大谷選手関連の最新情報が徐々に乏しくなってきたここ数日。今朝、清宮幸太郎選手に関するコラムを見つけて読んでいたら、そこに大谷選手に関する情報が出ていた。コラム元は、スポルティーバの電子版で、元オリックスや南海ホークスでNPB歴代3位のホームラン記録をもつ門田博光氏が、清宮選手に関して語っているものである。門田氏といえば、自分が少年時代に、今は無き難波の大阪球場で一本足打法でかっ飛ばすたくさんのホームランを外野席で、何とかキャッチしようと奮闘していた記憶が懐かしい思い出ある選手だ。

 

 門田氏は、清宮選手のことを、「柔らかい背中」をもつことで、強いスイングができる好きな選手と評しているが、一つだけ難点をあげているのが、清宮選手の「オープンスタンス」のバッティングフォームだ。門田氏は、オープンスタンスの難点を、球筋が開けて見え易いことは確かだが、逆にどんなコースにでも手が出易く、フォームを崩すリスクがあると警鐘している。今では流行りのオープンスタンスでも、打率3割を超える打者は多く出ていないことも、その理由に添えている。そこで、門田氏が大谷選手がメジャーでも好結果を残しているバッティングフォームの成功事例と結び付け、自身の主張を後押ししている。門田氏は、「なんで大谷翔平が向こう(メジャー)で打てるのか。ひとつはね、彼はアウトコースを知らんぷりするでしょ。だから、体が踊らされない(動かされない)。どんなボールでも追いかけて体が踊ってしまったら、その打席は打てても徐々に崩れてくる。」と言っている。確かに良い時の大谷選手は、身体がブレずにアウトコースのボールが見えているように素人的にも見える。納得の理論だ。

 

 結論として、門田氏が語る清宮選手の育成法は、1軍で優れた選手を手本に見て覚えた方が成長する可能性が高いのではと論じているが、栗山監督ならではの考え方も尊重し、今は2軍で試合することへの惨めさを感じることで、今後の糧にしてほしいと温かい目で指南している。偉大な経験者として説得力があり、無理な昭和時代の根性論も押し付けない、いい語りのコラムだと思った。

 

ホームラン歴代3位・門田博光の「清宮幸太郎分析」がおもしろすぎる

###

 ゴールデンルーキー・清宮幸太郎(日本ハム)の動向に注目しているのは、マスコミやファンだけではない。NPB歴代3位の567本塁打を記録した希代のアーチスト・門田博光もその1人だ。

「久しぶりに見たい選手が出てきたわ」

 門田から清宮への興味を聞いたのは5月初め。2日に一軍昇格し、そこから連続試合安打を続けている頃だった。やがて “待望のプロ1号”の話になると、門田が「いつ出ると思う?」と尋ねてきた。

「そろそろでしょう」と、根拠のない曖昧な答えすると、門田は「西武戦やと思うとるんや」と返してきた。日本ハムの日程を確認すると、西武戦はそこから3カード目(5月15、16日)と離れていたが、その理由が面白かった。

「これだけ注目されているルーキーに打たれたくない、というのがプロのピッチャー心理や。そのなかで『打てるもんやったら打ってみぃ!』という感じで投げてくる投手がどこにおるか。外、外、変化球、変化球より、強気に攻めてきた球がちょっと甘いところに入ってきたら、それをガツンや」

 その頃、西武はパ・リーグの首位を走り、投手陣も開幕前の予想を覆し好調だった。そこで門田はもっとも攻めてきそうなチームを西武ととらえ、なかでも「主力クラスが投げてきたときはチャンス」と見立てたわけだ。

 現役時代、各球団のエースたちが血気盛んに投げ込んできたボールをことごとく弾き返した門田ならではの初アーチ予想だった。

 結果は……というと、門田と話をした2日後の京セラドームでのオリックス戦で、ディクソンから第1号を放った。

「西武じゃなかったな。外国人ピッチャーの真ん中あたりのスライダーか。日本人のピッチャーなら、ああいうボールはなかったと思うけどな」

 この第1号以降、清宮のバットは沈黙。打率も1割台にまで落ち込み、交流戦スタート直前の5月28日に二軍降格となった。

 ところが、降格初戦でいきなり2発を放つなど、ファームで本塁打を量産。6月17日現在、27試合の出場でイースタンリーグトップとなる13本塁打を放ち、高卒ルーキーとしては出色の数字を残している。

 そんな清宮について、門田ならではの視点で、あらためてホームランアーチストとしての魅力を口にした。

「彼はね、柔らかい背中を持っとるでしょ。あれがあるから強いスイングができるし、距離も出せる。ワシの好きなタイプなんや」

 門田は打者を語るとき、背中を話題にする。

「ええバッターは背中が柔らかくて強い。特にオレらみたいな体が大きくない選手が強いスイングをして打球を飛ばそうと思ったら“これ(強くて柔らかい背中)”がいるんや。清宮は身長が180センチを超えとるらしいけど、左中間に打ったときなんか背中がしなって、ほんまええ形しとる」

 

