最近、「いい展示ってなんだろう」という青臭い事を、年柄もなく考えています。また。
昔はそういう事をよく考えていたけれど・・・特に自分がまだまだアクティブに作品を作っていた頃とか。

こういうところ(NY)にいると、作品の数もアーティストの数も多くって、「じゃあいい展示ってなんだろう?」って逆に考えさせられています。
昔は、人にコネクトすること(気持ちとしてでも事実としてでも)、変化を起こせるものである事がアートというものの強いファクターだと思っていたのだけれど、最近は、じゃあそこに介在するポリティックであったりソサエティであったりするものの役割の重さを感じていたりもしています。

この10年で、ずーっと休暇程度にしか帰れたことのなかった日本ですが、去年からことしの頭に半年の東京滞在ができた事で、じゃあ日本のアートの強さって一体なんなのかしら、ということも考えたのは影響してもいるのかしら。
日本の「アート」の強さは逆に、ポリティックであったりソサエティであったりするものが関わらない部分にあるのかも知れないと思っています。
「これがすき」と強く思っている作り手の、感覚的な部分に重きがあり、その感覚に寄り添える人たちが寄り添っていく、そういう弱いからこその強さが日本の「美」に関わっている人たちの中にはあるのではないかと、なんとなーく思っています(でもやっぱりあまりに本を知らないので自信がないですが)。そして、NYという大きな街に住みはじめて4、5ヶ月経ってまたそういう日本の逆向きの強さを再発見する気持ちでいると言うか。

7月からあるアーティストのポスト・プロダクション・アシスタントの仕事を単発ではじめましたが、アメリカではこういう「大きな図」が見えてる人の方が強い作品を作って世にでていくのは事実だと思ったりして。

ポリティカルに重要な作品を作るという部分に目をあてている作家の作品の近くにいると、その強さに圧倒されてしまうもので、そしてその体験に、また、「じゃあいい展示ってなんだろう」なんてぼんやり思ったりするわけです。

今日一日家にいたのでリサーチをかね、日本でがんばっている人たちのブログやらエッセイやらを色々目を通していたわけですが、みんなすごくすごく、繊細な感覚の部分でつながっているのね、ということを再確認するような気持ちでした。

「ポエティック」って、キレイな言葉だけど、それをアメリカで使うときと日本で使うときと、全く強さも深さも違うと思うのはワタシだけでしょうか。
Troy (upstate NY)にアーティスト・イン・レジデンスで滞在している友人に会いにいく予定だったのに、そんな週末にこのハリケーンがやって来てしまいました。

Troyに行く遠距離バスもキャンセル。
地下鉄もバスもシャット・ダウン。

という事で、おうちで来月の引っ越しに備え荷物のパッキングでもしますか・・・。
まだ今はフツウに雨が降ってるとこですね。
ビールでも飲みながら、ラジオでも聞きながら、のんびりした週末にするか。
そろそろはじめなきゃいけなかったし、パッキング。
本当は次の仕事の資料読みもしなきゃいけないので、家にいなきゃいけないってことですね・・・。

来月23日に、アッパーウェストサイドに引っ越します。
ブルックリンを離れるのは惜しいけど、このアッパーウェストのアパートにも来年6月までしかいられないから、その後にブルックリンに戻ってくるつもりですが。

まだまだ「居心地のいい住処」探しには二転三転ありそうです。

わお。1ヶ月も何も書けてなかったですね。
なんというか、日々に忙殺されておりました。

働いたり、それでも友達と会ったり、仕事の資料集めをしたり、と時間はあっという間に流れ去っていました・・・。おはずかしい。
この一ヶ月は写真もあんまり撮れてなくて、なぜかと言うと、愛するライカのデジカメのレンズの中に何か入ってしまったようで、黒点が映ってしまうのです。でも、「あーこの1ヶ月何をしていたのであろうか」と思って、写真を少し振り返ってみました。

という事で、「さぼり」な感じですが、写真をのっけてみます。こんな1ヶ月だったんだと思います。多分・・・。

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日本から帰って来た日に、サンフランシスコから訪ねて来ていた友人に誘われていった船上ライブ。の時に船から見た自由の女神。自由の女神見るのは久しぶりだけど、いつ見てもなんか「じーん」とするかも。
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Matthew Marks Galleryの展示で見た、マグリット。これを借りて来て、見せよう、という心意気を買いたい感じです。
蓼食う虫も好き好き-magrit


