三年前の今日、肝細胞がんでこの世を去った樋口宗孝のドラムトラックを編集して作られたアルバム。
このアルバムについて、以前某投稿型レビューサイトで
「Munetaka Higuchi Forever Our Hero、それ以上なにも言う事はない」と書いた。

今でもその考えは変わっていない。
本音を言えばとにかく聴いてくれの一点張りでいきたいとすら思う。
しかし、それではこのブログで書く意味が無い。
アルバムについて感じた事を書いていきたい。

アルバムジャケットはタイのアユタヤ県・アユタヤ市にある仏教寺院の廃墟・ワット・マハータートの木の根で覆われた仏頭だ。

アユタヤ王朝により作られた寺院が1767年にビルマ軍により破壊された時、
持ち帰りを免れた仏頭が菩提樹の根に包まれ、今も木の成長と共に仏頭は上昇しているという。

身体は死するとも、その魂は永遠に失われる事はない。
樋口宗孝の残したドラムプレイは、人々の心を揺さぶり続ける。
そんな思いがタイトルやジャケットに込められているのだろう。

オープニングナンバーの"Hit The Rails"は、PVが制作され、
今年のUSツアーにおいて"Fire Of Spirit"に続いて演奏されるなど、このアルバムを代表する曲である。
ツーバスのあんぱんを迎えた現在のラウドネスににピッタリなファストナンバーだ。

"Flame Of Rock"は'80年代のラウドネスを感じさせる力強いナンバーで、
ギターソロではタッピングも披露している。
ギターソロ後のドラムパターンは明らかに基地外医者だが。

"I Wonder"はこのアルバムで唯一鈴木"あんぱん"政行が叩いている。
"Shadows~"以降のリレコーディングをしていればひぐっつぁんのエディットでいけたと言われているが、
あんぱんのお披露目的な意味でもありだったとは思う。

タイトルトラックである"The Everlasting"はラウドネスでは初となる高崎晃ヴォーカル曲。
ひぐっつぁんを送る曲として破壊的なヴォーカルを披露している。
ラストのインド臭漂うソロは偉大なドラマーへの手向けのように響き渡る。

前曲の余韻を受け、バラードの"Life Goes On"が始まる。

"Let It Rock"は'80年代アメリカンな匂いの漂う(つまり"THUNDER IN THE EAST"辺りの匂いがする)曲だ。

"Crystal Moon"はベースから入る暗い雰囲気の曲で、重いグルーヴも聴きどころだ。

"Change"はスローでヘヴィでダークなイントロから重厚なミドルテンポに入っていく。

"Rock Into The Night"はゴリゴリのメタル。でもソロは浮遊感のある仏陀風。

"I'm In Pain"はそれまでのラウドネスの流れをくむような
今風なラウドロック的なニュアンスもあるヘヴィな曲だ。
ダウンチューニングから繰り出される強烈なローを保ちつつ、後半には疾走する

"Thunder Burn"はラテンのようなリズムの、タイトルから想像される音像とは全く別の曲となっている。

ラストの"Desperate Religion"は、ミドルで図太い音で押して行くタイプの曲だ。
最後まで破壊的なへヴィサウンドを追求していたひぐっつぁんを送る曲としては悪くはないだろう。

全体的に暗い雰囲気なのも、ひぐっつぁんを弔う意図があってのことだと思うが、最高の出来だとも言い難い所がある。

編集されたドラムトラックに違和感を覚える事はない。
しかし、当然「この曲はこういう曲だからこう叩く」というひぐっつぁんの魂は感じられない。
'80年代風の曲も多く、その意味でも昔の曲のリレコーディング("ROCK SHOCKS")は意味があったと思う。
それでもこのアルバムはひぐっつぁんが100%の魂を注ぎ込んだドラミングで聴きたかった。

あんぱんが正式メンバーとしてアナウンスされるのはもっと後の事ではあるが
(このアルバムはひぐっつぁんが正式メンバーとしてクレジットされている)、
それでも、個人的にはこのアルバムは第6期ラウドネスによる樋口宗孝追悼盤であると思っている。



THE EVERLASTING -魂宗久遠-/LOUDNESS

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