言い出せない | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

「一の姫がいるから心配ないわよ」



思い出した記憶に、唇をかみ締める。


「さっすが、姫さん」


「姫・・。貴方に仕えることが出来て幸せです」


私に告げる言葉はとても嬉しくて、心が温かくなる。

思わず笑みが溢れてきて

私は必要とされているんだって思って。


けれど、思い出す幼い記憶は

すごく切なくて。


「千尋?どうしました?」


気がつくと、みんなが私を不思議そうに見ているのが分かる。


「なんでもない。疲れたかな?」


「戦続きでしたからね。先にお休みになられたらいかがでしょうか?」


布都彦の言葉に、素直に頷き

みんながいる場所から、自室へ逃げるように戻った。


「龍の声が聞こえないなんて、我が子とは思えぬ」


母様の声が聞こえる。

龍の声。

皇族の最後の生き残り。


「これで、いいの?」


弱気な声が部屋に響く。

膝を抱えうずくまり、涙が溢れる。



「姉様・・・・。」




思い出す、穏やかで優しい、美しい一の姫。


龍の声すら聞こえない私よりもこの国の女王に相応しい姉様。


私はそんな姉様のようになれない。

私は、みんなをこの国を守れるだろうか・・・。
















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あとがき

ヒロイン「千尋」ちゃんの過去はあまり垣間見れませんが

ゲームの中で描かれていた過去の内容は、決して千尋ちゃんには

良い思い出ではなかったように思えます。

その感情を仲間に見せることなく、仲間を思いやり、国を思う千尋ちゃんの心の強さには

一人になると弱い部分があったのではないか?

そんな風に想いながら書いてみました。