鑑賞 002:次


えんぴつの線で消された目次とかこの本はところどころ涼しい (紺乃卓海)

本が涼しい、というのが新鮮な比喩でした。
ページの間から風がふいてきそうな。どうして線で消されているのだろう。
あたためていた席だけど次の人どうぞ 私はもう帰ります (A.I)

席をあたためる、というのが、いい。
「席」は何かの比喩かもしれない、とも思いました。



あの頃は一次関数 坂道を自転車で駆け上がったりした (あおゆき)

あおゆきさんの歌で、以前にも好きだと思ったのは自転車のモチーフを扱ったものでした。
この方の自転車が私は好きなのかも知れない。



振り向かない人の背中が あれはもう知らない何か 次々と花 (羽根弥生)

次々に色をつぎ足すパレットに僕の持ち得る自由のすべて (はらっぱちひろ)

視覚的にきれいな歌だと思いました。
パレットに自由が制限されているあきらめにも見えるけれど、
制限のなかで精一杯の自由を広げようとする強さも感じます。

次の日も次の日もある我々のめくり続けられていく空白 (鳴井有葉)


私の使っている手帳は1日1ページなんですが、
まったく何も書かない日もあります。
予定が入って手帳がうまることは、忙しいけれどどこか楽しい。
その逆の、空白。

次の方、どうぞ。それじゃあ、口開けて。喉が赤いね。恋でもしました?(サオリ)

なんでその展開?って思うのに
なぜか忘れられなくなる歌でした。
句読点がないともっと勢いがあっていいかもしれないです。

へそを囲むように二次元ポケットを描くと思わせさてなんでしょう (穴井苑子)

四次元、とか異次元、とかいう言葉の語感がどうも苦手です。
それだけで異質な雰囲気をだせる言葉だから。
穴井さんの歌は、「四次元ポケット」というある意味一番身近な「四次元」なのかと思いきや
「二次元ポケット」。しかもそれを「描くと思わせ」る。
この歌の世界は、すごいと思う。

長男としての自覚がない俺をどうか次男にしてくれ 親父 (矢島かずのり)


長男長女の本、なんてものがあるらしいですから
どうも第一子というのは、他の兄弟からすれば違う存在のようです。
責任だの自覚だのを持たなければならないらしい。
次男にしてくれ、という言葉は、逃げているというよりも
自分を見つめきったうえでの言葉のような気がします。

次はもうないものとして(好きになる)わたしのなみがざぶん、ざぶんと (花夢)


わたしのなみ、はいろんな読みができると思います。

「好きになる」という感情のなみ、でしょうか。それが、ざぶん、ざぶん。





唐突に海がひらけて次の駅までのつかのま息をひそめる (ひぐらしひなつ)

はじめて電車で行った駅までの道のり、でしょうか。
電車は人間がひいたものだけれど
立ち向かえない大きな海に、敬意やおそれのようなものを抱いてしまう。

次世代の交配が生む輪かくにくっきり君の素直を刻む (ワンコ山田)

素直さは、優性遺伝かしら、劣性遺伝かしら。
輪かくに刻む、というのが好きです。