どの病院でも怪談は有ります。
生命のボーダーラインが病院です。
私の知る限りでも10話くらい怪談は聞いて知っています。
今回は、その中の1話をアップしたいと思います。
妻が病棟勤務のナースだったから、たまに病院まで送迎した事が有ります。
場合によっては、日勤の妻を病院に送った帰り道に、妻の同僚のナースを近くの駅や病院の寮に送った事も有りました。
妻は、そういう事をしても文句を言いませんでした。
私が浮気をしない性格だし、妻は浮気をされない自信が有りました。
車から降りる時は、私にキスをしてから病院に入って行きました。
それは、一種のPRでした。
ある時、妻を降ろした後、コーヒーが飲みたくなったから、従業員駐車場にエクシブを駐車して、病院の中の自販機でコーヒーを買ってからエクシブに戻ろうとしました。
そんな時、一台の救急車が病院の中に入って行きました。
また、急患か?
さほど気にしないでいました。
大学病院の救急センターだから、急患は当たり前です。
車の近くに知り合いのナースがいました。
妻の知り合いのナースでした。
自宅が私の家の近くだったから、送ってやる事にしました。
いつもなら車内で雑談するけど、その日に限っては静かでした。
嗅覚の鋭い私は、異様な匂いを感じていました。
家に着いたら、黙礼だけして降りて行きました。
私は、勤務先のガソリンスタンドによって、ノンブラシの撥水コーティングをセットして事務所に入りました。
部下には、私の車を出してボディを拭いておいてと頼んで人数分の缶コーヒー代金を渡しておきました。
私は、中でマネージャーに売り上げ成績を上げる手段を聞いて、説明を求めていました。
30分くらい居て、それからソロドライブに行くつもりでした。
休日は、こんなパターンが多いです。
車に戻って、久しぶりに箱根でも行こうかと思っていました。
すると、ガソリンスタンドの主任がニヤニヤしながら近寄って来ました。
課長、あんな綺麗な奥さんがいるのに、こんな美人と不倫ですか?
助手席にあんな美人なんて羨ましいですよ。
不思議に思って車に戻ったら、女性はいなかったけど、助手席が濡れていました。
しかも、生臭い匂いでした。
霊がいたな。
ダッシュボードから浄めの塩を出して、助手席に塩をかけました。
私は、家に戻りました。
夕方、妻を迎えに行ったら、珍しく沈んだ顔をしていました。
今朝、昌昭さんが帰った後に、尚子が急患で搬送されて来たけど助からなかったの。
ストーカーに襲われたらしいのよ。
尚子は、昌昭さんを兄のように慕っていたし、来月は3人でディズニーに行く約束していたから無念でしょうね。
私が家まで送った尚子は、死霊だったのか?
背筋が寒くなりました。
妻に、尚子を送った話をしたら信じられないと言ってました。
二人で通夜に行きました。
尚子は、無念そうな顔をして、上から私達夫婦を見ていました。
簡単には成仏しないだろうな。
そう思って通夜の会場から帰りました。