これは遺書じゃないの。


ただ、まっすぐな闇を見据える勇気のない

愚かな告白。


連れ去ってなんて願える歳でもない。


でも夢みたい。


そして自信を持ちたい。


わたしの国でさえわたしはきらきらしてない。

でも愛されてた。


さあ話そう。私の生まれた国の話を。

さあ嘲笑おう、愉快な国を。






五歳の頃の夢は、一人で生きていくことだった。

きらきらした夢をみることを禁止されていたから、


3流の大学に通って、OLになって、結婚するものだと思っていた。

海の図鑑を読むのが好きだった。

特に貝のページが好きで何度も見た。

その図鑑には2ページしかなかったから、私の海のあこがれはそこで止まった。


今思えば、口に出して言えば良かったのだ。

「珍しい貝殻や魚がもっとみたい。図鑑が欲しい」と。


欲望を口に出すことを憚られた、そもそも

口に出すという概念がなかった。

私の家に権利がなかった。


父も母も、私に希望があるなんて

思ってもみなかったのだ。


私の唯一のきらきらした5歳児の思いでは、

おとうさんに早く走るこつを教えてもらったこと。

庭の木から家の門までの短い距離を、

飽きずに走った。


おとうさんにも誉められたし、おとうさんのきらきらした顔が見えた。








でも何故だろう。

何故5歳のわたしは、あんなに死にたかったのだろう。


わたしは記録に残すことが好きじゃなかった。


唯唯一残っていたのは、

わたしと、前世のわたしを想像した女の子との会話のノート。

交換日記みたいなものだ。


12歳の頃、わたしはそれを心の支えに生きていた。

「彼女」だけが私を受け入れて、理解してくれた。


しかし机を見たら、それがなくなっていた。


なくなっていたのだ。


母に聞いてみた。知らないか、と。


「日記みたいなやつ?     捨てたけど     」







わたしはじぶんのこころを綴ったものを見られたこと

ひとりで妄想をしてじぶんを励ましていたことを知られて、

恥ずかしさのあまり責めることができなかった。



でも本当は知りたい。いつまでも知りたい。


あのときのわたしの心が、どこにあったのか

あの頃から自分が成長できたのか、

知るすべはあの日記だけだったから。


作文なんて、おとなの喜びそうなことを書いた。


だからあのころのわたしの本心の記録はどこにもない。



13になって、初めて、記録を


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黒い影


それがいとおしい。

理解されない。


それも嗤える。


戻したい。戻れない。戻らない。


何も信じて

でも何も信じていないわけではなくて


猫、黒いあなたに惹かれて

ただ漫然とあなたを信じる。


朝がくれば


あなたを忘れる。猫はそれも知っている。


ただ受け止めてくれる


それだけの存在。


いつか、あなたを必要としなくなる日まで


ずっとずっと愛してる。    猫


わたしの猫。


漆黒の髪に、

うす闇色の眼。

白い肌ではないけれど、
お日様を浴びた事のある肌。

筋肉が美しく流れる足。
指。

瞳は濡れてるようなのに、唇はかさついてる。

だけどそれも愛おしい。

ずっとずっといて欲しい。

たとえ 運命に翻弄されただけであっても。
ずっとずっと 離せない。

あなたが私の