門田自身、強い筋肉を持っていたわけでも、体格に恵まれていたわけでもない。それでも現役時代の後半には1キロのバットを扱い、強烈なスイングで40歳にして二冠王にも輝いた。

 その源であったと考える柔らかくて強い背中を清宮に重ね、大いなる可能性を感じているのだ。

 一方で、門田が渋い顔をつくり「ここだけがクエスチョンや」と指摘する点もある。

「なんでこんなにええ体をしているのに、“今風”の形でやるんや。ここが理解できんのや」

 門田が言う“今風”とは、オープンスタンスのことだ。門田が現役の打者を語るとき、かなりの頻度でぼやくのが、このオープンスタンスである。清宮に対しても同様だった。

「0コンマ何秒の勝負をしているのに、なんでわざわざオープンに構えてから戻して打ちにいくんや。それだけ無駄な動きが入ったら遅れるやろ。それに足を上げて、グッと力がたまる一瞬も浅くなる。昔は、1本足が難しい打ち方やったけど、オレにしたらそれよりも難しいのがこれや。それがなんで主流になるのか、理解できんのや」

 清宮も二軍降格となった際、「まだ真っすぐに振り負けるのを感じた」と課題を挙げていた。

 門田の現役時代、オープンスタンスで構える打者は稀(まれ)だった。時代とともに球種が増え、打者がボールを見やすくするためにオープンスタンスが主流になっていったというのが一般的な見方だ。しかし、門田は首をかしげる。

「ほんまにそうか……? 流行りみたいなもんちゃうの。ヒゲが流行れば伸ばすヤツが増えたり、そんなのと同じ感覚とちゃうかな。じゃあ、見やすくなったといっても、3割打つヤツは増えたか?」

 門田の口調はさらに熱を帯びる。

「オープンにしたらボールが見えすぎるんや。どのコースも魔法がかかったように見える。だから、なんでも手が出てしまってフォームが崩れていく。清宮も一軍におったとき、初球からフォークみたいなボールにもスイングすることがあった。そこがオレらの理論では理解できんのや」

 初球からスイングできることは、清宮の持つ積極性ととらえることもできると思うのだが、門田の答えはこうだ。

「空振りしても、『タイミングが合っているな』とベンチが不安がらないようなスイングならいいけど、そうじゃないでしょ。なんで大谷翔平が向こう(メジャー)で打てるのか。ひとつはね、彼はアウトコースを知らんぷりするでしょ。だから、体が踊らされない(動かされない)。どんなボールでも追いかけて体が踊ってしまったら、その打席は打てても徐々に崩れてくる。これはバッターがいちばん気をつけないといけないこと。

 それやのに、清宮があれだけ体を動かす打ち方をするというのがね……。あれほどの柔らかさと強さと若さがあれば、体をねじって構えてもボールはある程度見えるやろうし、オレはそれで十分と思うけどな」

 

門田の注文はホームラン打者としての期待ゆえのことである。アーチストの資質を清宮に見たからこそ、真のホームランバッターになってほしいのだ。

「現役時代、インコースを打とう、アウトコースを打とうという練習は一切しなかった。とにかく真ん中周辺のボールを絶対に見逃さない、それだけ。そこだけしっかり打てたら、最低でも3割、25本ぐらいにはなるんやから。そこから30本、40本となると、また極意が必要やけど、まずは真ん中周辺を確実に打つ。

 オレらのときは『的絞れよ!』とよう言われたけど、ひたすら自分の狙ったボールを待って、そこに来たら絶対に逃さない。そのためには見えすぎたらアカンのよ。まだ清宮は見えすぎることの怖さをわかってないだろうし、ひたすら待つことのツラさも知らない。最低でもスクエアに構えて、的を小さくしてバットを動かさない。そういう打ち方をやってほしいけどね」

 ただ、よくよく考えると、まだ清宮は高卒1年目のルーキーである。そのことを門田に伝えると、少し表情を緩めこう言った。

「今の子は、ませているから、オレらの頃の24、25歳みたいなもんやないか。それにオレは高校時代にホームランを1本も打ってなくて、社会人からプロやったけど、彼は高校のときに100本以上も打ってるわけでしょ。それなりの持論も持っとるやろうし、スタートの段階から違うよ」

 となれば、少々数字が残らなくても一軍で経験を積ませながら育成するのが、門田の望むところなのか。

「そうやね。ある程度のレベルにあるヤツは、試合に出てうまくなるのと、いい手本を見てうまくなるのと、2通りの上達法がある。これだけの素質を持った選手なら、我慢してでも一軍に置いて育てた方がいいと思う。

 ただ、クリ(栗山英樹監督)もいろいろと考えて決断したんやろうし、なら清宮が今の時間をどう過ごすかが大事やろう。二軍で打ったってプロの世界は仕方ないんやから、そんなことより二軍で野球をすることに惨(みじ)めさを感じてほしい。それができたら、今の時間が彼のなかで大きな財産になっていくはずや」

 一軍再昇格を果たしたとき、門田も認めた天性のアーチストの実力を発揮するのか。そのときが待ち遠しい。

###