映画『リング』は、1998年に公開された日本のホラー映画です。監督は中田秀夫、主演は松嶋菜々子が務めています。


本作は鈴木光司の同名小説を原作としており、「呪いのビデオ」を見た者が一週間後に死ぬという都市伝説を巡る恐怖と謎を描きます。



テレビ局のディレクターでシングルマザーの浅川玲子は、取材中に「呪いのビデオ」の噂を聞きます。


ビデオを見た者が一週間後に不可解な死を遂げる、という都市伝説が若者の間で広まっていました。


実際に玲子の親戚の娘(高校生)が謎の死を遂げてしまい、玲子はその真相を探るため調査を開始します。


やがて玲子自身もビデオを見てしまい、夫の高山竜司の協力を得ながら、呪いの元になった少女・山村貞子の過去や事件の真相に迫っていきます。タイムリミットが刻々と迫る中、玲子たちは果たして呪いを解く手段を見つけることができるのか……。


本作はJホラー(ジャパニーズホラー)というジャンルを世界に知らしめる大ヒット作となり、以後のホラー映画に非常に大きな影響を与えました。



感想

『リング』、やっぱり今見てもめちゃくちゃ怖いです。


一言で言うと「呪いのビデオ」っていう設定が秀逸すぎる。

ビデオテープを見たら一週間後に死ぬっていうシンプルなルール、なのに細部まで“怖い”が詰まってる。

現代だったらDVDとかサブスクで見ちゃいそうだけど、当時の「VHS」って、あのノイズ混じりの質感と合わさるとさらにリアルに感じます。


この映画の何が怖いって、ただ幽霊が出てくるだけじゃないってところ。


都市伝説みたいな広まり方もリアルだし、ホラー的な仕掛けも、やたら「音」と「間」を大事にしている感じが堪らない。


誰もいない廊下で響く電話の音とか、画面いっぱいに漂う“何か来そう”な静けさ。


あんなに音のない場面で怖がらせる映画ってなかなか無いんじゃない?

玲子の存在もいい。母でありキャリアウーマンで、呪いの謎に喰らい付いていく姿がカッコイイ。


でも絶対のヒーローじゃなくて、彼女自身もしっかり追い詰められていくから共感しやすい。


息子を救いたいって必死になる姿に、親としての恐怖も重ねて見られるから“他人事じゃない”感覚が芽生える。


あと、貞子のビジュアル。

一度見たら絶対に忘れられない。「髪の毛で顔が隠れてる女の子」っていう従来の幽霊像から一歩踏み出して、もはやホラーアイコン。


テレビから這い出てくるシーン、今見てもやっぱり背筋がゾクッとする。


時代を超えて“和製ホラーの象徴”になったの、納得だよ。顔が歪んだ写真の描写とかも地味に嫌~な後味を残すし、「呪い」の具体性でもって、観ているこっちの現実にも抜けてきそうな感覚がある。


何より本作は、“説明しすぎない怖さ”が良い。貞子の過去とか、なぜ呪いが生まれたのかって部分は分かっても、その先…結局なにが「救い」だったのか、明確なカタルシスがない。


玲子が一瞬安堵した途端に襲ってくるラストのどんでん返し、あれにはやられた。


観終わった後も「本当に大丈夫か?」って疑心暗鬼になる。その“後に引きずる恐怖”こそ、リングの真骨頂じゃない?


ビデオをコピーして他人に見せれば助かる、っていうルールもゾッとする。

自分が助かるために、誰かを犠牲にせざるを得ない。皆で救われる道がないところも社会的なテーマがにじんでる。時代背景的に、家族や社会からの個人の孤立も見えてくる。


自分の子どもを救いたい時、親はどこまでできるのか。その究極の選択を玲子に問うてる作品でもある。あと、夫との関係も、息子との距離感も、リアルでどこか寂しくて、人間ドラマとしても見ごたえある。


“和製ホラー”っていうと、血がいっぱい出るとか化物が暴れるみたいなイメージもあったけど、『リング』は一切そんなの無い。

なのに、こんなに怖い。日常生活の中にふと入り込んでくる恐怖。

ビデオって誰でも触れる時代だったから、まさに「明日は我が身」なリアリティがすごい。

しかも現代のネット社会でも、「誰かが呪いを拡散してしまう世界」は全然色あせない。もし今、ビデオじゃなくて「SNSの動画」だったら?って思うと、ヒヤッとする。


キャストも素晴らしい。玲子役の松嶋菜々子は、一見頼りなさそうにも見えたけど、どんどん力強さを増していく演技が印象的だった。

孤独と恐怖、子どもを思う親の複雑な感情をしっかり見せてくれる。

高山竜司役の真田広之も、クールだけどどこか人間味が滲み出てて好感持てた。


本作が与えた影響は日本どころか世界の映画にも波及してるし、その後の『らせん』『リング2』、海外版リメイクなんかも生まれてるくらい。それだけ“貞子”ってキャラクターと“呪いのビデオ”ってアイデアに普遍性があったんだろうなと改めて思う。


ラスト近くの“あのシーン”は、何度見ても「ひええ……」って声が出る。パッと日常に戻れないし、夜にビデオを再生するのがしばらく怖くなる。


現代だとビデオ自体見かけないけど、その分スマホやタブレットで動画を開く時にふと「これ何か呪われてないよね…?」って余計に想像力を刺激される。

『リング』は「Jホラーの原点」であり、「本当に怖いって何だろう」を突き詰めた名作だと思う。


血やグロさで驚かすのではなく、静けさやじわじわ押し寄せる不安で心を蝕む…。


観れば観るほど、細部の怖さや絶望感、そして“もう絶対に戻れない”っていう切なさが沁みてくる。


今観ても全然色あせないし、むしろ現代こそ再評価すべき作品。


2025年7月現在

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