「一の姫がいるから心配ないわよ」
思い出した記憶に、唇をかみ締める。
「さっすが、姫さん」
「姫・・。貴方に仕えることが出来て幸せです」
私に告げる言葉はとても嬉しくて、心が温かくなる。
思わず笑みが溢れてきて
私は必要とされているんだって思って。
けれど、思い出す幼い記憶は
すごく切なくて。
「千尋?どうしました?」
気がつくと、みんなが私を不思議そうに見ているのが分かる。
「なんでもない。疲れたかな?」
「戦続きでしたからね。先にお休みになられたらいかがでしょうか?」
布都彦の言葉に、素直に頷き
みんながいる場所から、自室へ逃げるように戻った。
「龍の声が聞こえないなんて、我が子とは思えぬ」
母様の声が聞こえる。
龍の声。
皇族の最後の生き残り。
「これで、いいの?」
弱気な声が部屋に響く。
膝を抱えうずくまり、涙が溢れる。
「姉様・・・・。」
思い出す、穏やかで優しい、美しい一の姫。
龍の声すら聞こえない私よりもこの国の女王に相応しい姉様。
私はそんな姉様のようになれない。
私は、みんなをこの国を守れるだろうか・・・。
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あとがき
ヒロイン「千尋」ちゃんの過去はあまり垣間見れませんが
ゲームの中で描かれていた過去の内容は、決して千尋ちゃんには
良い思い出ではなかったように思えます。
その感情を仲間に見せることなく、仲間を思いやり、国を思う千尋ちゃんの心の強さには
一人になると弱い部分があったのではないか?
そんな風に想いながら書いてみました。