これはPace Galleryでの展示。友人でもあるスターリン・ルビーの作品に偶然行き会った、幸せな日。
蓼食う虫も好き好き-pace


ある日曜日。思い立って、昔から大好きなwashington square parkに日曜日の午後に行ってみる。と、グランド・ピアノをセットアップしてプレイしている強者を発見。強い~。
蓼食う虫も好き好き-piano


PS1にて、ものすごく久しぶりにタレルを見る。やっぱりきれい。
蓼食う虫も好き好き-turrell



10日ばかりの日本滞在から戻りましたが、時差ぼけが。
日本でも時差ぼけぼけだったので、今回はアメリカに帰るにはぼけないかも、と思っていたのですが。

さて。

月曜日からMatthew Day Jackson Studioで2ヶ月単発でProducation Assistantのお仕事をします。
また、8月9月にMattの仕事とかぶって、6月末からフリーランスで手伝っていたギャラリーからフルタイムのオファーをいただきました。8月9月はとりあえずこっちもパートタイム&フリーランスでお手伝いが続きます。
ということで、10月からギャラリーと同時進行でいれたかった、某美術館でのパートタイム・インターンの話はあきらめる事になりそうです。

このインターンの話をあきらめるのはちょっと痛いですが、やっぱり現場でお金をいただいてする仕事の濃さは、例え同じ現場でも、インターンとしてできる仕事とは違う気がする(という言葉で自分を説得する)。

2つのお仕事をかけもつよりも、今回は1つのものでとっくりお勉強させていただきます。
というか、ここまで「we want you to work with us. fully.」と言われたときに、自分の中でさえ、それをrejectする言葉がなかったので、という事は、この仕事にワタシ自身が何らかの希望を見いだしているのだと思っております。

8月9月は週7日位の勢いで働く事になりそうで、駆け足です。


日本での一日目、今日は朝一番では医者に行く。予約は戻ってくる前にいれてあった。

築地の歯医者。
ドアを開けて受付に行くと、受付担当の、歯医者さんの奥さんが、「お久しぶりですね。」と声をかけてくれる。

「日本に帰って来てらっしゃるの?」
そうなんです。少しだけ。
「おとうさん・・・しばらくですね」

そこで、奥さんは涙目になってくれた。
「私おとうさんと同じ年だったんですよ」、って少し泣いてくれた。

そうなんです。今週の日曜日で1年なの。それで少しだけ帰ってるんです。
「もう1年になるのねえ。」

ここの歯医者さんは、今週で店じまいをする。先生がお年なので引退をするのだ。
だから今回は絶対ここに来たかったのだ。

病気になって、抗がん剤でカラダの耐性が弱まって歯茎に腫れが出た時、とーさんはここで消毒をしてもらっていた。彼のオフィスから歩いて5分ほどのところにあるこの歯医者に、彼はそれまでももう長く通っていて、ワタシもここ4年くらい、帰ってくるたびお世話になっていた。

とーさんが治療で入院した病院に通っていたかーさんや,そんな二人にいつも付き添って病院に顔を出していたねーさんと違い、遠くにいたワタシは、とーさんが通り過ぎたシュールリアルだったかも知れない10ヶ月を一緒に体験していない。日本に帰ってくれば一緒に病院に顔を出したけれど、やっぱりきちんと体験できていない、という後悔みたいな気持ちが、いつもある。きちんとよりそえなかった。

この、とーさんが歯茎の腫れの治療をしてもらいにきた、その時彼が座った治療台に、ワタシももう一度座りたかった。がんセンターのベッドに横になりには行けないから、これがとりあえず、あのころのとーさんに近いところ、とーさんの見た景色かなあ、という気持ちがあった。

ここが閉まったら、また、彼とつながったものが一つなくなるんだな、と思う。
そういう風に時間が経過していく事自体が、ワタシにとってはシュールリアルで、それはまだまだ続いていく感覚なのかも知れない気がしている。



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