無理して笑わなくてもいい。
海ちゃんにはその言葉が
ずしんと重く、けれど優しく響く。
きっと今、無理して笑っているのは
自分だけではない。
娘の渚ちゃんもそうで、
だけど時々耐えきれなくなって
不登校になったり、無口になったり
急に体調を心配して手伝ってくれたり。
海ちゃん
「でも、、無理して笑わないって
難しいですね、、
どんよりした顔をするのも
何も知らない子供達にとっては
笑ってないママが嫌でしょうし、、」
女性医師
「確かにそうですね。
でも、お子さんはそういうの
見抜くはずなんです。
ママが心から笑っているのか
無理しているのか。
だから、心から笑える時に笑って
辛い時は、辛いって言って
いいと思いますよ。」
女性医師とはそんな話をして
また、薬の処方をしてもらった。
それから海ちゃんと入れ替わりで
渚ちゃんが診察室に呼ばれて
海ちゃんはそのまま
カウンセリング室に入った。
カウンセラーさん
「海さん、こんにちは。
あら、髪型変えましたね。」
海ちゃん
「えっ、すごいですね。
そうなんです。
ちょっと気分を変えたくて
とはいえっても
さすがに白髪が増えてしまって
白髪染めのついでに、、、」
カウンセラーさん
「いいことじゃないですか。
本当に気分が落ちてる時って
自分の身なりなんて
気にならないくらい
落ち込むこともあるので。」
海ちゃん
「そうですよね。」
それから海ちゃんはまた、
いくつかの質問を受ける。
今の気持ちはどうかとか
少しだけ睡眠時間が増えて
考え方に変わりはあるかなど。
海ちゃん
「正直自分のことで言うと
あまり気持ちの変化というのは
まだないんですけど
今日、娘が受付に来てから
カウンセリングを受けたいって
言い出しまして、、」
カウンセラーさん
「はい、伺ってます。」
海ちゃん
「それが私としては、娘の中に
何か変化があったのか
それとも辛すぎてなのか
わからないですけど
誰かに話したいとか聞いてみたいとか
思ってくれるようになっただけで
ちょっとホッとしてます。
この後、お願いします。」
それから海ちゃんは渚ちゃんについて
一生懸命話し始めた。
カウンセラーさんはその間
ずっと穏やかな笑顔で聞いてくれる。
しかし
カウンセラーさん
「海さん、そろそろストップ」
穏やかな笑顔のまま、手をポンと叩く。
海ちゃん「あっ」
カウンセラーさん
「ずーっと、
お嬢さんの話をしてくださってますね。
でもそれは、お嬢さん本人から
ちゃんと伺いますから
海さんは、海さんの話をしましょう。
海さんがお嬢さんのことを
どれだけ愛しているのかは
よくわかりました。」
海ちゃん
「すいません、、ちょっと私
過干渉なんですかね、、
そんなつもりなかったんですが
今回の夫のことで特に
娘のことが気になって気になって、、
もしかして、
娘のことを苦しめてるのは
私なんですかね。」
カウンセラーの方は何も言ってないが
海ちゃんは勝手にまた、
自分を責め始める。
カウンセラーさん
「海さん。そうやって自分のことを
責め続けるのをやめましょう。
私はただ、海さんの話をしましょうと
声をかけただけですよ。」
海ちゃん
「確かに、、そうですよね、、
でも私って、、私のことって、、
なんでしょうね、、」
カウンセラーの方が話しているのは
全体の3割程度
あとはほとんど海ちゃんが話していて
日常では今回の件をこんな風に
自分がたくさん話すことなどない。
こういう時間がきっと
心の整理に、繋がってゆくのだろう。
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