『love game 4』
あの日
バイト帰りに弱った捨て猫を見つけたが連れて帰るわけにも行かず、しばらく箱の中の小さな体を撫でながら悩んでいると
「もしかして、捨て猫ですか?」
突然後ろから見知らぬ女性に声を掛けられた
「…たぶん」
すぐ後ろに人がいることに気がつかなかったなんて俺らしくもない
「わぁ、ちっちゃい。でもずいぶん弱ってますね」
「ええ」
20代半ばくらいに見えるが会社帰りにしてはずいぶん遅い時間の気がした、もう終電が近い時間だ
「わたしすぐ近くでペット美容室やってるんだけど、しばらくうちで面倒を見て元気になったらお客様の中で引き取ってくれそうな人を捜してみましょうか?」
思いがけない言葉に驚いた、と同時にほっとした
「いいんですか?」
「だってあなたは連れて帰れないんでしょう?わたしも猫は大好きだし、ほっとけないもの」
「ありがとうございます」
とりあえず店の名前と場所を聞いて子猫を託し、ようやくアパートに帰り着いた頃にはすでに日付が変わろうとしていた
明かりのついていない部屋に入ると何もする気になれず、着替えだけ済ませると畳の上に横になる
疲れ過ぎていると食事を取るのも億劫になるし、減量になれてしまって食べたいとも思わなくなっていた
彼女が作ってくれた物以外は
どんなにひいき目にみたって彼女の料理の腕前がプロの料理人並だとは思わないし、そんなに凝った料理ばかり作ってくれるわけではないけれど
いつも俺の体のことを考えて栄養のバランスが良くて美味しい物を、という彼女の気持ちがこもった食事が美味しくない訳がなく
少し、甘え過ぎている気がした
決して彼女の気持ちが重いとか、そういうことではなくて
しばらくひとりで頑張ってみたいと思ったが、そろそろ限界かもしれない
でも
小さな卓上カレンダーに記された特別な日付
せめてその日までは無理をするだけの理由が俺にはあった
continue(次回に続きます)↓