乾分の物語に関する知識がないと理解できないシーンもあるので、なおさらである。
脚本は東宝で黒澤監督の「生きる」のほか、マキノ監督の「次郎長三国志」を手がけた小国英雄なので追分三五郎のキャラクターについては熟知しており、植木等をこの役にしたのは正解であろう。
が、個人的な感想であるが、日活や東映と違って同じ喜劇でもスラップスティックなギャグは全くなく、見ていて笑いが起きない。スクリーンの中の植木等が高笑いするたび、虚しさが広がっていく。もちろん演技だが、こういうキャラクターを大嫌いな人もいるだろうなと思ったりもする。
ちなみに脇を固める東宝俳優陣は平田昭彦、大村千吉、藤木悠、田崎潤（東宝版「次郎長三国志」の桶屋鬼吉）、塩沢とき、土屋嘉男と結構豪華。
DVDのパッケージ写真には植木等が追分三五郎ではなく、劇中で谷啓が演じた森の石松の格好に扮したものも掲載されているが、詳細は不明。
監督 坪島孝 脚本 小国英雄 東宝作品 1966年公開 カラー94分
発売元 東宝株式会社 2014年 TDV24678D 坪島監督オーディオコメンタリー収録