看護師さんにしか、できないこと | シンプルライフを送りたい女医の気付き

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看護師さんのお仕事は以下のように決められています。

 

 医師の診察にもとづき、診療や治療の補助を行い、病気やケガなどで不自由な生活を送る患者さんに対して、看護を提供しますまた、医師の補助だけでなく、高度化・専門化する医療体制のなかで、患者さんと医療スタッフ間のコミュニケーションを円滑にし、患者さんの相談や指導などといった心のケアも看護師の大切な仕事です。

 

看護師さんは、何より、患者さんに最も近い存在です。なので、看護師さんが日々診察し観察された結果は患者さんの状態をもっとも反映しています。

 

多くの看護師さんは、とても熱心に仕事をされていますが、残念ながら、看護師さんの仕事を十分にしなかったために、治療が遅れること、そして患者さんが悲しい思いをされることがあります。

 

病棟での仕事のとき、主治医が外来をしていたり、外勤といって外の病院に行っている時は、病棟当番医という当番医がいて不在の先生の代わりに患者さんの急変や突発的な症状の訴えを診察し、治療し対応することになっています。

 

なので病棟当番のときは、主治医ではなくても、患者さんを診察します。

 

ところが、看護師さんが、病棟当番医に報告をあげないと、本当に大変なことになります

 

ある日、私が1日外病院で、終わって16時くらいに病棟に戻ってきましたら、私の30代の患者さんが泣いておられました。

 

その患者さんは、多発性硬化症という難病で、再発をされて入院治療中でした。前日まではお元気だったのですが、その日は泣かれていました。

 

”どうしたの!!”と聞くと ”お腹が痛くて・・・看護師さんに言ったんですけど、便秘だって言われて・・・でもそうじゃないと思うんです、お腹の下のほうなんです” と言われました。

 

嫌な予感がしました。今回の再発は脊髄だったのです。排尿中枢は脊髄の腰にあり、もしそこに多発性硬化症の脱髄がおきていると、尿閉になるからです。尿閉というのは、尿が全く出なくなることです。

 

すぐに診察すると、表面から見てわかるほど、膀胱付近がぽこんと出ていました・・・

 

看護師さんは医師の診察の補助、がお仕事、自分たちの判断で、病名を決めたり、処置をしたりしてはいけません。医師の指示が必要なのです。

 

すぐにナースステーションに行き、その日の担当看護師とリーダーさんを呼びました。

 

”Sさんが、お腹痛いって泣いていて。多分尿閉だよ。おしっこでてるの?なんで勝手に、便秘とかいっているの?あなた医者?便秘ってなんで診断できたん?画像でもとったの?ていうか、お腹痛いっていっているのに、診察したの??”と詰問しました。

 

すると・・・あまりの私の剣幕に担当看護師は言葉が出ず。

 

担当はリーダーには報告していて、リーダーさんも勝手に便秘と判断し、医師に報告していなかったのが判明しました。

 

”すぐに導尿(尿道から管をいれて尿を出す処置)して!!絶対尿閉だよ。脊髄に病変が起きているんだから、必発の症状でしょ!!ちゃんと勉強してよ。患者さんが可哀想。あなたが診断できるっていうならちゃんと正確に診断してよ” と怒りました。

 

すぐに導尿処置がされ、なんと600ml以上膀胱に溜まっていました・・・膀胱には最大400ml程度しか尿は貯められません。

600ml以上もたまっているなんて、Sさんとても辛かったでしょう。

 

尿がためるパックにいっぱいになるころ、患者さんが”先生とても楽になりました。ありがとう。先生が病院帰ってきてくれてよかった”と笑顔になられました。

 

ありがとう・・って😭本当、ごめんなさい、って話ました。よかった、じゃない!何も良くない。私がいなくても、対応できるように当番医がいるのに、看護師のレベルでとまっていたからあなたが苦しむことになったのよ、と。

 

その患者さんはとっても優しい気の弱い人でした。だから何回もナースコールを押せなかったのでしょう。

 

Sさんは脊髄の再発病変だったので、歩行ができず、おむつだったのです。

 

おむつを確認してあげていたら、下腹部も触っていたら、尿がでてないことを確認していたら、そして欲をいえば、病変が脊髄にあるのだから、尿閉になることもあるとわかれば。

 

というか、ちゃんと病棟医に報告していたら、結果は違ったかもしれないです。

 

とっても残念でした。何より患者さんが傷ついておられました。


よく聞くと、”お腹が痛い”と言ったとき、担当看護師さんに”また?じゃあ、便秘かなあ”と言われたということでした。


この発言が、最も腹が立ちました。


病気のことわからなくても、せめて、どこが痛いか、どんなふうに痛いか、痛みを取る方法はないのか、寄り添って考えてほしかった。

 

看護師さんは、患者さんの体の声、心の声を、医師が拾えない部分も含めて、医師に届けるという崇高な、そして看護師さんにしかできないお仕事があります。

 

症状から病名を推測して、こういうことが起きているのかなと予測するのは、とても重要なことですが、診断をするのは医師の仕事です。

 

看護師さんにしか、できない、大切なお仕事がある。そう思います。