3/19 「十二夜」観劇 | Rain Forest

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舞台・映画等の感想・レポ・雑記

3月半ばから舞台や映画をそこそこ観に行っているのだけど、なかなか日記を書けずにいたのでこれからぼちぼち書いていきます。

まずは日生劇場で上演された「十二夜」。レミゼ旧演出版でお馴染みのジョン・ケアード演出作品。
彼はロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのメンバーだそうで、初のシェイクスピア劇に挑戦する禅さん(ミュージカルのロミジュリは含まれないらしいw)はそれが本場RSCの舞台だという事にガチ緊張で臨んだのだそうです。
私もシェイクスピア作品は何作か観ているけど、そういえば本場の人が作っているものには初めて触れるかも。

事前にジョンと禅さん、そして脚本の翻訳作業をした松岡さんの3人による朝日カルチャーセンターでの講義に参加したので、日本語で演じる事の難しさ(英語だからこその言葉遊びがふんだんに含まれてる台詞が多い事等)や、その上で楽しむポイント・見所などを聞けたのは良かったです。
といっても、十二夜の内容自体ドタバタラブコメ喜劇なので、史劇を観るのに比べたら気軽に楽しめる作品ですが。
観ていて自然と観客が笑えるような翻訳作業に相当頭を悩ませたという松岡さんの脚本、とても上手く書かれていたと思います。いかにもシェイクスピアな大仰な台詞回しも上手いこと現代ふうに落とし込めていたんじゃないかなあ、と(かといって完全に現代風に改定してしまったらそれはもうシェイクスピア作品じゃなくなるのでアウトだそうです。ようはロミジュリでの「メール」やら「マブダチ」やらw)。

講義の時にジョンが禅さんに「サー・アンドルー」という役をオファーした理由を話してくれたんですが、レミゼで禅さんを見て「彼はマリウスのような2枚目な役ももちろんいいけれど、コミカルな役をやらせたらハマるんじゃないか」と思った…というか見抜いたwwそらそーだ、禅マリ見てたら当然そう思うでしょ!あきらかに2枚目より「可愛いおバカさん」キャラだったでしょww

私は十二夜は内容全く知らなかったので事前にwikiであらすじとキャラクター説明を読んでいったのですが…それで想像した以上に、舞台での禅サー・アンドルーはヘタレお馬鹿全開キャラでしたw
アリス・イン・ワンダーランドでのジャックもヘタレキャラだったけど、それでもジャックはまだ自分の美意識をせいいっぱい振りかざしてたのに、サー・アンドルーは「僕も~、僕も~」が口癖のホントに頼りなくてオツムの足りない残念貴族で。

そうそう、そのサー・アンドルーの口癖なんですが、本編中にある「僕だって、告白された事あるよ」という台詞を講義の中で松岡さんがサー・アンドルーのキャラクターの特徴として説明してた時に急に閃いたようで「あ、もしかしてコレ…逆にしたほうがよくない?」と言い出したんですよ。
「禅さん!ちょっとこの台詞、今までのと逆にしたのと両方言ってみてくれません?」といきなりの無茶ぶりにビックリしながらも禅さん「告白された事あるよ。僕だって…」と演技しながら台詞を言ってみる。
「どうですか、みなさん?」と松岡さんが反応を仰ぐと講義に参加した人たちは大きく頷いてる感じでした。私も断然、変更したバージョンのほうが良かったです。倒置法ってやつですよね。
この時の禅さんがずっと戸惑ってる感じなのがまた楽しかったですw
芝居は稽古場で作られていくものだから、こんなふうにちょこちょこ変更が生じていくんだろうな~と思ったけど、まさか一般ファンを集めて開催されたカルチャーセンターの講義中にそういうのが実際に見られるなんて。
で、本番で結局どちらになったのかな~と興味津々でそのシーンを待ったんですが、やはり変更後バージョンになってました!なんか妙に嬉しかったです♪この演技が作られた場に私、居合わせたんだよー!って得した気持ち♪

目当ての禅さん以外には、印象深かった役としては橋本さとしさんのマルヴォーリオと成河さんのフェステ。
成河さんは「ビッグ・フェラー」の時に演技巧者っぷりを拝見してたのでさすがだなあ~と感嘆しましたが、さとしさんのマルヴォーリオ…!もう本当ハマリまくりで可笑しいやら可哀想やら…一人で場内の笑いを誘いまくってました。一番お客さんの反応が大きかったんじゃないかなー。
二人とも、シェイクスピア劇独特の台詞をふつうに自分の言葉として話せているのがすごく良かったです。

あ、主人公を演じた音月桂さんについても。初めて観る女優さんでしたがヒロインのヴァイオラと二役の兄セバスチャン、どちらも魅力的でした。ヴァイオラの時の声が可愛らしい♪
セバスチャンは育ちの良さが感じられる凛々しさ溌剌さにも関わらずカッとなると血気盛んに剣を振り回し容赦をしない物騒さが笑えました。同じシェイクスピアの「シンベリン」で浦井くんがやってたギデリアス王子を彷彿とさせたなあ。

主人公は女である事を隠してお仕えしてる主人に密かに片思いしてて、主人は男だと思っているけれど主人公を気に入って可愛がり(その可愛がりっぷりが同性に対してのものにしては度を越してるような感じ)、誤解とドタバタを経て最終的に二人は結ばれるというあたり、私が中学生の頃に好きだった氷室冴子の小説「ざ・ちぇんじ!」を思い出しました。

一応ハッピーエンドなんだけど、可哀想なキャラが哀れを誘う終わり方でした。むしろ大団円より印象に残る終わり方かもしれません。フェステの歌が観劇後もグルグル頭の中を回ってました。
実力派の役者さんたちによる上質なお芝居を見せてもらえて、とっても充実した時間でした♪