選んだ道を信じる。。。
LIFULL介護が運営する「tayorini」のコラム"町亞聖 介護×エンタメをレビューする"で今回紹介したのは映画「選ばなかったみち」
https://kaigo.homes.co.jp/tayorini/entertainment/003/
この映画は若年性認知症と診断された弟との経験に着想を得た監督のサリー・ポッター氏が制作した作品で、認知症のレオが心で観ている世界を映像で表現しています。
主人公はメキシコからアメリカに移民してきた作家のレオ。ニューヨークで1人暮らしをしているが認知症と診断され今は誰かの助けがなければ生活が出来ない状態。
娘のモリーは忙しい仕事の合間をぬって父を病院に連れて行きますが、歯医者では口を開けるのを嫌がったりうがいするための水を飲みこんでしまったり、しまいには失禁してしまう。。。
そんな認知症の父と娘が過ごすドタバタの1日を描きながら、同時にレオが"選ばなかった道”がパラレルワールドとして展開されていきますが
認知症であるかないかに関係なく「もし違う人生を歩めたら。。。」と誰しも一度は思ったことがあるのではないでしょうか。
母の介護の経験があったおかげでアナウンサーになれましたので母や家族のために人生を費やした日々に後悔はありません。
ただ18歳でヤングケアラーになった私には選択肢はたったひとつしかなくこの道しか選べなかったのは事実。だから「もし生まれ変わったら」と夢想することは実は今も時々あります。
もちろん過去を変えることも生まれ変わることが出来ないのも分かっています。もし私がレオのように過去に想いを馳せたらどんなパラレルワールドを生きるだろうか?
母がくも膜下出血を発症した日にもっと早く病院に連れて行っていれば。。。その母にきちんと毎年がん検診を受けさせていれば手遅れになることはなく今もあの天使のような笑顔で私達家族を迎えてくれていたはず。
取り返しのつかないこの過ちは私が一生背負わなければならない重い十字架であり、失った大切なものを思い出す作業は痛みを伴うもの。
私が想像する世界は「母と共に生きたかった」という願望が反映されたものになるに違いありません。
すぐそばにいるのに遠くにいるレオを少しでも理解したいと父親の心をノックし続けるモリー。その姿に15年におよぶ母と父の介護を経験した私が重なりました。
予定通りに行かない慌ただしい1日を過ごす間にモリーは度々仕事の電話をしている。とても重要な話であることが伝わってきますが父親を放っておくことは出来ず結局自分のことは後回しに。
私も取材中に父が救急車で運ばれたという電話をもらったことが2度ほどある。正直、勘弁してくれと思ったが病院に行かないという選択肢は私にもありませんでした。
同じ時を過ごしながら自分の半生を辿るという長い旅路に出ていたレオ。自ら“選んだ道”に戻って来た時に口にしたのは娘の名前でした。
そして認知症でもパパがパパであることに変わりはないと確信するモリーは、自分は1人だと呟く父に「私がいる」と語りかけるが果たしてどんな決断をするのか。。。
映画のラストでは彼女の選択は明らかにされていませんがどんな決断をしても必ず“選ばなかった道”は残ります。
岐路に立つモリーの姿は明日の貴方かもしれません。大切なのは数ある選択肢の中から自ら選んだ道を信じること、そして今歩んでいる人生を肯定すること。。。
映画「選ばなかったみち」は都内では上映が終わってしまっていますがDVDやAmazonプライムなどで観られるようになったらぜひ🍀